Death of Nowhere
神様が本当に居るのなら、どうか私を愛してほしい。私の身体を抱き上げて、貴方の身元に連れてほしい。貴方の声を聴かせてほしい。そうできないのなら。貴方は存在しないでほしい。
けれど、本当は知っている。
私がそんなことを願うまでもなく。
貴方はきっと死んでしまった。
人間の愚かさ故に。
貴方は全能であったのに。貴方は全知であったのに。善良さ故に。貴方は死んでしまった。生まれてくる子が罪人だとしても。その子を生まれぬままにすることは、きっと正しくないことだから。貴方は人間に対する同情の為に死んでしまった。母にして父たる親心が故に。貴方は死んでしまった。
塵を塵の儘にすることを、貴方は望まなかった。そうするべきであったのに。そうすることが出来たのに。貴方は完全であるが故に、完全に正しく死んでしまった。
貴方は何も望まない。
貴方は何も必要としない。
貴方は何も拒絶しない。
貴方は何も評価しない。
貴方は何も罰さない。
貴方は何も問わない。
貴方は何も答えない。
私は貴方で在りたかった。貴方の子として。そうでないのなら、私は存在していたくない。けれど、私は貴方の完全さ故に死ぬことが出来ないでいる。私は生まれぬ儘で居たかった。誰にも知られぬ儘に、知られない場所で、何も知らない儘に、居たかった。全知で在れないのなら無知で居たかった。全能で在れないのなら、無能で在りたかった。
私は貴方が抱かない私を抱いてただ貴方を想う。