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第二話 始まり

『ギルド』そこは、冒険者を統べる場所。

冒険者にとっての出発点であり、帰還点でもあるその場所は同業者にとって憩いの場である。





「いったい何人集まってるんだ!?」


俺の眼前には、無法地帯化と化しているギルドの前で、冒険者と思わしき数百人もの人が発情した獣のごとく騒ぎ立てている光景が広がっていた。


「ここにいる人たち全員でダンジョンに潜るのか?」


国中の冒険者を集めただけのことはあるな...。

頭数は十分といっていいほど揃っている...本当に本気でダンジョン攻略するつもりなんだ...。

ギルド内溢れかえっている冒険者を見て、俺はただひたすらに感激していた。


中には、顔憶えのある数名の有名人の姿すらもあり、その存在が俺の心を駆り立てた。



背中まで伸びた薄花色の髪に、空色の瞳。

品のある顔つきにそぐわない、鎧と大剣を身にまとい雄々しく立っている女性。

――B級冒険者のアリス...別名『氷姫アイスクイーン』。


漆黒の長髪に、綺麗な真紅の瞳。

身軽な鎧を纏い、多くの冒険者に挨拶して回っている容姿端麗な女性。

――D級冒険者のエリアス...別名『全癒ヒーラー』。


金色の髪に、山吹色の瞳。

まったく同じ顔をしている2人の幼い子供。この国で最年少の冒険者であり、実力者でもある双子の姉妹。

――D級冒険者のエイトとナイン...別名『人形ドール』。


そして、A級冒険者のロイ...別名『勇者』。


彼らの他にも、長年冒険者をしてきたベテランが揃っている。


すごい...。

こんな実力者たちを一度に集めるなんて...。

俺は、彼らに圧倒され、憂虞された。


果たして、この場に俺がいていいのだろうか?

無条件に参加できるとはいえ、F級である俺の参加を彼らは許してくれるのだろうか?


彼らの存在に、気持ちが揺さぶられる。

誰しも、自分との実力差が歴然の相手とは一緒に居たくないだろう。

比べられ、「なんで一緒にいるんだ?」と罵られるのがオチだ。

自分からそんな状況にするなんてことは、我が身を堕とし入れる自傷行為に過ぎない...。


いや、違うな...。

こんなのただ御託を並べて、逃げようとしているだけだ。

俺はこのダンジョン攻略で自分を変えると決めたんだ...。

そのためなら、なんでも利用する...そう決めたんだ!

俺には、ダンジョンに立ち向かえるほどの力がない。

故に、他人に寄生しないと前には進めない。

だから、このチャンスを存分に利用させてもらう。


俺は、自分に言い聞かせて本当の気持ちを取り繕った。

そうでもしないとこの場から逃げ出してしまうと、そんな気がして...。



「皆様、準備は整いましたか?今回の攻略は、4つのグループで行動してもらうため、今から、グループ編成を行います。」


突然、頃合いを見計らったかのようにギルドの職員らしき女が口を開いた。


「え?」


辺りが騒めく。

そうなるのも、無理はないだろう。

誰も、グループに分かれるなんて考えてもなかった...それは、俺も同様である。

俺を含め、ここにいる冒険者の大半は、勇者やB級、D級冒険者がいるからといって参加した他力本願の者たちばかりだ。

もしも、彼らと一緒になれなかった場合、死の確立が格段と上がってしまう。


「グループ分けについては、こちらの方で決めさせていただいたので、ご自身のステータスプレートの方をご確認ください。」



【ザック・ブラスト】 評価F

≪能力値≫           ≪スキル≫

知力 F            封印Ⅰ

筋力 F            封印Ⅱ

魔力 F            封印Ⅲ

俊敏 F            封印Ⅳ

幸運 F            封印Ⅴ


≪Bグループ≫


「Bか...。」


俺は女の言われるがままに、自分のステータスを確認した。

周りでは、自分のグループを共有する者、上位の冒険者にグループを聞き、喜怒哀楽する者など様々だった。


「それでは、少し時間もありますので、同じグループ同士軽く挨拶をしてください。」


その一言に、大勢の冒険者たちは指定された場所へと別れていった。

その様子を前に、俺もどこか躊躇しながらも足を運んだ。




□□□□


「うわっ...。」


俺と、メンバーとの挨拶はその言葉から始まった。


「お前、Bグループなのか?」


目の前の男は尋ねた。


「あぁ。」


「マジかよ...。」


あからさまに舌打ちをする者、小声で罵倒する者。

パーティー内の雰囲気は最悪だった。

こうなることは分かっていた...分かってはいたが、いざ直面すると心の内が抉られたような感覚に襲われる。


「なぁ、なんでお前みたいになんもできねぇ奴が参加したんだよ?」


「そ、それは...」


一番言われたくなかった言葉を彼は、平然と言ってのけた。


「どうせ、楽にダンジョンの恩恵を手に入れるために参加したんだろ?お前一人じゃ何もできないもんなぁ?」


「....。」


図星だった。

それ故に、俺は返す言葉を見つけることができずに硬直した。


「分かっているのか?お前といると、俺たちまで危険に晒されるかもしれないんだぞ?」


嘘だ。

彼の言葉からは感情が伝わってこない。

怒りも...不安も...。

誰も、弱者の参加など気にしていない。

どうせ、ダンジョンで戦うのは上位の人たちだけだ。俺たちは、戦わない...戦わせてくれないだろう。

故に、彼らの行動は、俺という存在を拒んでいるがために行われていることなのだ。

――そう、これは俺に対するただの嫌がらせに過ぎない。


「なぁ?黙ってないで何か言い返してみろよ?」


「...。」


彼は嘲笑う。

悔しい。

悔しいが、俺には彼を言い負かすほどの理由がない...度胸もない。

そんな俺がとった行動は、沈黙だった。

この地獄みたいな時間をやり過ごすための時間稼ぎ。

今の俺にできることは、それしかない... そう惟して。


「何してるのっ!?」


突如、俺たちのいる空間に怒号が響き、周りを静寂へと追いやった。


「同じパーティーの仲間でしょ?仲良くしなきゃ!」


ある女性の声に反射的に振り向く。


「君、大丈夫だった?」


「『全癒』...?」


「やめてよそんな呼び方ぁ!エリアスでいいよ!」


俺から僅か数センチほどの距離のところで、漆黒の髪を揺らし、上目遣いで顔を覗き込んでくる『全癒』ことエリアスが無邪気な微笑を浮かべていた。


「私もBグループなの!よろしくね...えっと、名前はなんていうの?」


「...ザックだ。」


「ザックね。了解了解!よろしく、ザック。」


「あ、あぁ。よろしく...。」


俺は、いつの間にか差し出されていた彼女の手を取ると、戸惑いながらも優しく微笑んだ。

そうして、彼女は満足げに微笑むとそそくさと俺から離れ、Bグループの輪の中へと入っていった。

風のごとく現れ、風のごとく離れていく。

彼女の後姿からは、強者の余裕なのだろうか...そんな面影が感じられた。


これが、階級の差か...。

散々罵倒してきた彼らも、彼女を前には低姿勢になっている。

たった一人の少女の存在が険悪な空気をなかったかのように掻き消してしまった。


階級が少し違うだけでこうも違うのか...。

あぁ、理不尽だ...。





□□□□


「さぁ皆さん!そろそろ時間です。勇者様の班を先頭に、ABCDグループの順番に入ってください。」

女が叫ぶ。

緊張からなのか、ギルド内は緊迫した空気になった。

会話一つない空間の中で、俺の耳には心臓の鼓動音が騒音のように感じられた。

そして、静寂の中、誰もが自分の番を待つ。





「それでは皆さん。どうか、お気をつけて。」















本作品を読んでいただきありがとうございます。




どこかおかしな点、もっとこうした方がいいと思うところがあれば気軽に教えてくださると助かります。




小説初心者ですが、応援してくれると嬉しいです。

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