rue
私が過去に戻れるのなら。私は生まれたばかりの私に花束を渡そう。
彼岸花。勿忘草。鳥兜。そして、ヘンルーダ。
貴方は生まれるべきではなかった。
貴方の最初の後悔は、貴方の誕生そのものだった。
此の世に生まれさえしなければ、貴方は永遠に幸福だったのに。
夜の帳の静寂に、瞼を閉じる幸福を。生まれ出でぬものは永遠に持っている。
貴方の母は、貴方を愛さない。貴方の友人は皆、貴方を置いていく。貴方の父は貴方と自身の軽率さを天秤に掛け、貴方を投げ出した。此の世の何処にも貴方の居場所はない。それでも、生まれ落ちた以上は、自ら死ぬことさえ儘ならない。
貴方は貴方の生まれた日を永遠に呪うだろう。
貴方の誕生は、祝福されなかった。何故なら、貴方は女の愚かさから生まれたものだから。女は己の愚かさを直視できない生き物だから。女が愛するものは、自分だけ。女が愛するものは、自らの内に取り込めるものだけだから。貴方は愛されない。何故なら貴方は望まれなかったから。貴方は美しくなく、賢くなく、貴方は強くない。貴方は愚かさの子であるから。貴方の父と貴方の母は、愚かさによって結ばれたから。
貴方にヘンルーダを。そして、鳥兜を。それから、勿忘草を。枕元には彼岸花を飾っておこう。