10
はあ、最悪。絶対にお父様に怒られる。
あれから4年、今日は私の10歳の誕生日……なのだが。目の前にあるのは、無惨に砕け散った宝石。学園に入学したお兄様達やデューと剣の鍛錬をしていたら、落として割れてしまったのだ。お兄様たちやデューが固まっている。私は固まりながら引きつった笑みを浮かべる。
「みんな、証拠隠滅手伝ってね……?」
私がそう言うと、全員が頷く気配がした。一緒にいてどうして阻止できなかったとか言われて怒られるからだ。
「おい、ルディ。隠蔽罪で訴えるぞ」
えっ!?うっそーん!何であなたがこんな所にいらっしゃるんですか。怒気を孕んだ声で訴えるとか言わないで下さい。冗談抜きで恐怖なので、お父様。
「ち、父上」
「「父様……」」
「父さん……」
「お、お、お父様……」
みんな同時にお父様を呼びながら狼狽える。それはそうだろう。私が髪飾りを壊したことを隠蔽することに同意し、協力しようとしたのだから。
「その、お父様、これは、事故と言いますか……」
私はしどろもどろになって答える。別に嘘は言ってないのでしどろもどろになる必要は無いのだが、場の空気がそうさせていた。
「事故?剣の鍛錬をしている時に髪飾りが落ちるかもしれないのはお前にも分かっていたはずだが。同年代の令嬢よりも頭が良いと思っていたが」
いつも穏やかなお父様が出したとは思えない低い声を聞いて、狼狽えていた私たち兄弟は今度は恐怖に竦み上がる。いくら私でもお父様には悪役令嬢出せないのよね。人によって態度変えるとか、意地悪な悪役令嬢にあるまじき行為だわ。お父様に対しても悪女でいないと!
「ええ、そうです。私、頭が良いのですわ!ですが、お父様とは認識が違うようですわね。残念です」
私はお父様を見下したような言い方をする。でも、お父様はフム、と考え込む。え、まさか、疎まれるどころか感心とかされてる?普通に嬉しいけど、悪女としては複雑ね。私はそう思いながら手をそっと背中に隠し、指先を動かす。実は最近、あの巨大な図書室から魔法の本を見つけて、少し使えるようになったの!この世界はピースフルという一番簡単なものからイージー、ノーマル、リトルハード、ハード、マスターと6段階に別れており、それを攻略した後はレベル1から100を制覇する。それができたら魔導師の称号を得られる、というルールだ。そして私は影魔法のイージーを攻略できたのだ。そして今、お父様の意識は考え事へ。私は落ちた髪飾りを指先でそっと浮かせる。そして、あと少しでポケットに入る、というところでお父様にバレてしまった。
「レオン?お前か?魔法を使って髪飾りをルディのポケットに入れようとしているのは」
でもなぜか、お父様が声をかけたのはレオンお兄様。彼が怪訝な顔をして首を振ると今度は、
「じゃあ、フェルか?」
とフェルお兄様の方を向く。というか家のお父様すごいのよね。双子を見分けられるのよ!ちょっと脱線しちゃったけど、フェルお兄様も首を振り、お父様はアレクお兄様にも同じことを訊くが、結果は同じ。そして、お父様の質問の矛先は私に向かう。
「まさか、ルディ、お前か?」
「……はい、そうです。申し訳ありません」
ここで嘘をついても弁解の余地は無さそうなので、私は正直に言う。え?何そのありえないものを見るみたいな視線。私のドレスにソースでもびっしょり付いてるの?
「……何でしょうか?私、そんなに変なこと言いました?」
私は流石に不思議になり、沈黙の中に声を響かせる。すると、お父様が私を抱き上げた。
「ルディ、王城に向かう。至急支度をしなさい」
「え!?なぜですの!?」
私がすっとんきょうな声を上げると、お父様は険しい顔をする。
「王城に向かう途中で説明する。今はとにかく支度をしなさい」
何がなんだか分からないわ。でも、支度をするしかなさそう。私はよく分からないまま支度をされ、王城に連れていかれた。
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