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春3
木々が新芽をつけ始める、初夏の日のことである。
見慣れた気配に気づいて、私は目を開けた。
父親の腰ほどまで背が伸びた女子が、両親に挟まれて橋を渡っていた。
「美咲ももうすぐ一年生かぁ」
父親が感慨深げに呟くと、女子が走って橋を渡り終えて両親に向き合う。
「そうだよ!私、りっぱな一ねんせいになるの!」
堂々と宣言して、家の方へ走っていく。
父親も笑いながらそれを追う。
橋には母親だけが残された。
「まったく美咲もパパも、落ち着きがないんだから」
呆れたように言い、少し微笑む。
その顔が、少し翳った。
「そうよね…。妹ちゃんの分まで、頑張らなきゃね」
「まーまー!はやくー!」
女子の声が響く。
母親は顔を上げて、早足で橋を渡っていった。
三つの笑い声が遠ざかっていく。
まだ少し早い蝉の声を聞きながら、私は再び目を閉じた。




