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教室

 東京から少し離れたどこか小さな町。

 そこの人達はみな穏やかで、優しく思いやりのある人達ばかりだった。

 その町は、ビルが少々あり、人口はあまり多くなくどちらかと言えば、町の広さの割には少ないくらいだった。

 そして、今日その小さな町の学校に転校生が来る。

 中学校の情報が早い少年達は、その噂をもう数日前から学校中に流していた。

 

 そして、転校生が来る瞬間。

 1年C組のドアが勢いよく開いた。生徒全員の注目が集まる。

 先生だけがにこやかし、他の生徒はニヤニヤ笑ったり、嫌そうな顔をした。

 それもそうだろう。転校生・・・・・・・・・いや、アカは普通の子よりも小さい。パッと見れば小学生に見える。

 アカは生徒達にそう見られているとも分からずに、手探りで壁や机を探し当て躓くことなく先生の隣へいった。

 その行動を見て、生徒達はなんとなく理解した。彼女の目は何も映せないのだと。

 先生は、アカの事について話し始めた。

 「黒川アカさんは、今日からこの1-Cでともに過ごすことになった仲間だ。みんな仲良くするように。それと、アカさんは目が見えないためみんなもそこらへんは気遣ってあげるように」

 「はーい」と無気力な返事がぱらぱらと返ってきた。

 アカは真っ暗な世界をただ見つめていた。自分の目の前で人の話し声が聞こえる。姿かたちは見えないのに音声だけ聞こえるという、変な感じ。アカは目が見えなくなったとき、その不安でいっぱいだった。


 休み時間。アカはたくさんの話し声に囲まれた。

 「どこから来たの?」「今はどこに住んでるの?」「前はどんな学校?」

 そんな意味もないような質問をたくさんされた。

 そのたびにアカは面倒くさそうに答えた。

 その質問タイムが終わったのは次の授業が始まる予鈴が鳴ったからだ。

 生徒達は嫌々ながらも席に着いた。

 

 その日は何も変わったことはなかった。

 ただ授業を受ける。そして先生に哀れまれて、慰めの言葉を毎時間聞いた。昼食は持ってきたパンを席で食べた。何人かに誘われたが、アカは断った。午後は体育。アカは見学した(させられた)。何人かの生徒に羨ましがられた。アカは何も言わなかった。

 

 そして放課後、クラスの大体の人が部活へと急いだ。

 残ったのは授業中手紙を回している、ハデでうるさい人達。それと、大人しく本を読んでいる人。宿題をさせられているバカ2人組み(両方男)。それと、アカの合計7人。

 うるさい人達は「今日はどこ行く?」とか「ねぇねぇ、A組の松田君、カッコよくない?」とか、雑談をして宿題をしている人達を邪魔している。

 そして、そのうるさい人達がアカの方へやってきた。アカは足音をする方へ顔を向けた。

 クスクスと馬鹿にするような笑い声が聞こえる。

 「黒川さんはぁ、どうして目が見えなくなっちゃったのぉ?」金髪のリーダー的な人が言う。

 「事故で見えなくなったのよ」

 「えっ、それじゃぁドラマとか人の顔とかも見えないんだ?」また別の人。

 「当たり前でしょ。あなたたちバカ?」

 「ちょっと、それはないんじゃないの?」またまた別の人。ちょっと(?)怒ってるようだ。

 「あぁそれはよかったわね」

 アカは無視してカバンの中から本を取り出そうとした。

 その時金髪の人がアカのカバンを奪った。

 「ちょっと、目が見えないからって誰にでも優しくしてもらえると思ってんの??」

 その大きな声に、他の3人もこちらに注目した。

 アカはその声に向かってハッと笑った。

 その行動にその場にいた全員が感じたもの、それは恐怖。なんともいえない恐怖が背中を駆け巡った。

 「別にそんなこと思ってないわ。わたしの目が見えても、わたしはこの性格でしょうね」

 アカがクスクス笑う。

 まるで、巣にかかった獲物を見る蜘蛛のように。ウサギを目前にした猛獣のように。

 アカ以外の人間の背筋を寒気が襲った。

 さっきまで威勢よく悪口を言っていた人達からは、もう笑ってはいない。

 「ちょ・・・ヤバいよコイツ・・・・・・」グループのリーダーが耳打ちをする。

 「ねっ、ねぇ、もう行こ?」

 「うん・・・っ」

 3人組は逃げるように教室から姿を消した。


 後に残ったほか3人は、まだアカを見つめている。

 アカには見えないが、その表情は空気の重さから読み取れた。

 プリントに書き込むシャーペンの音さえも聞こえず、ついに沈黙に耐え切れなくなったアカが口を開く。

 「どうしたの? 自分の事をやってもらってもいいのよ?」

 全員がごくりと唾を飲む。

 窓も開いていないのに、カーテンがゆらゆらと揺れた。そして、宿題組のしていたプリントが何の前触れもなく落ちた。

 そのことに関しては、誰も驚かなかった。それよりも、この異様な空気。妖気とでも言うのか、まるでアカに何かがとりついているようだ。

 「なあ、黒川」

 落ちたプリントを拾いながら男子が言う。

 「今の、なんだ?」

 「今のって?」

 「さっきの変な空気」

 「わたしには分からないわ。ただあなたたちが勝手に感じてるだけでしょ? 単なる被害妄想よ」

 「そ、そうなのか?」

 「だから分からないわよ。何回言わせるの?」

 「わ・・・わるい」

 男子の口は閉じた。

 アカはフンッと言って顔をそらせ、カバンを持って教室を出た。

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