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序
その橋は、住宅地と山の間にあった。
新町開発で作られた家々と、それらに囲まれた小さな山。
それらを隔てる小さな川を繋ぐように、そこにあった。
築何十年か分からず、渡るとギイと音が鳴る。
元は赤く塗装されていたであろう、すり減った橋。
ある時、街から橋を渡った向こうに一軒家が建った。
家を建てたのは一組の男女。
まだ若さの残る男と、腹を大きく膨らませた女の二人。
街から家に来るためには、必ず橋を渡らねばならないから、彼らはほぼ毎日この橋を渡った。
しばらくして、女が子を産んだ。
ある日、男が新品の乳母車を押し、女は寝息を立てる赤子を見守りながら、この橋を渡った。
その時、不意に赤子が目を覚まし、じっと私の方を見た。
生まれて間もないからか、何かを感じ取ったのだろう。
その赤子に何を思ったのか分からない。しかし、私は何故か赤子が気になったのである。
これは、私が徒然に記した、その赤子についての備忘録である。




