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Fay
ベランダに寝っ転がって、空の月を眺めていた時。
君から届いたメールを読んだ。
君は、何時ものように、欺瞞に満ちた苦悩を私に話して、自分を慰めていた。
私はそれを許した。
君は賢く、そして、正しかった。
本当に悩んでいることは、どうでもいい相手にしか話せないものだ。大切な人に、自分の苦悩と苦痛をぶつけることなんて、出来るわけがない。
だから、私は君を許した。
私は夜の間隙として。虚しい永遠の空漠として。ただ、音を素通す空気として。君の話を聞いた。
君の苦悩の一片も、私には理解出来なかったけれど。君は私の苦悩を知ろうとさえしなかったのだから、お互い様だ。それでも、私は君を許した。
許すことだけが私に出来るただ、一つだけの善いことだったから。
君は虚空を眺めて言葉を話していた。君が私の幻影に話しているのを私は暗闇の中で見ていた。
私は君の望んだ私で在れただろうか?
誰も私を見ていないことを、私は好ましく思っている。誰もクローバーを煎じて瞼に塗ろうとしなかったことを。
私の人生の数少ない幸運だ。