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 2年後。私は寝る前に今日学んだ魔法をおさらいしていた。ベッドの上では成犬となった飼い犬・ミルが黒い背中を上下させながら眠っている。そして、私が最後のおさらいを終えたとき、ことは起きた。

 バリーン!!

大きな音がする。それと同時に部屋の窓ガラスが壊れた。驚いたミルが起き、吠えている。私が状況を把握しようと後ろを向くと、私の口にハンカチが押し当てられた。ああ、これ、ドラマとかでよくある誘拐シーンだわ。私はそんなことを考えながら、意識が遠のくのを感じていた。あっという間すぎて、何があったのかを残す魔法をかけるのも忘れてしまった。


○○○


 ん……ここ、どこ?私はゆっくりと目を開く。そして、これまでに何があったかを思い出す。確か私、夜に部屋で魔法の復習をしていて……そうだわ、誘拐されたんだわ!迂闊だった!私がもっと素早ければこんなことにならなかったのに。

「目が覚めたか、間抜けめが」

耳に入ってくるのは、聞き覚えのある声。だけど、その声の持ち主が発したとは思えない言葉。信じたくない、けど。私は恐る恐る声の元を向く。すると、普段は柔和な顔をこれでもかというばかりに凶悪に歪めた。

「……ジョンさん……?」

私がそう言葉を発すると、彼はニヤリと笑う。

「ご名答。ああ、こんなの、人の顔を覚えていれば簡単に分かるか!アヒャヒャ!」

彼の口から聞いたことないくらい下品な言葉に笑い方。有り得ない。ジョンが誘拐犯?でも、もしもこれが本当なのだとしたら動機は……私がメイニーにつらく当たったこと?

「ジョンさん、私を誘拐してあなたに何の理があるの?メイニーさんにつらく当たったのが動機だとしても、誘拐してもあなたにメリットはない。むしろデメリットしかないでしょう?」

私がそう言うと、彼は表情を歪めた。

「ああ、そうだ。だから、デメリットの代償として、お前にはメイニーと同じ目に会ってもらう。魔法学園に特例入学しろ。お前のことだ、誰彼構わず虐めるだろう」

いや、誤解しないでいただきたいわ。私一応常識は持ってる。と思いたい。誰彼構わず虐めたりなんてしないわよ。っていうか誰も虐めないわ。

「どのようにして私を魔法学園に入れるの?特例で」

私が訊くと、ジョンはニヤリと笑う。何その悪役っぽい表情。羨ましいじゃない。

「お前には魔法を見せびらかして学園の注目を引いてもらう。そして特例入学したら俺の思惑は成功だ。嫌とは言わせない。お前が断ったらマリエッタを殺す」

マリエッタは貴族とはいえ子爵令嬢という身分の低さだ。そのため、魔法は使えず、ジョンみたいな体格の良い男に暴力を奮われれば一溜りもないだろう。

「マリエッタのことは尊敬していた。ものを現実的に見られる人だからな。だが、メイニーをいじめていたやつを陥れるにはこの方法が1番だ。悪役として周囲から妨げられるがいい!」

待って何その好条件!悪役として周囲から妨げられる!?私の願望のままよ!でも、こんな反応をしたら条件を変えられてしまうかもしれないわ。悲しんでる振りをしましょう!

「分かりました……」

我ながら良い演技!沈んだ口調が上手いわ!

「ふん、少しは反省しろ。それと、1つ条件がある。変装して学園に通え」

「お兄様やご友人方にバレるからですね?」

「そうだ。お前の弟も特例入学になるだろう。弟と同じ学年ということになるだろうから、変装を解くな。解いたらマリエッタを殺す」

ほへー。変装するの。楽しそうね!

「変装の内容は?」

「その長い髪は肩より少し上の所まで切る。大きめのメガネをかけてもらう。口には布を巻いてもらう。制服は男子用だな」

イメチェンね!楽しそう!でも、悪女たるものここで簡単に引き下がってはいけないわ!

「私の美貌を汚せと?」

私は口の下に手を当てながらにいっと口の端を歪める。

「お前の美貌など、お前には勿体ない。宝の持ち腐れというものだ」

「あら、失礼な平民」

私が貶すようにそう言うと、ジョンは拳を振り上げる。私は迫ってくる拳を魔法で受け止める。ジョンは悔しそうな顔で動く。が、動けていない。面白いわ!

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