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春1
ある春の日のことである。
見慣れた気配に気づいて、私は目を開けた。
すくすくと三の歳まで育った赤子が、父親と手を繋いで橋を渡っていた。
母親の姿はない。
「ママ、だいじょうぶなの?」
不安そうに父親に尋ねる。
少しの不安と、期待が入り交じる声で父親が答えた。
「大丈夫だよ、美咲の妹が元気なんだ。だからママも、産むのがちょっと大変なだけさ」
年を明けてすぐ、母親が第二子を孕んだ。
二人目ということもあり、父親も母親も、一人目の時よりいくらか余裕を持っているようだった。
「もうすぐ、美咲はお姉ちゃんになるんだぞう」
「おねえちゃん!?かっこいい!」
小さな体がぴょんと跳ね、橋板がギィギィと鳴る。
「パパ!わたし、すごいおねえちゃんになる!」
「はははっ。それならママも安心だな」
子どもらしい高い声が、遠ざかっていく。
微笑ましいなと思いながら、私は再び目を閉じた。




