ずっと後悔しない
『ずっと後悔しない』
私は決して忘れようとは思わなかった。中学で別れた彼氏を。いつも通り、学校の途中のベンチで煙草を吸っていた。
私はいつものように、こうしているだけ。退屈なんてない。ただ違う高校に行っただけの事。それで良かった。
――中学二年の夏だった。二人が初めて結ばれた日は。その痛みを乗り越え、だんだんと女のテイストを味わえるようになった。
恋人らしい恋人であった。こんなにひねくれた私を「拾って」くれた事があり、それ以来付き合っていた。夏休みはプールにいるか、涼しい場所で涼んでいるかとかしていた。私は太陽が大好きだ。いつも夏は私を小麦色の肌にしてくれる。黒髪のロングヘアー。背は標準で、何よりも体脂肪率が少ない。華奢な体躯だ。
私は高校進学する上で、彼氏は受験勉強をしている。私とは離れるつもりらしい。私は未練があるけど、仕方ない。時を流れて、そう思えるまでになった。桜の花びらを一人で観に行った。もう私も受験勉強をしなければならない。一人じゃ淋しい。だから、煙草を始めた。
私はそのうち新しい恋人と一緒にいるだろう。でも、仕方が無い。
「私はそのうち彼氏見つけるよ」
「それでいいんじゃない。もう逢う見込みもそうないし」
「でも、楽しかったよ」
「お互い楽しめたかもしれないね。ナンパばっかされていたけど、よくついていかなかった」
「私はそんなに軽い女じゃない。ひねくれているけどさ」
そんな話を珍しく一緒に登校して話した。いつも一緒にいる子が過労でダウンした。勉強のやり過ぎらしい。たださぼりたかったのかもね。何となくだけどそう思った。
私は夏休みに入り、一人で、ベンチで一服するようになった。日時はまちまちだけど涼しい時間帯が多い。そして、別れは近づく。私はきっと、こうして恋愛をして行くのだと思った。いずれは忘れない。記憶を辿れば、きっと大切だったと気付く。
秋は通り過ぎ、冬になった受験シーズンだ。私は彼氏の事を忘れて、答案用紙を見ながら、ほくそえんだ。思ったよりも簡単な作業だった。
そして、高校に受かり、彼氏は滑り止めで合格した。どちらも凄い名門と言われる高校に入った。借りは大学受験で返すと言っていた。
私は春に桜が咲く。そして、高校の夏休みではきっと彼氏が出来ているんだろうなと思った。そこで別れの誓いのキスをした。チョコレートの匂いがした。いつも、通りの変哲もないキスだった。でも、私はきっとこの味を思い出せる日が来ると思いたい。
卒業して、目を覚ます。最後は目を合わせずに、別れを告げた。もう二度と逢う事はないから。それが私の最初の「恋」だったから――
そして、彼氏を作ろうかなと思った。高校一年で恋愛を出来なくなる程、純情でもない。いつも、元彼の顔を思い出しては、次なる恋に足を踏み入れなかった。
そして、夏休みが終わり、恋の告白を受けた。私は返事を即答した。それは前向きにいけるように。
そして、私たちは別れるまで楽しく過ごしたい。
「何でいつも優しくしてくれるの?」
「好きだからに決まっているだろう」
「いい返答が返って来たね」
そうして、高校一杯までは、他に好きな人がいる事になったら、別れるだろう。出来ればずっと高校の一杯までは付き合いを続けて欲しい。長いほど、いい気がした。彼氏から別れを宣告されたら、きっと、更に綺麗になりそうだ。失恋もありだから。美しくなるための要素になるから。とにかく恋愛できるうちに、はしゃごうと思った。せめて高校生活が終るまでは。