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 「この子ーールディは、10歳です。そこまではいいですね?」

確認するようなお父様の言葉に、国王親子は頷く。

「では、この子が、魔法を使えると言ったら?」

今度の例えるみたいな言葉が、さっきの口調と同じなのに、なぜだか重く感じる。私が拳を握り締めて俯くと、国王様がお父様に声をかけるのが聞こえた。

「お前が嘘をつくとは思えないが、その幼い子が魔法を使えるとは思えない。ルディシア、やってみてはくれぬか」

最後の言葉は私に向けられている。そのことが分かっているはずなのに、反応できない。でも、答えないとお父様が嘘つき扱いされるわ。緊張するわね。私は俯いていた顔を上げ、国王様の机の上に置いてあった書類を浮かせる。それを見たヴィクト様と国王様の目が見開かれる。そりゃそうなるわよね。まだ魔法を使えない年齢のはずの女の子が、書類を浮かせられたんだから。

「ルディ、これは、君が自分でできるようになったのか?」

ヴィクト様の問いに、私は静かに頷く。魔法が使えるってことは、ヒロインと学園で対決するときに見せたかったんだけど……しょうがないわよね。それに、ほとんどの人は私が魔法を使えることを知らないはずだし、別に大丈夫よね、きっと。

「マイク、これは、どういうことだ?」

国王様がお父様に思わず、といった様子で問う。マイクっていうのはお父様の名前ね。

「どういうことも何も、今日はこの子の誕生日にもかかわらずルディは自身の髪飾りを割ってしまいましてね。息子たちと一緒に証拠隠滅をしようとしているところを私が見つけまして。色々あって私がその場で考え事をしている間に魔法でポケットに隠そうとしたんです。それを見て上の息子たちに魔法を使ったかと訊いても使っていないというのでルディが使ったと分かりました。そこで私は大急ぎで王城に参上致しました」

お父様の答えに、国王様は「そうだったのか……」と感慨深げに呟く。すると、その澄んだ青い瞳が私を見た。

「では、特例入学をもっと速めた方が良いのではないか、ルディの方だけ」

国王様の言葉に、お父様が即座に頷くのが見える。えっ、即決!?少し考えさせていただきます、とかじゃなくて即決!?

「あ、あの、特例入学を速める場合、いつになるんですか?」

私が思わず尋ねると、国王様はそうだな、と考えた後、

「来年にでもするか」

という爆弾を投下した。嘘でしょ来年!?私は驚きのあまり口を開けたまま固まる。開いた口が塞がらないとはまさにこのことよ!

「ら、来年ですか!?」

私があんぐり口を開けていると、ヴィクト様に下あごを上げられる。

「ヒフホひゃま?」

私が怪訝な顔でヴィクト様を見てみると、今にも笑いだしそうな顔をしていた。っていうかもうがっつり笑ってる。ようやく下あごを外されたと思ったら爆笑しているのが聞こえた。

「はははははははっ!あー、面白い」

「あの、いくら何でも傷付きます。まだ幼い令嬢の心に傷を付けるつもりですか?」

私が魔法で蓋の閉まったインク壺を彼の頭に結構強めにぶつけると、ヴィクト様はちょっと待ってと言うように私の目の前に手を伸ばし、10回くらい深呼吸をした。深呼吸の数が多いいっすパイセン。

「すまない。ルディのさっきの顔が面白すぎてな」

全く反省してない顔のヴィクト様。ひどい。顔だけ良い最低の人間がいるー!私がプンスカしていると、お父様に肩を叩かれる。

「茶番はそこまでにしろ。アーノルドの言う通り、特例入学は速めた方が良いと思う。お前も従いなさい」

この表情を見る限り、もっと魔法を使えるようになってから入学したいと言っても聞いてもらえないわね、絶対。私は、諦めた。悪女ともあろうもの諦めてはいけないとも思ったが、お父様を敵に回すのも恐ろしい。時には身を守ることも大切なのだから。

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