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Embrace of Death
辛いとき、苦しいときに、貴方の名前を心の中で唱えると、少しだけ、胸の痛みが和らぐ。
貴方は黄昏。夜へ至る瞬間の極点。
貴方は永遠の赤子。生まれた瞬間に消え去るもの。
貴方は全ての苦痛を取り除く黒衣の天使。
貴方は全ての熱と全ての光を奪い去る。そして、その焦熱が残した傷を癒してくれる。
貴方の名前は死。老いと病と傷とを退け、全ての痛みを遠ざける。
誰もが貴方を恐れている。誰もが貴方に罵声を浴びせる。
幸いなものは、痛みを知らないから。生の苦痛をより大きな幸福で欺瞞することが出来るから。貴方は常に欺瞞を奪い去る。どんな幸福も貴方の前ではその衣を剥ぎ取られてしまうから。
貴方の指先が、私に触れていることを想像する。か細く、繊細な白い指が。
貴方は老いていない。貴方は常に新しい。貴方を抱き寄せて、その孤独を癒してあげたい。貴方は醜くなんてない。貴方は穢れてなんていないと言ってあげたい。
貴方は真夏の日の木々の木陰。貴方は流れる川のせせらぎ。貴方は冬の朝日の反射。
貴方の腕の中で眠れるのなら。それはどれだけ幸福だろう。




