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長月の集

E.C.

作者: みふぎゅ

当て所もなく ただ歩く

だけど足取りどこか重く


不意にコツリつま先弾く

石ころコロコロ転がる



先回りされた道の真ん中

得意気に待ち構えるソレ


つまみ上げて軽く握る

丸く滑らかな感触


なんとなく離れ難くなって

握った手ごとポケットに入れる




訳知り顔の大人の前で

手のひらを広げたなら


立派なルーペ翳し

眉をひそめた顔で

ため息混じりに返すだろうな



『特に此れといって

目立った所はないようで


色も形も大きさも普通

所謂よくあるものの1つ』




無価値な石ころなど

川にでも投げてしまいなさい


もし一度でも跳ねたなら

少しは価値見出だせるかもね



ポケットの中 感触確かめながら

想像に苦笑い


宝物握りしめて その場 駆け出した

過去の記憶と重なる




数多ある川の流れ

川底の無数の砂


絶えず揺れて

日々形を変える中に

篩を差し入れる


何度も目を凝らし

あるのかも分からない光る金の粒探す


そんな途方もないことと

ただの石ころを飾ること


そんなに違うのかな





すべすべの石 撫でながら

また行く当てもなく独り歩く


ポケットに加わった ちょっぴりの重みが

心強いから不思議



無機質な車が弾いて

歩道に乗り上げた石ころ転がる


不本意そうに道の端でうずくまる

尖った小さな石


なんとなく他人事には思えなくて

そっと拾い上げた




石橋も叩いて壊す

心配性の大人なら


分厚い手袋をして

血相を変えて

すぐ取り上げようとするだろうな



『今は此れといって

危険なところはないけれど


使い方次第では如何様にも出来る

凶器たり得るものの1つ』




無価値な石ころなど

その辺に捨ててきなさい


もし岩に当たり澄んだ音色でもすれば

価値見出だせるかもね



ポケットに増えた感触確かめて

想像に苦笑い


後ろめたいことは何もないけれど

隠した記憶と重なる




其処ら中の土に佇む

山肌に沿うような岩壁


土砂に削られ雨に磨かれて

年を重ねるごとに崩れる


それでも登り砕き

あるのかも分からない原石を掘り探す


そんな途方もないことと

ただの石を持ち歩くこと


そんなに違うのかな





キラキラの砂金も

見つけることが出来ないのなら

ただの川底の砂の1つ


掘り当てた原石も

加工しないのなら

光り輝いたりはしない




それならさ


自分で見付けた お気に入りの石

温めたっていいじゃない


割ってみたら金色かもしれないし

カットしたら輝くのかも


折角 見付けた特別な石だから

そんなこと しないけどね



可能性は ゼロだよ



なんて言う人たちには

見せてあげないから良いさ



自分の足で出会った 自分だけの意志

握りしめて また歩き出す

同音異義語が大好物

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