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CROSS WORLD ―五世界交錯のレキハ―  作者: 数札霜月
第三章後編 第三世界アース 学園編
75/103

16:嵐の前の騒動

 一応『最新話』のリンクで来た方ように、更新の履歴を載せておきます。

 12:悪意ある助言 3日午前10時

 13:驚愕の宴 3日正午12時

 14:刻印使い以上 3日午後九時過ぎ

 15:十月四日 4日午前0時

⇒16:嵐の前の騒動 4日午前七時

「紹介するよししょー。こちらあたしが小学校の時塾で一緒だった天恵(あまえ)愛美奈(えみな)ちゃん」


「よろしくお願いします」


 時刻が一時を回り、衣装を着替えて血糊を落とし、髪を智宏にもらったバレッタでまとめたミシオは、同じく自由時間を迎えた愛妃と共に新校舎へと繰り出していた。ちなみに愛妃の今の髪型はミシオとおそろいのポニーテイルである。普段彼女の髪をセットしているらしい鋼樹が手が離せなかったため、ミシオが自分と同じでいいならと変わりにセットしたのだ。

 当初は適当なところで愛妃とも別れ、クラスメイトのやる企画を除きながら智宏が自由時間を迎えるのと待とうと考えていたのだが、その前に目の前の少女、愛妃の友達らしき大人しい風貌の少女に出会って今に至っている。


「んでもってエミちゃん、こっちはあたしのししょーで高等部一年の浜島美潮先輩」


「あ、えっと、よろしく」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 軽く頭を下げたミシオに対し、愛美奈は先ほど下げた頭をもう一度下げて来る。どうやらかなり礼儀正しく、見た目通り大人しい性格らしい。着ている質素な私服からもその性格がうかがえる。


「あたしとエミちゃんはこの学校受けるためにかよってた塾で知り合ったんだ。名前に同じ『愛』って字が使われてたんで話しかけたんだけどさ、あたしと違ってすっごい頭いいから結構レベルの高い女子校に行っちゃったんだ」


「そんな、私別に頭良くないよ……」


「頭いいよー。エミちゃんに教えてもらったからあたしこの学校は入れたんだし。そういえばししょーも結構頭いいんだよな。こうして見るとあたしの周りってすごい人ばっかりだ」


 愛妃の言葉に少しだけ頬が熱くなるのを感じるミシオだったが、愛美奈に起きた変化はそれ以上だった。恥ずかしがっているのかほとんど茹でダコのように顔を真っ赤にし、小柄な愛妃の口に手を伸ばして『やめて、やめて』と呟きながら必死に口をふさごうとしていた。愛美奈も同世代の少女の中では小柄なほうだが、流石に愛妃ほど小柄ではないため、二人の姿はまるで仲の良い姉妹がじゃれ合っているように見える。


「と、ところでさっきアイちゃん師匠って言ってたけど、なんで、あの、浜島さんのこと師匠って呼んでるの?」


 愛妃の口を封じることを断念したのか、矛先を逸らすかのように愛美奈がそう話を切り替える。言われた直後はどう説明したものかと悩んだミシオだったが、その悩みはすぐさま愛妃の言葉によって解消された。


「ししょーってすごいことにパルクールが使えるんだよ。まさか身近に使える人が現れるなんて思ってなかったからこれを機会に習得しようと思ってさ」


「ぱ、ぱるくーる?」


「そ。建物の上を飛び回ったり、壁登ったり飛び降りたりするスポーツなんだけどさ、ししょーってその辺の壁とかするする登っちゃうんだぜ! すげぇカッコいいじゃん!!」


「へぇ、そういうスポーツがあるんだ……。そう言えば愛ちゃんって塾に来る前は格闘技とかもいろいろやってたもんね……」


 愛妃の言葉に、愛美奈はあっさりと納得して見せる。どうやらそれで納得できるくらいには二人は相手のことを知っているらしい。

 愛妃がミシオの特技を知り、弟子入りを申し込んできたのはミシオが誕生日を迎えた翌日のことだ。どうやら前日に窓の暗幕を張るために壁に張り付いたり登ったりしていたのが噂として彼女の耳に入ったらしい。智宏や彼女の兄である鋼樹には絶対教えるなと厳命されているが、彼女の熱意はその程度ではくじけないレベルのものだった。


「さて、そろそろあたしたちもあちこち回ろうか。エミちゃん去年みたいにあちこち案内するよ。……って、そういえばししょーは自由時間どうすんだ? クラスの友達とかとまわるのか?」


「えっと、それは明日かな。みんな自分の企画で都合が合わなかったから、今日は智宏が来るまで友達の企画を見に行くつもり」


「そっか。ヨシトモ先輩待ちか。あれ? そう言えばししょーって携帯持ってないけど、ちゃんとおち会えるの?」


「え? あ、うん。それについては大丈夫」


 まさか通念能力(テレパシー)で連絡が取れるとはさすがに言えず、ミシオは適当に言葉を濁して話を終える。どうやら愛妃の方も『待ち合わせでもしているのだろう』と適当に納得したらしく得に突っ込んでは来なかった。


「んじゃ、まああたしらはそろそろ周りに行くよ。いい加減お腹もすいたからな。ししょーもまた後で『ななふし』で会おうぜ」


「うん。行ってらっしゃい」


 その言葉と共に二人の背中を見送り、ミシオは校舎の壁時計に視線を向ける。智宏が自由時間に入るまであと三十分少々。普段ならわずかなその時間は、しかし今日はなぜか随分と長く感じられた。






 智宏のミシオとの合流は、思いのほか遅れることとなってしまった。自由時間になって早々に、やりすぎをとがめる式観原に出くわしてしまったせいだ。


「流石に気絶する人や、破局するカップルを出すのはやりすぎだと思います」


 誰もが思っていた至極もっともな言い分に、智宏は内心でため息をつきながら応対する。本当ならこの手のことなら黒幕にして根本原因である魔女に応対して欲しいのだが、あの魔女にこの教師をぶつければ必ず騒ぎになるのでそうもいかない。上司と部下の板挟みになる中間管理職のような気分を抱えながら、智宏はどうにか式観原の非難をかわすことになった。


「まあ、ものがお化け屋敷ですから、怖くするなというはさすがに言いませんけど……」


「はい。それに、実は気絶するタイミングというのが、実は全員鋼樹とカチ合ったときでして……」


「それはそれで失礼な話ね……。会沢くんって、本当は愛妃ちゃんの面倒をよく見る、妹思いのいいお兄さんなのに……、って違うわよ!! 別にそんなこと、お兄さんなら当然のことなんだから!!」


「ああ、はい。わかってますよそれくらい」


 慌てて褒めた言葉を否定しにかかる式観原に、智宏は少しだけ表情が崩れるのを感じながら話を合わせる。

 どういう訳か人を褒めることを徹底して避ける節こそあるが、その反面この教師は生徒のいいところをきちんと把握しているところがある。

 鋼樹がどんな性格をしているかは、クラスが同じになるなど何らかの接点があればわかる話だが、彼が妹の愛妃にどう接しているのかなどは、ある程度親しくなって見なければわからない。しょっちゅうじゃれ合っていることから仲がいいことくらいはわかるだろうが、彼が共働きの両親に変わって髪型のセットから食事の面倒まで、愛妃の面倒の一切を見ていると知ったのは、智宏自身かなり最近のことだ。見た目に反して家庭的な特技の多い鋼樹だが、どうやらそのほとんどは妹の世話をして身につけたらしい。


「こほん。まあ、確かにそういう事情なら私の方からどうしろとは言わないでおきます。できれば穏便に済ませた方がいいのは事実ですが、今さら手を抜けとも言えませんし、会沢君だけを抜かすわけにもいきませんから」


「はい。それに気絶する人についてはともかく、破局するカップルについては向こうにも問題があるかと。何しろ今年は例年にも増して多いらしいですから」


「多い? ……ああ、破局したって言うのはそういう人たちなのね……」


 智宏の断片的な言葉に、しかし式観原はあっさりと納得してそう返事を返す。そうできてしまう程度にはこの学校の関係者はその事実に気付いていた。

 例年もいなかった訳ではないが、今年の夕景祭はとにかくにナンパが多い。もともと夕景祭には他校の生徒が多く来るため、実はこの夕景祭に異性との出会いを期待する来客は多くいるのだが、今年は特に大規模なイベントを最大の宣伝と共に行ったため、来場者数に比例して、出会いを求めてくる男女がかなりの数学園内に入り込んでいるのだ。

 先ほどから『七つ目の不思議』で破局しているカップルというのも、実はそういった三分前にできたような即席のカップルだったりする。デートの定番としてお化け屋敷が目をつけられやすいのも被害を拡大させている要因だ。


「まあ、確かにそういう事情なら帰って不純な異性交遊を防止できていいかもしれないわね。聞けば生徒の中にはしつこく声を掛けられて困ったっていう子もいるみたいだし」


「ミシ……、浜島さんとかそういうのに会った経験とか少ないみたいだから、変なのに引っ掛かってないか心配ですよ」


「あなたも本当に面倒見が……、オホン、過保護ね」


「その言葉、最近どっちも頻繁に言われてますよ」


 智宏は特にそう思っているわけではないが、最近なぜかミシオに対する智宏の気遣いが友人達から過保護扱いされる。智宏自身確かにいろいろ面倒を見ているとは思っているが、だからと言って過保護とまで言われるのは心外だった。


「ああ、式観原先生、ここにいたんですか」


 智宏達がそんな話をしていると、不意に別の声が式観原に投げかけられた。声のした方を見ると、二人の同級生と一人の下級生がこちらに歩み寄ってくる。


「あら、佐藤君と鈴木さん、大手間坂(おおてまざか)君。生徒会の三人がいったいどうしたの?」


 現れたのは生徒会の副会長佐藤公平(さとうこうへい)と書記の鈴木(すずき)良美(よしみ)、そして会計の大手間坂ディートハルトだった。佐藤と大手間坂が二年、鈴木が一年生の生徒会役員で、佐藤と鈴木が真面目そうな印象を与える純日本人なのに対して、大手間坂はドイツ人の血が混じっているせいか、雰囲気がどこか浮いて見えていた。というか、この三人が並ぶと俗に言う出落ちのような雰囲気が漂っている

 と、智宏は聞きようによっては失礼極まりない思考を内心で展開していると、佐藤と鈴木の二人が同時にかけていたメガネを直してこちらを睨んでくる。以前廊下などで接触したときもそうだったが、この二人は手芸部のメンバー、特に魔女結華と非常に折り合いが悪い。それだけなら智宏も嫌というほど理解できるのだが、どういう訳かこの二人は智宏までもなぜか敵視している節がある。


「ああ、式観原せんせェ、探してましたァんよ。いやいやァ、探してたゆうてェも、わいら会長を探すついでに頼まれごとを引き受けただけなんですが」


 智宏がなぜか向けられる謎の敵意に耐えていると、二人が会話を忘れていると判断したのか大手間坂が変な訛りのある大阪弁でそう式観原に話しかける。以前聞いた話では大手間坂は以前外国におり、日本に来た際も最初は関西に住んでいたという話だった。いったい日本語をどう覚えているのか、少々気になる喋り方をする生徒である。

 だが、そんな個性的なしゃべりに我を取り戻したのか、佐藤と鈴木の敵意が薄れ、意識が式観原へと戻る。どうやら本来の目的を思い出したらしい。


「そうでした。実は式観原先生にお客様が来てまして、その方達が先生を探していたのでそれをお伝えに」


「私に? 卒業生か誰かかしら……?」


「おそらく先生の同窓生の方ではないかと。訪ねて来られた方々の中に過去の生徒会長だった海藤和光先輩らしき方がいましたので」


 割と有名な話だが、式観原はもともと暮村学園の卒業生で、智宏達の歳の離れた先輩に当たる。また、今年の文化祭は旧校舎の取り壊しを控えているため、懐かしの学び舎の最後を見ようと考えるOB・OGが多く訪れることは以前から予想されていた。ならば、そうして訪れる卒業生の中に式観原の同級生がいてもおかしくはない。


「うそ、皆来てくれたの!! 誰が来てるんだろう! 何人くらいいた?」


「私達がお会いしたのは五人ですね。私たちが見かけたらお呼びすると言ったら、『それなら瓦屋が来てると伝えてくれ』と頼まれました」


「わぁ、瓦屋さんも来てくれたんだぁ!! ……あ、……こほん。それでは、今から会いに行きます。場所を教えてください」


 嬉しそうにはしゃぐ様子を慌てて押し殺し、式観原は鈴木から場所を聞いて足早に新校舎の方へと向かっていく。どうやら旧友に会えるのが相当嬉しいらしい。おかげで智宏はなぜかこちらを敵視する二人の目の前に、一人取り残されることとなった。


「ところで吉田くん。君たちの団体は、というかあの魔女は随分といろいろ騒動を起こしているようだね?」


 式観原が去ったとたん、佐藤が刺すような視線と口調で智宏にそう聞いてくる。正直智宏にして見ればあの魔女のことで面倒に巻き込まれるのは御免だと思っていたが、それはおくびにも出さずここは大人しく話を聞くことにした。正直この三人、正確には二人に絡まれるのはそう珍しいことでもない。


「調べましたところ、文化祭準備期間中あの魔女が起こしたトラブルの数はなんと五十二件。仕掛けの誤作動、情報伝達の不備など、事故に見せかけられてはいますが、明らかに人を文字通りの意味で罠にはめていることがうかがえます」


「……よくカウントしてましたね」


 律儀に回数まで数えていた鈴木に呆れながら、智宏はそんなにあったのかと達観した気分でここ一月の苦労を思い出す。ミシオの技術力に調子に乗って次々と企画を追加改造する結華には確かに苦労させられたが、それ以上に苦労させられたのは結華が片手間で仕掛ける嫌がらせいたずらの数々だ。自身で持ち込んだ質の悪いグッズを使い、ときにミシオや一部の生徒をだまくらかして仕掛けた罠によって、生徒教師を問わず関係者一同誰もが恐怖のどん底に叩きこまれたのだ。

 明らかにお化け屋敷とは違う恐怖を呼び起こす『降り注ぐゴキブリ事件』、ミシオを騙して行わせた最大の被害者数を誇る『十六人逆さ吊り事件』、第一発見者の女子生徒にトラウマを植え付けた『バラバラ死体全部位集合(フルコンプリート)事件』などが特に印象的だ。準備期間中、例の等身大こんにゃくは三世代にわたって猛威をふるったし、バラバラ死体が腐乱死体に変わったときは本気で旅にでも出ようと思った。

 正直な話、智宏自身今日に至るまで一人もこの団体を脱退しなかったことに驚いているし、そんな事件の数々を収拾するのに奔走させられた自分が倒れなかったことにも驚きだった。世界による肉体強化様々である。


「ちなみに余談ですが、どういう訳か式観原先生が事件の被害にあった案件が実に二十四件もありました。多いというか、被害のほとんど半分が式観原先生です。あの先生は一体どういう星のもとに生まれているのでしょう?」


「まあ、反応が一番面白いとか言ってたので狙っていた節はありますが、それにしたって被害件数が異常ですね」


「感心している場合か。今回の企画は会長が数年がかりで、それこそ学園生活そのものをつぎ込んで打ち立てた一大イベントだぞ。その上今回は我々生徒が企画の進行を任されているから、この企画で問題が起きれば今後生徒の自主性が大きく制限されることもあり得るんだ」


「まあ、最悪の場合智宏君がおばあちゃんの前で土下座するって手もあるんやけェどなァ。一人の生徒にそこまでするのはさすがにどうかと思うしィ」


「っていうか、あの人そういう筋の通らない頼みは土下座しようが切腹しようが聞きませんよ。まともに会うようになったのってここ最近ですけど、それくらいは見てればすぐにわかります」


 母と下らない喧嘩をしているせいでそれを知ったのこそこの学園に入ってからだが、実は智宏の祖母暮村(クレムラ)珊瑚(サンゴ)はこの学園のトップに君臨する人物だ。本人はあまり実感を得る機会が少ない事実ではあるが、二人の特徴的な長い耳を傍から見られる周囲の人間はむしろそのことを強く認識している。今でこそなりを潜めたが、この学園に入学した当初はそのコネを利用した下らない頼み事を智宏に持ち掛けてくる生徒が何人かおり、智宏自身辟易していたくらいだ。


「まあ、君たちの個性的な家庭事情はうらやましい限りだが、今はそれはどうでもいい」


「個性的って副会長、それわいも入ってるんでェすか?」


「黙ってください大手間坂先輩。何ですか? 自慢ですか? そんなに私たちは地味ですか? あなたのおかげで私たち三人は出落ちですよ? 一体どうしてくれるんですか?」


「いや、そんな殺生な……」


 鈴木に詰め寄られる大手間坂に、しかしすぐに救いの手が差し伸べられる。それは恐らく鈴木と同じ悩みを抱えているであろう佐藤の言葉だった。


「そこまでだ、鈴木君。あまり自分を貶めるものではない。確かに私達は影も薄かろう。個性もなかろう。正直手芸部のような個性の塊のような者達を前にすると、自分の存在が薄まっていくような錯覚に襲われる。だがそれでも、恨まず、妬まず、高潔に! 誰にも見劣りしない確かなキャラを作っていこうじゃないか!!」


「副会長……!!」


「……『キャラ作るってなんやねェん』って突っ込んじゃだめやァろか?」


「面倒なことになるから突っ込まない方がいいと思いますよ」


 冷めた目で見守る二人を置き去りに繰り広げられる三文芝居に、智宏は小さく内心でため息を吐く。智宏とてミシオを待たせている身だ。いくらなんでもそろそろ油を売るのをやめてミシオのいる場所に向かいたいところではある。


「えっとさ、大手間坂君、要するに三人がここに来た理由は魔女先輩を何とかしろっていう苦情と見ていいの?」


「んー、まあ、本当は火観子先輩を呼びに来たついでなァんやけどね、それ。でもまあ智宏君向けの用は確かにそれだけだよ。実際、火観子先輩は結構放任主義だし、ほかの生徒はあんまり魔女先輩に関わろうとしないかァら、対抗できる人材って君だけなァんよ。なんだかんだいってあの二人も君のことは買ってるみたいやしィ」


「う……、そう言われるのはまんざらでもないけど、だからってあの魔女の対応を全部任されてもなぁ……」


「まあ、そう言わずに頑張って欲しいんよ。生徒会としてもあの魔女の行動を『問題』にして対応する訳にはいかないさァかい、後は『魔女狩りエルフ』の活躍に期待するしかないんよォ」


「自分の知らないところで恐ろしい呼び名が生まれていることに寒気を覚えるんだが……。まあ、努力はして見るよ」


 そう言って大手間坂に軽く会釈をすると、智宏はいまだ三文芝居を続ける佐藤と鈴木の横を通り過ぎて新校舎へと向かう。先ほど自由時間に入って衣装を着替える時、ミシオと待ち合わせの相談は済ませてある。遅くなるようなら再度連絡が来ることにはなっているが、できればそうなる前に待ち合わせ場所についておきたい。

 だが、智宏は知る由もない。自分がミシオと交わした待ち合わせや約束が、果たされることなくことごとく水泡に帰すことを。


 次回の更新は4日の正午12時になります。

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