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食レポ:透き通る物語~ちくわより愛をこめて花束を~誰だ今の

作者: 唐揚げ
掲載日:2023/12/05

 テロリストが教室に入ってきたというような妄想は誰だってするはずだ。僕だってする。

 しかし、実際にそうなった時どうすればいいかというとわからない。


「テロリストだこのやろおおおおおおおおおお。両手を上にあげたまま、床に伏せろ、糞ガキ共おおおおおお」


 さらなる問題は、今、僕が居るのは京都市が運営しているお料理教室であるということだ。

 婚活にあわせたお料理教室で、ヒラレミが講師としてやってきていた。

 僕たちはテロリストのいうように、両手を上げたままに、床に伏せた。肩が痛い。


「大丈夫だよ。僕がついてる」


 隣のブースにいたイケメン男が、隣のブースでさらに隣り合っていた女性に優しく声をかけた。

 婚活イベントのこのお料理教室に参加するものじゃなかった。元から参加するつもりはなかったというのに、興味本位から参加してしまい、この有様である。まさか、テロリストの襲撃に巻き込まれるとは。


「よ、要求はなんだ!」


 いつの間にか、お料理教室の前に陣取った警官隊から、そんな声が飛ぶ。


「金だ。この教室の金を全部よこせ」

「お料理教室は、参加者全員の善意によって成り立っている。金などあるわけがない!」

「うるせえ! 責任者を出せ! 責任者!」

 

 テロリストは拳銃を振り回した。

 ここらで一発やってみよう。ばっと立ちあがると、テロリストに襲い掛かった。激しい取っ組み合いの末、拳銃が口の中に押し込まれる。万事休す、と思ったその時だ。舌を伝わってくる味と感触。


「これ、竹輪だ!」

「し、しまった!」


 テロリストが狼狽える。竹輪を黒いごはんですよで塗っていたのだ。美味すぎる。

 その僕の言葉に警官隊が雪崩れ込み、テロリストと僕はもみくちゃにされる。


「テロリストめ! 神妙にお縄につけ!」

 

 僕は逮捕されるのだった。


「待ってくれ! なんで僕が警察に捕まるんだ! おかしいだろ!」

「テロ行為を行った場合、犯人には人権がなく、生死を問わずなんだ」

「そんな馬鹿なルールあるわけないだろ、ふざけんなよお前!」

「お前はもう死んだんだ。婚活のお料理教室を破壊した、社会的に死んだ!」


 そんな馬鹿な話があってたまるものか。しかし、現実は無情だ。僕は手錠をかけられたままパトカーに乗せられる。

 

「こんなの、絶対におかしいよ!」


 こうして僕は警察署に連れて行かれることになったのだ。

 僕の名は後藤ひとり。どこにでもいるただのぼっちである。高校2年生で童貞だ。いや、今はもう高校の卒業式で、卒業しているから、正確には違うのか? ああもうわかんねえな! とにかく今日も憂鬱な日常が幕を開けた。


「……お……おはよ……」

「突然ですが、終了です! ボッチザ・ロックのロックはアルカトラズのロックです!」

「ニコラス!」


 突然の叫び声に僕は目を覚ました。


 そこは警察署の取調室だった。

 目の前には刑事と弁護士がいた。


「目が覚めたかね」

「ここはどこだ……俺はどうしてこんなところにいるんだ!」

「落ち着いてくれ、ここは京都市警察さ」

「そうだ、後藤ひとり君。君は昨日の放課後から今日の昼にかけて、京都市内にある婚活のお料理教室を襲ったテロ事件を起こしたんだよ」

「なぜこんなことをしたんだい? 婚活に勤しむ若い人たちを、結婚という地獄におくりたかったのかい?」

「待ってくれ! 僕は違う! 竹輪を食べただけなんだ!」

「なに!? 竹輪を? ごはんですよ、で黒く塗った竹輪を食べたのかい?」

「そ、そうだ。それが何の罪になる」

「不敬罪」

「ふ、不敬罪だと」

「そうだ。神聖なる婚活お料理教室の食材を黒く塗り、あげくそれを食べて、『うまい! うますぎる!』と叫ぶなんてあってはならないことだ」

「だからそれは竹輪だからであって……」

「もういい。君の言い分は署でゆっくり聞こうじゃないか。ご同行願うよ!」

「すでに取調室だがね」


 僕は無罪だ! あんなテロリストみたいな真似をするわけがないんだ!

 きがつくと僕は略式起訴されて、アルカトラズに収監されていた。同房のニコラスとドウェイン、スタローンに、赤ちゃんマンが俺をはげましてくれる。


「ここを出て、皇居に一発デカいのをお見舞いしてやろうぜ」

「ニコラス、気でも狂ったか。この独房からどうやって出るというのだ」

「みんな、聞いてくれ。僕はお料理教室でテロ事件をおこしたわけではないんだ! 信じてほしい!」


 同房のニコラスやドウェインたちに訴えかける。

 ごはんですよを黒く塗った竹輪を食べるなんてありえないという。


「まさか、竹輪を黒く塗っただけで、テロになるなんて!」

「そうだぞ! ごはんですよは黒く塗って食べるものだろう! 竹輪だけに限らない! たまごかけご飯にも味噌汁にも塗りたくって食べるんだ!」

 

 ドウェインが熱く語ってくれたが、ちょっとよくわからない。


「脱獄するなら協力する! そろそろ、クイルドスピードの撮影があるそれに乗じて脱獄だ」


 スタローンが脱獄計画の詳細を話してくれた。


「ニコラス、それにスタローン。君たちには感謝するよ」


 こうして僕は刑務所を脱獄するが出来た。

 日本にはクイルドスピードの撮影でなんとか戻ってくることが出来た。日本の東京タワーと山梨県の富士山をバックに、京都で撮影されたクイルドスピード24の宣伝写真を撮る事を条件にしたのだ。

 そして、僕は赤ちゃんマンに頼んで準備してもらった爆弾のスイッチを入れた。

 富士山の地下深くにある爆弾が爆発した。

 赤ちゃんマンが準備してくれた花束爆弾は、溶岩を熱々の花びらに変えた。

 とてつもない大噴火をする富士山、そして、その溶岩を被る東京タワーをバックに、京都で宣伝写真を撮った僕は、コンビニに入ると、竹輪とごはんですよを買った。そして、大混乱している群衆のただなかで、竹輪をごはんですよに浸すと、それを一口で食べた。

 懐かしく、不思議な味だった。

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