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夏2
暑さを引きずりながら日が暮れる、真夏日のことである。
見慣れた気配に気づいて、私は目を開けた。
大きな鞄を引きずった彼女が、両親に見送られながら橋を渡っていた。
「それじゃ、お父さん、お母さん、私はここで」
名残惜しむように、彼女が告げた。遠く離れた海の向こうへ行く日なのだろう。
「気をつけてね……体を、壊さないようにね」
「……たまには、帰ってきてもいいんだぞ」
母は顔を歪ませて言った。
父はそっぽを見ながら言った。
彼女はそれらに小さく頷いて、両親に別れを告げると、街の方へ歩き出した。
「っ元気でね!」
去っていく彼女の背中に、母親が堪らず叫んだ。
彼女の背中が動きを止め、少しした後大きく手を振った。
そうしてまた、歩き出していく。
母親が泣き崩れ落ちた。
父親が、それに寄り添う。
次いつ聞けるか分からぬ足音が、遠ざかっていく。
小さくなっていく背中を、じっと目に焼き付けて、私は再び目を閉じた。




