表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/18

4

 私に叩かれたレオンお兄様は唖然としている。もう、今日は何度沈黙を味わえば良いわけ?でも、これでレオンお兄様には嫌われたはず。嫌われてこその悪女よ!ついに第一歩目を踏み出したわ!優しい兄を拒絶する妹……!なんて素敵なの!私がときめいていると、レオンお兄様がいきなり真剣な顔になった。

「笑ったのが気に障ったのだったら、謝る。ルディ、何か欲しいものやしたいことはあるか?一つだけ叶えてあげよう。お詫びだ」

まあ。悪女は謝られたらそれこそ気に障るわ。でも、せっかく何かしてくれるんだったらしてもらって損はないわ。悪女は欲深いのよ。利用できるものは利用するし、もらえるものはもらうわ。

「そうですね。私、剣術や体術を習いたいですわね」

私はあからさまな嫌悪を顔に出しながら、レオンお兄様に言う。悪女とあろうもの、そこら辺に転がってる人より強くないといけないのよ。あ、でもそこら辺に人は転がってないわね。転がっっているとしたらついさっきの攻略対象たちだけよ。人が夢に向かって頑張ってるのに転げ回って。

「え……?」

再び笑顔に戻ったレオンお兄様の笑顔が凍りついた。それこそもう一生動かないんじゃないかってくらい。まあ、そうなるわよね。今までわがまま放題だった妹が今度は自分達が誇りを持つことに興味を持ったんですもの。今までの私はきっと一週間で飽きてお兄様たちを怒らせていただろうけど……怒ってほしいのはやまやまでも、強くなるには真剣に学ばないと!ま、真剣に学んでる時点で悪女じゃないけど。そこは見逃してね。

「もう一度言います。剣術や体術を習いたいです。よろしくお願いいたします」

私は頭を下げる。悪女は頭を下げないものだけれど、お願いする時にはちゃんとしないと、逆に私のプライドが許さないわ。

「ルディ、頭を上げて。いいよ。教える。でも、飽きたらしごくぞ」

「はい。それも覚悟の上です。万が一にも飽きた場合、爵位剥奪されても良いです」

私はきっぱりと言う。大袈裟かもしれないけど、そのくらいの覚悟があると示さないと。強い悪女になるためには多少プライドを傷付けないと。頭を下げたのもそのうちよ。礼儀知らずの悪女にはなりたくないもの。でも……剣術や体術を習うのを許可してもらえたってことよね?

「ありがとうございます!レオンお兄様大好き!」

私はそう言ってお兄様に抱きつく。ついさっき手をはたいたくせして都合良いわよね。でも、なんだか視線を感じるわ。

「レオン(にい)、ずるくね?」

「アレクもそう思うか?」

耳元で声が聞こえてびっくりして後ろを向くと、双子。二対の紫色の瞳。

「な、なななななんなんですか!?」

あーもうまただわ!驚いても、悪女は噛んだりしちゃだめなのに!噛んでたら悪女を嫌ってる人に馬鹿にされるわ!私は軽く咳払いをし、

「なんでしょう、フェルお兄様にアレクお兄様」

と訊き直す。すると二人は真顔で言う。

「「ルディ、俺たちにも抱きつけ」」

はい?今なんておっしゃいました、お兄様方。それ、真顔で言うことですか?もしかしてあなたたちシスコンですかね?シスコンだったらお二人揃って別邸にレッツゴーですわ。私が押し黙っていると、助け船を出したのはやっぱり空気が読める男・レオンお兄様だ。

「お前たち、ちょっと俺の部屋に来ようか」

双子のお兄様たちに満面の笑顔で圧をかけるレオンお兄様。兄妹の中で一番敵に回したくない相手だわ……。兄三人衆が庭から建物内に入っていく時に、小さな男の子とすれ違ったのが見えた。あれは……デューね。我が家の四男坊、末っ子のデューク。このゲームでは、ヒロインは選んだ攻略対象と同じ年齢に設定される。なので、最年少のデュールートを選んだ場合、ヒロインは悪役令嬢よりも二歳年下の設定になる。だが、今回ヒロインであるメイニーは現在12歳。よって、選択肢はレオンお兄様、メル様、ヴィクト様の三人に絞られる。

「姉さん、レオン兄さんすごい形相だったけど、なんかあった?」

とてとてと私に近寄ってくるデュー。待って、かわいすぎ!でも悪女とあろうもの、弟になつかれたらおしまいだわ。そう思った私は、また髪を払いながら言う。

「何もないわよ!あっちに行ってミルと遊んでいなさい」

「うん、分かった。ミル、行こう」

素直に従ったデュー。物分かりが良すぎるのよね。それを気味悪がって、ゲーム内のルディシアは弟を嫌ってた。嫌う理由ある?悪女として従う人物は多い方が良いでしょ。自らの手を汚さず、他の人物の手を汚す悪女……っ!なんて素敵なの!私がそう思っていると、ヴィクト様が私から離れた。そして、庭に咲いている葉牡丹(はぼたん)から、一輪を摘んだ。

「ルディ、こんな花があったんだが、なんという名なのか知っているか?」

ヴィクト様が差し出した葉牡丹は、一般的な白や緑、赤ではなく、真っ黒な珍しい色だった。

 読んでくださってありがとうございました!面白かったら、下の星マークから評価・リアクション・感想をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ