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CROSS WORLD ―五世界交錯のレキハ―  作者: 数札霜月
第一章 第一世界エデン
19/103

19:力学崩壊

 予定を変更して、早めにこの章を完結させてしまうことにしました。

 チェックが済んだものから投稿していこうと思います。

(術式展開-―【土人形の鉄腕(ゴーレム・アーム)】!!)


 茂みから飛び出し、目の前のオチシロと呼ばれていた男に右手の巨腕をたたきつける。

しかしその拳はオチシロの顔面に轟音を上げて直撃したところであっさりと止まってしまった。


(……やはり効かないか。それなら――【土神の剛腕(タイタン・クロウ)】!!)


 すぐさま左腕にも魔方陣を展開し、魔術を発動させる。複雑で文字数の多い魔方陣を一瞬で組み上げ。右手を引くと同時に左手で殴りつける。

 再び轟音が森に響き渡る。音も威力も倍以上の大きさを誇る現状最高威力の攻撃。だが右手の巨腕よりはるかに大きな剛腕でもオチシロの体はびくともしなかった。


「終わりかぁ?」


 とっさに両腕の魔術を解除し後ろに飛び退く。二つの腕が消え、智宏はオチシロと正面から向かい合うことになった。二人の視線が、同時に相手の刻印を捕らえる。


「へぇ。魔術を使ってるからオズの人間かと思ったら、お前同類かぁ?」


「……そう言うあんたは日本人のくせにこんな犯罪組織に加担してるんだな」


「ああ。まあ、こんな力、こんな場所でもないと振るえないからなぁ。それに金をもらってんだ、仕事はしっかりしないとなぁ?」


「金? 雇われてあんな犯罪者に加担してるのか?」


「それはさっきおれが生ゴミにした奴も同じだよ。あの胡散臭い研究者どもはどうか知らないが、まあ興味もないしな。元々俺の本業は詮索無用の東京湾に生ゴミを捨てるお仕事だ」


「っ!!」


 どうやら犯罪組織か何かの人間らしい。とはいえ元より話し合う余地がない以上それに関しては関係ない。すでに相手はこちらを殺す気でいるのだから。

 それを表すようにオチシロは体勢を低く沈め、


「さあ、生々しく死ねぇ、生ゴミィイ!!」


「やなこった!!」


 突進してきたオチシロに応じるように智宏は背中に展開していた(・・・・・・・・・)魔方陣を発動させる。今朝の段階でこういった場所でも【マーキング】が使えるのは確認済みだ。そのときは目で見ることができないため書いた文字がぐちゃぐちゃになってしまったが、


「【集積演算(スマートブレイン)】のイメージに狂いはない!!」


 背後から四羽の炎鳥が飛び出す。四羽とも高速でオチシロに向かい、


「なに!?」


 オチシロの予想を外れ、すべて足元に着弾した。


「目くらましかぁ!!」


 智宏の意思を理解したオチシロの声から、逃れるように横に飛び退く。すると間一髪、寸前まで智宏のいた場所を何かが砲弾のように通り過ぎて行った。直後その先の森の一帯に爆弾が落ちたかのような轟音が響く。


「ぐぅうううっ!!」


 発生した衝撃波に智宏の体が吹き飛ばされ、地面を転がる。それでも何とか通り過ぎた砲弾の正体を確認し一つの確信を得ることになった。


(やっぱりそういうことか!!)


「無事か! 少年!!」


 どこから駆け寄ってきたブラインに体を持ち上げられ半ば強制的に立たされる。智宏自身も若干ふらついていたがそれはすぐに回復した。


「ブラインさん、他の人たちは?」


「君がミシオ君を通じて指示していたと通り全員バラバラに退避させた。だがどうする気だ。逃げても奴は倒せんし、そもそも足の速さがけた違いだぞ」


 こちらに来る直前に出しておいた指示に一応はしたがってくれたらしいが、それでもブラインはその判断に迷いを覚えているらしい。それはそうだろう。いくら【集積演算(スマートブレイン)】の特性を説明してあるとはいえ、指示したのは素人の少年だ。ブライン達プロから見れば心もとない相手だろう。

 だからこそ智宏は強い口調で宣言する。


「ここで固まっていたら間違いなくやられてしまう。散らばることと身を隠すことに意味があるんです。とにかく今はいったん逃げましょう。それとミシオは?」


「レンドと一緒にいる。これが通信機だ。レンドに繋がっている」


 そう言ってブラインは智宏に卵のようなものを渡してくる。それには宝石のようなものがいくつか埋め込まれており、形態としては装飾品に近かった。


「もしもしトモヒロかい?」


 その卵から突然声が発せられた。どうやら電話と違って耳に当てる必要はないらしい。そういう意味ではトランシーバーに近いのかもしれない。


「もしもしレンドか? 今ミシオは?」


「俺が背負って走ってるよ。変わるかい?」


「ああ。頼む。テレパシーで放送してほしいことがあるんだ」


「了解! せいぜい愛でも語りな」


 最後に余計なことを言ってレンドの声が途切れる。変わって聞こえてくるのはミシオの声だ。


「……トモヒロ?」


「ミシオか? 今から僕が話すことを、いや、僕と周りの会話をさっき集まっていた全員にテレパシーで放送してくれ。今からあいつの【刻印】とその対応法について説明する!」


 通信機の向こうでミシオが息をのむのが分かった。






「……チィッ! 外したかぁ!!」


 墜城雄也(おちしろゆうや)はそう言いながらも楽しそうに起き上った。体当たりで木々をなぎ倒し、地面に突っ込んでクレーターを作ることになったが、墜城自身は痛くもかゆくもない。

 結論から言ってしまえば先ほど智宏をかすめた砲弾の正体は墜城自身だった。

 威力もスピードも間違いなく下手な大砲より上であろうその攻撃の正体は、言ってみればただの体当たりなのだ。

 逆に言えば、ただの体当たりでこの威力。


「……いい! いいねぇ! 最高だぁ!! いいや違うなぁ。最強だぁ!!」


 この世界は他の世界と比べても弱肉強食の色合いが強い。恐竜から進化した巨大生物もいるし、それに対抗するため研鑚を積んだ戦士もいる。だがどちらも墜城には敵わない。現に今も怪物と戦えるだろう村の戦士たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。その事実のは彼の精神状態を最高に高揚させていた。


「すげえぜこれぇ!! 異世界に連れて来てくれたた奴に感謝だ!! どんどん力が湧いてくる!」


 どんなものも自分には敵わない。今の墜城は間違いなく頂点にいる。気にいらない相手がいれば殺して生ゴミに変えればいい。どんな兵器も魔術も既に自分には効かないのだ。どんなわがままでも許される力を自分は手に入れた。


「おまえも俺みたいな能力を持っていればいい思いができたのかもしれないのになぁ? ガキィ?」


 墜城の視界が逃げていく者たちの一人、先ほど魔術で殴りかかってきた少年を捕らえる。自分と同じ【刻印使い】、それがどのような効果を持つ刻印の持ち主であるかまでは分からないが、逃げているという事はどうにもならないのだろう。当たり前だ。墜城は最強なのだから。


「さあて、あんまり遊んでるのもあれだから一気にぶっ飛ばすとしますかぁ!!」


 言いながら手近にあったつかめる程度の木をへし折ると、墜城は逃げる少年に向かって突っ込んだ。






「伏せろぉ!!」


 叫びと共に智宏の体がブラインに押し倒される。すると間一髪、地面に倒れた二人の頭上を一本の木が通り過ぎる。一瞬遅れてオチシロもその軌道を通り過ぎる。オチシロが木を振り回しながら突っ込んできたのだ。


「ヒッホォオオオオ!!」


 智宏達の上を通り過ぎたオチシロは、持っていた木を目の前の別の木に思い切り叩きつける。それによってオチシロの体はようやくスピードを落として着地することに成功するが、持っていた木は粉々になり、叩かれた木も派手にひしゃげてゆっくりと倒れ始めた。


「だめだなぁ。武器使おうとしても武器の方がもろいや。ッハハ! ホント良いなあこれ!そのうちコンクリートとか鉄骨とかある町中で暴れてみぇ!」


「くっ!」


 一人で喋るオチシロを半ば無視して、智宏はブラインと共に立ち上がる。今オチシロに捕まる訳にはいかない。

 だが走りだそうとした瞬間こちらに背を向けていたオチシロが振り返った。


「どこ行くんだよ? 探すのめんどくさいんだから逃げんなぁ!」


 そう言ってオチシロは再び手近な木を蹴り砕く。それだけで木の根元は粉々に砕け、その破片が智宏達に襲いかかる。だがそれは彼にとっては攻撃ですらない。


「さあ! もう一本行ってみようかぁ!!」


 再び折れた大木が飛んでくる。しかも今回は至近距離、よける暇など到底なかった。


(くっ……! 【土人形の鉄腕(ゴーレム・アーム)】!!)


 故に智宏は再び受け流すという手段を選択した。


「ぐ、う、あああああああああ!!」


 魔術越しに腕に伝わる痺れを感じながらもどうにか軌道をそらす。だが判断に動きが間に合わなかったため、致命的なダメージを受けた巨腕は瞬く間に砕け散った。


「いい加減にしろ貴様ぁ!!」


 その隙を埋めるように今度はブラインが魔術を使う。手の先に展開した魔方陣から電撃の槍が放たれ、それがオチシロの胴体に直撃する。

 一撃で竜猿人も葬る【雷槍(サンダーランス)】。だがその威力は先ほどの【極放雷(テラボルト)】に比べあまりにも小さい。


「おいおいおい、それで攻撃のつもりかよ? 弱々しすぎて涙を誘うぜ?」


 体の焦げ跡一つつけず、オチシロはこちらに歩み寄る。その事実にさしものブラインも思わずたじろぎ、後ずさった。


「攻撃ってのはさぁ、こうやるんだよぉ!!」


 そう言ってオチシロは今度は地面を蹴る。サッカーのボールをけるような良く見る動き。だがその力はたったそれだけで足元の地面を根こそぎ二人めがけて吹き飛ばした。


「うぶぅ」


「っああ!!」


 襲いかかる土砂に、たまらず二人は飲み込まれ。ともに押し流されるように吹き飛ぶ。相手の力があまりにも大きすぎて自分が無力な虫にでもなったような気分だった。


「アアッハッハッハァ!!」


 それでもさらにオチシロは智宏達のいたすぐ近くを砲弾のような速度でオチシロが通り過ぎた。とたんに衝撃波が襲いかかり、二人の体がさらに宙を舞う。

 二人が地面に叩きつけられるのと、遠くで爆発音がなるのはほぼ同時だった。


「っぅぅぅぅ! ……く、無事かぁ……、少年!?」


「無事です」


 言いはしたものの、正直二人ともあまり無事とは言えなかった。二人ともすでに全身傷だらけの泥だらけ。智宏自身は特に大きな怪我は追っていなかったが、全身が痛みに悲鳴を上げている。ブラインに至っては顔中にびっしりと脂汗を流している。見たところ手足の動きに異常は見られないが、あばら骨くらいは折れているかもしれない。

 だが智宏はそれらを意図的に無視して口の中の泥を吐き捨て、次の判断を下した。


「今のうちに走りましょう。まずはあいつから身を隠さなければ」


 何とか立ち上がり、二人揃って走りだす。今は一瞬でも止まる訳にはいかなかった。


『トモヒロ!! 大丈夫!?』


「大丈夫だ! それより奴の刻印の効力だ!!」


 通信機に向かって叫び、智宏は頭の中でオチシロについての情報をまとめる。幸い今の一撃でオチシロはこちらを見失ったらしい。あるいは他の標的を見つけたのかもしれないが、話をするなら機会は今しかない。


「まずわかりやすいところから。あいつの刻印の効力の基本となっているのは、桁違いの肉体強化です。これについては見ていたほとんどの人が察してはいると思いますが」


「まあそうだろうな。見たところ奴は途方もないバカ力以外に得におかしな力は使っていない。恐竜を投げ飛ばせる規模となれば確かに驚異的だが、単純に身体能力をあげる刻印だと見ていいだろう」


「いえ、上がってるのは身体能力だけではないと思います」


『なに?』


 智宏の言葉に、通信機の向こうからレンドの疑問の声が上がる。通信機はミシオが持っていることを考えると、どうやらこの通信機、かなり感度がいいらしい。


「身体能力や人体強度なんかが上がっているだけと考えるには、いくつか説明のつかないことがあるんですよ。さっきから体当たりでクレーターを作ってたりするのなんかいい例です。いくら身体能力が上がって頑丈さや強度が上がってても、人間の重量であんな破壊ができるとは思えません。見たところ地面に体が沈むような事態にもなっていないですし、重さは人間のそれのままと見ていいですから」


「では、一体何を強化しているというんだ?」


「強化しているものの中にはもっと単純でおおざっぱなもの、言ってしまえば『攻撃力』や、『防御力』みたいなステータスじみたものもある思うんです」


『すてーたす?』


『それって要するに能力値のことか? アースのゲームなんかである?』


「知ってるのなら話が早い。っていうか知ってるのかレンド?」


『ああ、俺は定期的にいろんな世界を行き来してるからな。アースの協力者に教えられたことがある。それよりそれってどういうことだ?』


「聞いた限りじゃ【刻印】ってのは人間の強い願いに反応して発現するんだろう? なら必然的に願った人間の内面、価値観や道徳、それ以前から願望や本能的な意識なんかが反映されることになる。言ってしまえば【刻印】の効果は恣意的なものになりやすいと思うんだ」


 特に願いというものは人の価値観が如実に反映される。例えば大金が欲しいと一口に言ったってそれはあるものには百万円であるかもしれないし、あるものには一億円であるかもしれない。うまいものが食いたいと言ったって、その人間が肉が好きか魚が好きかで何がうまいものなのかは変わってきてしまう。

 願いが反映される能力という事は、その能力は必然的に恣意的なものになるはずなのだ。


「たぶんあいつは自分の強さみたいなものを、筋力とかだけじゃなくて能力値的なものとしてとらえてたんだと思う。まあ、重いものを軽々と投げているところから考えて身体能力も強化されてるんだろうけど、気功術と同じような強化はされてないだろうな。特に五感はほとんど強化されてないと見ていい。聴覚が強化されてたらあんな爆音立てて動けないし、嗅覚が強化されてたらドレンナみたいな実があるこの森には入れない。回復力みたいなものは強化されてるかもしれませんけどね」


 ひょっとするとオチシロには刻印のイメージの雛型になるような何かがあったのかもしれない。あんな男が非現実的な強さに憧れを抱くかどうかはわからないが、今の日本ではそう言ったイメージに触れない方が難しい。そもそも彼だって少年時代はあっただろう。


「話はわかった。だが、さっきの『真っ向からぶつかっても勝てない』というのはどういうことだ? 確かに埒外の強さではあるが……」


「問題はここからなんですよ。あいつの刻印には、もっと厄介な側面があるんです」


『厄介な、側面?』


 その側面の存在に気がついたとき、智宏は一瞬ではあるが絶望的な気分になった。だが、これを話さないことには自分たちに勝機はない。智宏はわずかに呼吸を整えると、この話の根幹とも言える部分に触れる。


「規模が大きくて逆にわかりにくいんですけど、さっきからあいつの攻撃による破壊の規模が、どんどん大きくなってるんですよ。あいつから感じる魔力に関しても同様です」


『そうなのか? 正直俺にはよくわからんのだが。魔力感覚なんて大きな魔力に晒されすぎてとっくにバカになってるしな』


「いや、確かに言われてみればそうだ。魔力に関しては自分もわからんが、攻撃の音や規模は確かに拡大している」


 走りながら背後を睨み、そこで起こる爆発をみてブラインがそう呟く。元よりこれは智宏自身が【集積演算(スマートブレイン)】で強化した記憶力によって、過去の破壊と現在の破壊を照合して出した結果だ。魔力に関しても同様に確かなものだと言える。


「こいつの魔力を一度見失って、再度発見した時からおかしいと思ってたんですけど。こちらとの距離やあいつの移動スピードに関わらず、あいつから漏れ出る魔力の感覚がずっと上昇し続けてるんですよ。それも加速度的に、これまでずっと」


「ひょっとして、奴は全力を出せるまでに時間がかかるのか?」


「そうかもしません。でも僕は別の可能性を考えています」


『別の可能性?』


「ええ、僕はあいつの刻印は『強くなる刻印(・・・・・・)』ではなく、『強くなり続ける刻印(・・・・・・・・・)』ではないかと思ってるんですよ」


「な……、に……?」


 智宏の言葉を受け、隣を走るブラインの顔から表情が消える。言葉の意味を咀嚼しようと数瞬沈黙した後、徐々にその顔色を強張ったものに変え始めた。


「……待て、『強くなり続ける(・・・・・・・)』だと……? それは、つまり……!!」


「ええ。さっき言った攻撃力や防御力がどんどん上がってるってことです。特に防御力が上がってるのは致命的ですね。恐らく今のあいつにはほとんどの攻撃が効かない。たとえダメージを与えられたとしても、少しの間逃げ回って時間を稼げば、それだけでその攻撃に耐えられる体になってしまう」


『待てよトモヒロ。だったら俺達こんな悠長に逃げてる場合か? それってつまり時間を与えれば与えるほど、あいつが手に負えない化け物になっていくってことだろ?』


「もうなってるから関係ないんだよ。最初に会った時点で、かなり威力の高い電撃とブホウさんの技を食らって無傷だった奴だぞ? もしかするとほとんどの攻撃に耐えられる体になるように、時間を調節してここまで来たのかもしれない」


 そんな中で無理に戦いを挑むなど無謀を通り越して自殺行為だ。相手は攻撃が効かない上に、ばかげたパワーで攻撃してくるのだ。恐らく魔術で防御しようとしても防御ごと破られてしまうだろうし、例え破られなかったとしても次に受けてそうだとは限らない。


「確かにその通りだが……、ならば我々はどうすればいいのだ? まさか奴自身の体が奴のパワーに耐えられなくなるまで待つのか?」


「いえ、そんなときは永遠に来ないでしょう。この刻印は体も頑丈にしてますし、そもそも望みがかなう能力にそんなわかりやすい欠陥があるとも思えません」


『なら魔力切れはどうだ? 刻印使いは確かにばかげた魔力を持ってはいるが、だからと言って無限には持っていない。あいつの魔力が切れれば肉体も常人のそれに戻るはずだ』


「確かにその可能性もあります。ですが、あいつがさっきから垂れ流している魔力の量から考えて、そうなる可能性も薄いでしょう」


「なんだと?」


「さっきから垂れ流している魔力の総量は、同じ刻印使いの僕でも干からびかねないような莫大なものです。いくら刻印使いでもこんなバカげた放出量はありえない。おそらく刻印自体の効力で保有する魔力の量まで底上げされているんでしょう。もしも消費する魔力よりも多い量の魔力を得ているとしたら、刻印の強化によって最大魔力量が上昇しているのなら、事実上魔力切れはありえない」


「……バカな……!!」


 智宏の告げる言葉に、我慢できなくなったように隣でブラインが悪態をつく。


「そんな相手に、一体どうやって勝てというんだ!! 『強くなり続ける』どころか、ほとんど無限の強化ではないか!!」


「ええ、そうです。真の意味で限界も際限もなく、『無限に強くなり続ける(・・・・・・・・・・)』という刻印。名づけるなら【力学崩壊(バランスブレイカー)】と言ったところでしょうか。放っておけばあいつ、そのうち素手で地球を割れるようになりますよ!!」


 智宏のその言葉は、森の中で響く破壊の轟音よりも強く聞く者達の内心に響いた。


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