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私がミルを従えて向かった先は庭。貴族の令嬢らしくお茶を楽しむ、なんてことはしないわ!体力作りよ!
「ミル、私の特訓に付き合ってちょうだい。ご褒美は豚肉よ!」
私はミルの大好物を餌にミルという魚を釣る。ミルは基本的に人間の言葉が分かるので、目を輝かせている。
「ワン!」
「そうかそうか~。じゃあ、付き合いなさい!」
私はそう高らかに宣言をし、6歳児に出来る限りのスピードで走り出す。ミルも全力ダッシュで追いかけて走ってきた。広大な三大騎士の家の庭は、体力作りにぴったりよ!そう思って走り回っていると、お父様にもらった黒髪によく映える銀の台座に大きな金の宝石が付いた髪飾りが地面に落ちた。
「あ……!」
うー!拾いに行きたいけど、ここで止まれば休憩になってしまうー!私が悩みながらぐるぐるしていると、影のメリウェザー家の長男・レオンお兄様と次男・レオナルドお兄様、三男・フェルナンお兄様が見えた。えっ?引き連れてるイケメン集団、全員ゲームの攻略対象じゃない!では、ここで攻略対象紹介!ドンドンドンドンパフパフ!
まず、レオナルドお兄様。我が家・影のメリウェザーの魔法・影魔法の使い手。12歳。紫がかった黒髪に黒目。愛称・レオン。性格・優男。デフォルト・優しい笑顔。
フェルナンお兄様とアレクサンダーお兄様。こちらも我が家の魔法・影魔法の使い手。10歳。紫がかった黒髪に黒目。愛称・フェルとアレク。性格・フェル、陽気、アレク、ツンデレ。デフォルト・フェル、ニコニコ、アレク、苦笑い。
今はここにはいないが、弟のデューク。我が家の魔法・影魔法の使い手。4歳。黒髪に紫の目。愛称・デュー。性格・引っ込み思案。デフォルト・眉毛ハの字顔。
メルリアン様。火のメリウェザー家の長男。火のメリウェザー家の魔法・火魔法の使い手。メリウェザーの三騎士の家。12歳。低身長。金髪に黄色の目。愛称・メル。性格・ぶりっ子。デフォルト・キラキラ笑顔。
レイウェザー様。土のメリウェザー家の長男で一人息子。土のメリウェザー家の魔法・土魔法の使い手。メリウェザーの三騎士の家。10歳。茶髪。黒目。愛称・レイ。性格・プレイボーイ。デフォルト・目の奥が笑っていない笑顔。
マクシミリアン様。ギルド家の長男。ギルド家の魔法・緑魔法の使い手。12歳。黄緑の髪に深緑の目。メガネ。愛称・マックス。性格・真面目。デフォルト・仏頂面。
ヴィクトール様。王家・フォーレス家の一人息子。フォーレス王国王子。王家の魔法・水魔法の使い手。12歳。高身長。青い髪に青い目。私のタイプど真ん中。この世界では多分ヒロインと結ばれる。愛称・ヴィクト。性格・クール。デフォルト・無表情。
そしてそのヒロイン。メイニー・ブランシュ。12歳。ピンクブロンドの髪に水色の目。なぜか暗闇で目の色が銀になる。これ以上の説明は省く。めんどいから。
自己紹介。ルディシア。影のメリウェザー家の長女。近いうちに影魔法を習得する予定(予定だよ?予定だからね?近いうちに勉強しようと思って)。6歳。黒髪に黄金色とオレンジ色が半分ずつの目。私もなぜか暗闇で目の色が深紅に変わるらしい。愛称・ルディ。性格・わがまま(ゲーム内で)。
ちなみにメリウェザーの三大騎士の家の三家の姓が一緒なのは、三家の初代が三兄弟だったからね。
ぐぬーーー!!レオンお兄様でもフェルお兄様でもレクお兄様でも良いから髪飾り拾って!いっそのことヴィクト様とその他諸々の攻略対象でも良いから拾ってよ!
「お兄様とお友達の方々!どなたでもよろしいのでこの!髪飾りを!拾って!いただけませんかー!?」
「その犬に拾わせないのか?」
「え?」
ヴィクト様の冷静なツッコミに、私は思わず固まる。あーもう私のバカ!そんなにバカだったら最高の悪女になれないわよ!今止まったらぐるぐる回ってた意味が一瞬で消えたじゃない!でも、攻略対象の中で一番タイプの人から声をかけられて、少しときめいてしまった自分がいる。だめだめ、こんな感情は捨てなきゃ。あれ?待って、ここでヴィクト様のことを好きになったらヒロインのことを妬んでいる最高の悪女になれるんじゃない?ううん、だめ。だめよ。自分や人の気持ちを利用する悪女にはなりたくないの。うん。悲しいけど、この人のことを好きになるのはやめよう。彼はメイニーに譲るって決めたもの。
そう考えた私は、髪飾りを拾う。そして自分の髪に着けようとしたが、
「それ、今着けちゃったらもう一回拾わないといけなくなるんじゃない?走るんでしょ?」
と言う声にはっとした。うん?このクールなヴィクト様とは正反対のかわいらしい声は、メル様よね。ゲームで聞いたのより声が高いわね。まあ、ゲームのスタートは三年後、メイニーが魔法学園に入学できる年になってからだものね。でも、このゲームのシナリオライターは寝ぼけていたのかしら。だって悪役令嬢がヒロインより六歳も年下なのおかしいでしょ。ま、一応他にも年齢は選択する方法があるけど……。それにしたって一歳下とかならまだしも、六歳も年下だったら交わらないでしょ。だって魔法学園15歳から22歳までの高校から大学ひっくるめましたみたいなとこだよ?交わるの二年だけだよ!?悪女の仕事できないじゃない!まあ、年下だからこそ生意気さを演出できるんだけどね。年上の未来の聖女様にもの申す生意気な悪女……!なんて素敵でかっこいいのかしら!でも、ヒロインをいじめるのなら、ちゃんとライバル視されないとね!どうやったらライバル視されるかしら。あーもう、やっぱりヴィクト様を利用しないと!そうしたら恋敵として憎まれる!でもやっぱり人の気持ちを利用することになる。やめておこう。ライバル視される方法はまだあるはずだもの。
「ルディ?どうした?疲れたか?」
レオンお兄様が一団を離れて声をかけに来る。うわ。さすが攻略対象。顔面偏差値高いわね。後で筋肉見せてもらえないかしら。
「だ、大丈夫でふ……」
私は今更目が回ってきた。ふらふら危なっかしい私を、他の攻略対象たちもこちらにやって来てどこに倒れても良いように構える。そこで、私はわざと唯一腕を構えていなかったヴィクト様に倒れ込んだ。どうせ倒れるんだったらタイプの人に倒れたいもの。まあ、一応全員タイプなんだけど。それにしても、構えてなかったのに支えられるって、さすが王子様の体幹だわ。
「……っ?」
呆然としているヴィクト様の声が聞こえた。そして背中と膝裏に手を入れられ、お姫様抱っこ状態になった。
「え?」
今度は私が呆然とする番だ。そして、ヴィクト様に顔を覗き込まれた。
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