表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/174

第84回『チンアナゴ いないいないばあ 灰』

YouTubeで行った

ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第84回『チンアナゴ いないいないばあ 灰』

の完成テキストです。

お題はガチャで決めました。

お題には傍点を振ってあります。

所要時間は約1時間でした。

詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓

https://www.youtube.com/watch?v=o16wzayLM1U


↓使用させていただいたサイト↓

ランダム単語ガチャ

https://tango-gacha.com/


~・~・~・~・~


「それじゃあたっくんをお願いね。」

「うん、任せて。ほら、たっくん。ママにばいばいは?」

私に抱きかかえられた息子は私によって半ば強制的に手を振らされたが、手を振り返してきたママを見て笑顔になった。

妻もそれを見て笑顔になり、いそいそと出かけた。

なんでも高校時代の友人が近くに来ているので会うことになったという。

つまり今日は私一人で1歳になる息子と過ごすことになる。

息子は普段は妻にべったりなので不安がないわけではなかった。

だがいつまでもこのままでは妻の自由が奪われてしまうし、何より息子にも良くないだろう。

まだ1歳とは言え、息子の成長のためにはたまにはこんな日があってもいいだろう。


──5時間後、俺は疲れ果てていた。

ママがいなくて寂しいのか、息子はすぐに泣き出すからだ。

遊んでいたと思っていたら泣き出し、おやつを食べていたら泣き出し、散歩をしているときにも息子は泣き出した。

私はその都度あの手この手であやさねばならなかった。

今日一日で()()()()()()()()をした数は知れず、息子は明らかにいないいないばあにはすでに興味を失っていた。

何度も抱っこをしたので腕はしびれていた。

夕飯が食べられなくなってしまうので、もうおやつをあげるわけにもいかない。

私は息子との時間をもっと作らなくてはならなかったことを実感した。


時刻は夕方になり、妻もそろそろ帰ってくるだろう。

私は息子をお風呂に入れてあげることにした。

息子はさっそくお風呂に浮かべたアヒルのおもちゃで遊び始めた。

アヒルは波に揺られながらぷかぷかと浮いていた。

息子がアヒルを触って湯の中に沈めてしまうが、アヒルはすぐに浮き上がり何事もなかったかのようにまた波の上を漂った。

その様子を見た息子のきゃっきゃっと喜ぶ声がお風呂場に反響した。

私も息子のそんな様子を見て、また、お風呂に入っているということもあり、さっきまでの疲労感がほぐれていくのを感じた。

だがもちろん嵐は突如やってくる。

息子は突然泣き出した。

私はアヒルに息子をなだめてもらうことにした。

「どうしたんですかー? ママがいなくて寂しいんですかー? ボクがいるから泣かないでよー。」

アヒルのおもちゃを息子の目の前で揺らして声を高くしてしゃべったが、息子は一向に泣き止まなかった。

私はお風呂場に置いてある他のおもちゃも総動員した。

押すと背中からお湯が噴き出るクジラ、湯の中を進む潜水艦、振ると音の出るカニ……。

しかし息子は泣き止まなかった。

もうこのおもちゃは飽きてしまってのだろうか。

私は息子の喜ぶ姿の記憶をたどった。

息子は海の生きものが好きだ。

だから水族館には何度も連れて行った。

そういえば息子は最近行った水族館で大喜びをしていたときがあった。

アクリル板越しに息子が見ていた水槽の中の生きもの……。

その時私の頭の中の()色の脳細胞がフル回転した。

これだ!

「たっくん。()()()()()()()()()~。」

私は息子の目の前で湯船から何度も私の()()()()()を出したり沈めたりした。

そのたびに息子はきゃっきゃと笑ってくれた。

息子は水族館で砂の上でゆらゆらと揺れたり、砂の中に身をひそめる()()()()()に大興奮していたのだ。

私はそれをどこのご家庭にもあるものだけで再現してしまったのだ。

ばしゃ、ばしゃと出すたびに息子はきゃっきゃっと笑い転げた。

私も調子に乗って沈んだままなかなか出てこなかったり、勢いよく湯船から現れたりと、緩急をつけて息子を楽しませた。

繰り返しているうちに私もスマートに湯船から出てくるコツも覚えてきた。

大事なのは湯の中の流れを読むことだ。

波に流されて曲がってしまっては勢いをそがれてしまう。

波の流れを読み、流れに逆らわずに、腰に力を貯めて、浮き上がる!

息子はひときわ大喜びした。

頑張った甲斐もあったもんだと私は満足していたが、息子の喜び方は今までと少し違った。

そもそも息子は私を見ていなかった。

息子が見ていたのは浴室のドアだった。

私は恐る恐る息子の視線の先へと振り返ると、そこには鬼の形相をした妻がいた。


下品な遊びを教えたことに怒った妻は息子を連れて実家に帰ってしまい、今我が家には私のほかにはだれもいないいない。


~・~・~・~・~


~感想~

チンアナゴといった特定の生物のお題は難しいですね。

生態とかについてもうちょっと調べられたらもっとまともな話を作れたかもしれませんが、下ネタになってしまいました。

あと、赤ちゃんのお風呂場のおもちゃを検索していたら時間がかかってしまいました。

ただ、そこでクジラやカニと書いていたおかげで息子が海の生き物が好きという設定を思いつき、チンアナゴへの伏線にはなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ