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ドアを開けて外に出ると、そこはゲームで出てきたメイニーが育った町だった。日本の市場のように肉屋や魚屋、果てはパン屋までもが客の呼び込みをしている。中には売り物の食材を使って作った料理で宣伝している店もあって、賢いなと思った。まあ、私もそれくらいは思いつくけどね。あ、なんかこの言い方ダサいわね。ま、良いわ。
「ジョン、私、これからあなたのこと父さんって呼ぶわ。あなたも私のこと、イディって呼んで」
私がそう言うと、ジョンは不思議そうな表情をする。
「イディ?何でだ?いつもはルディって呼ばれてただろ?」
「ルディだと安直過ぎてバレるのよ。うちの家族、きっとチラシとか町中に貼り回って探そうとするから、それで見つかっちゃったら私の楽しい変装生活……じゃない、あなたの計画が台無しでしょ?」
危なかったわ。楽しい変装生活って言い切るところだった。つい本音が漏れちゃいそうだった。ジョンに聞かれてたら計画を変更されかねないわ。でも、ジョンは私の発言に気付かず、納得した表情で頷いていたのでとてもホッとした。その後しばらく今後の計画について話し合い、床屋に着いた。出迎えてくれたのは優しそうな中年の女性で、私を見ると彼女は顔を綻ばせた。
「まあ、娘さんですか?美人さんで、将来は傾国かもねぇ」
その言葉に私は胸を張る。そうでしょう、そうでしょう!でもジョンに軽く肩を叩かれたのでやめた。ジョンが女性にカット内容を伝え、女性が私を椅子に座らせる。そして、背中の真ん中まで伸びた私の黒い髪を手慣れた感じで素早く切っていく。30分後、私はボブより短くショートより長い髪の長さになっていた。これ、軽くて良いわね。
「ありがとうございました」
私はお礼を言ってジョンと一緒に店を出る。次は男物の服を買いに行く。6着ほど服を買い、私たちはジョンの家に戻った。その時、私は自分のポケットに何かが入っていることにようやく気付いた。
「何かしら、これ」
私がポケットの中をガサゴソして見つけ出したのは、ヴィクト様からもらったあの高級すぎるファンシービビット(以下略)の髪飾り!そ、そういえば私、寝る前に魔法を練習する時、ポケットにこれを入れてた気がする。これは……ジョンには見せない方が良いわね。盗られたら嫌だもの。そう思った私は急いで髪飾りをポケットに戻す。幸い、ジョンには気付かれていない。そこで、私はジョンに尋ねた。
「ねえ。メイニーさんは本来魔法が使えないはずの平民なのに魔法が使えたから学園に入学できたんでしょう?私も同じことをすれば良いの?」
「ああ、その予定だな。だから、マリエッタにこっそりお前の屋敷から魔法の本を取ってきてもらう。お前にはその本を読んで魔法の実力を付けてもらう。男としての武術も習わせるべきかと思ったが……その分だったら必要ないな」
ジョンの言葉に、答えを聞きながら家の壁にものすごい速度でキック&パンチをしていた私はニヤリと笑う。
「お褒めに預かって光栄ね。これからもこんな感じで鍛練するから、習うのは不要よ」
「流石だな、元お嬢様の現悪ガキ」
ジョンのその台詞に、私は今度は口をムッと尖らせた。
「何よ。別に私、悪ガキじゃないわ」
私がそう反論すると、ジョンが呆れ顔になる。何その顔。ムカつくわね。
「おい。その言葉遣い、変えろよ。一人称も『私』から『俺』とか『僕』に変えなきゃいけねえし、オネエもやめろ」
「分かったわよ。じゃない、分かった、父さん。僕、頑張るよ。……これでどうだよ」
私が敢えて男子っぽい言葉遣いにすると、ジョンが親指を立てた。
「上出来だ。あとは声の高さをどうするかだな」
彼の言葉に、私は呆れ顔になった。
「なんだよ、変装で口に布巻くんじゃないの?それで高いとか低いとか分からなくなるだろ」
私がそう言うと、ジョンはハッとした。
「そうだったな。今実際にやってみるか?」
「まあ、それもそうだね。やってみるよ」
こうして色々なことを練習しながら魔法を使える平民の少年を装っていると、程なくして魔法学園からのお声がかかった。
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