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dark filament
世界をどれだけ疎んでも、真実、輝かしいものは在る。いっそ世界が、ただ醜いだけであったなら、私は苦しまなくて済んだというのに。
劣ったもの、貧しいもの、穢れたものは、輝かしい栄光のその薄暗い影として、此の世に生を受けたのだろうか? 輝かしいものが、慰みに言う、尊い言葉を投げかけられて、それに感謝し、輝かしいものを一層際立たせる為だけに?
私は暗条。私は半月の隠れた半分。私は貴方から見た私を演じる私。
瞼を閉じた裏側のその温かい暗黒だけが、私を愛してくれる。夜の静寂の中、静かに一人、目を閉じている時だけが。私が此の世に存在している時間。
貴方が私を見ている時、私に話しかけている時、私は消えて、貴方の中に居る私だけが世界に存在している。貴方は輝かしい生の中に在って、貴方の望んだ私だけが、許されて世界に在る。そして、私は宵闇に投げ捨てられる。思考の中の暗黒に。