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今日から始める脳梗塞  作者: おっとり魚
第四部 新たなる旅立ち(手術)―その二 八月の入院記―
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第八話 リハビリ開始

 手術から二日後、リハビリが始まった。

理学療法士の卵かけ御飯、長いのでTKGさんと略すは病室を訪れ、最初からいきなり歩行器での訓練を始めましょうと言ったのでちょっと驚いた。

隣のおじさんはもっと驚いたようだ。

後に話しかけてきた時「二日目から歩行器ってすごいね」と言われて、自分でもやっぱりすごかったんだなと思ったくらい。

手術直前まで普通に歩いていたわけだし、まあ楽勝かなと思ったのはしかし大甘だった。

確かにふらつきは多少すれど地面に足をついて起き上がることはできたのだが、踏ん張って体を起こそうとすると足の付根の辺りにビキビキ痛みが走る。

それを告げるとTKGさんは「ああ、○番ね(詳しくは忘れた)。典型的だな」と言った。


なにが典型的かと言いますと。

つまり自分はいままで猫背、それも極端に体を寝かせた状態で動いていた。

そのせいで背筋がすっかり弱っていたらしい。

しかし今回手術でそれがまっすぐ起きるようになったため、使わなくなっていた筋肉が全て伸び切った状態になり、それが痛むらしい。

そりゃあこの状態になって最低でも五年は経っているわけで、その年月の分積み重なった怠けを今一身に背負っていると考えれば、どれだけダメージが深いかは言うまでもない。

しかし解決策はとにかく鍛えるしかない。

前脳梗塞で手の筋肉が衰えた時も同じように言われたが、どうもこの鍛え直すしかないというワードはリハビリの鉄板文句らしい。

もっとスマートな方法はないものか。ないんだろうな。意外と力押しだ。


というわけでひたすら鍛え直すための運動が始まったが、これは中々実らなかった。

TKGさんはとにかく今は歩いて体力を回復してと言うのだが、実際はそれも結構しんどい。

歩行器にほとんど覆いかぶさるようにして歩いたが、自分が歩いているのか歩行器に連れて行ってもらっているのかわからないくらいだ。

とりあえず初日からいきなり棟内(病室がある階のみ)歩行器許可をもらった自分は、車椅子をすっ飛ばして危なげな一歩を踏み出した。

R先生も初日からいきなり歩行器で歩いたというと驚いていたが、周囲から見るとやはり進行のスピードは驚異的らしい。

だがこの後かなり長い間歩行器から離れられずの停滞が続くことになるのだ……。


このTKGさんは興味を引くためだろうが、合間にあれこれ趣味を聞いてくる。

漫画とかゲームとか音楽とか、人に言えるほど大した趣味を持っていないかあるいは古いか敢えて言えばオタク臭い自分の趣味はあまり人に自信を持って語れるほどのものでもないのだが、結局それでは話題がなさすぎたこともあって、なろうで小説書いてますという話をしてしまった。

どんな小説? 脳梗塞で入院した時のエッセイまで一応言ったので、その気になれば見つけられるかもしれない。

実はクロちゃんがいた病院でも理学療法士の人に同じように脳梗塞後の話をエッセイにしてますと白状したのだが、あちらはさほど食いつかず話の一つとして流した感があったのだが、TKGさんはその後も割と乗ってきて、自分も昔小説書こうとしたとか、奥さんに読ませたけど全然わかってもらえなかったなどと度々話のネタになったので、ちょっとこわごわものである。

あるいは最近増えたブックマークの一つは彼なのかも知れない。

ただの社交辞令でリハビリ後はすっかり忘れていることに希望を繋ぎたいところだ。

知り合いでここのことを知っているのは唯一この二人だけである。

後はネット上でも現実でも一切教えていないので。



リアルの友人で今も連絡がある相手から、実はメールが来ていた。

それによると最近引っ越したらしい。

近くなったから気軽に会えるねと言われたのだが、実際は入院が決まっていたため、とても会える気はしなかった。

この時初めて「今度手術(入院)します」というメールを送った。

今までは話が急すぎて予告なんてできた試しがなかったので、入院だの手術しただのは全部事後報告だった。

ちょっと気分は新鮮だったが、その時は体が折れ曲がっていたので楽しむ余裕など当然あるわけはなかった。


で、その友人から入院の直前にメールが来ていたのを、このTKGさんと会ってリハビリに励んだ後に気づいた。

そこには「実はコロナにかかりました」という衝撃の内容が……。

慌てて読み直してみると、それは入院よりも前に来ていたメールで自分が見落としており、その後自宅療養していたようだとわかった。

その夜打ちにくい携帯メールから返信した自分に、しばらくしてから無事であるという返信が届いたのでほっとしたが、結局そんなわけでその友人とは退院後も会っていない。


彼には一言もここのことは告げていない。

会った時30kg減のボディを見せつけて驚かせようと思っているから。

きっと大病を患った半死人みたいな目で見られるんだろうなと思う。

実際自分でも特徴が全部削げてしまって、普通のおっさんになっているなと思うし。

さてこの野望が達成されるのはいつの日か。


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