第六話 二回目の手術
こうして問題が全て解決した自分は、やがて呼び出しを受けて手術室のある区画に連れて行かれた。
痛みがあるわけでもなくベッドへの移動自体は簡単に済んだが、以前受けた病院の手術室より、こちらのほうが人数が多く、結構威圧的な雰囲気があった。
それも麻酔が始まるまでで、実際意識が落ちた後はもうなにも覚えていないのだが。
今回は直後の「終わりましたよ」の記憶も曖昧で、その後一晩を過ごす特別治療室への移動の記憶もなく、気づいたらもう白い壁に覆われた狭い部屋に入れられていた記憶しかない。
この狭い部屋というのも実際は違って、単に仕切りが壁のように見えていただけだったのだが、自分の中ではハイテクな雰囲気の小部屋にしか見えなかった、その時は。
最初に自分が思ったのは痰がひどく絡むということと、次に思ったのはとにかく寒い! ということだった。
心の底から震えてそれを主張した自分は電気毛布をかけられたらしいが、それが温まる前からもう次の寒いからどうにかしてという懇願を看護師に告げていたようだ。
温まるまでもうちょっと待ってと制されてしまったが、その時とにかくがくがく震えていたのは覚えている。
その後壁に無数に書かれている文字をじっと眺めながら、それが判読できなくて頭を抱えた。
実際そんな文字は書かれていないのだが、自分の中ではずっとコンピュータで書かれたような文字が踊っていた。
それを無視してとにかく眠ろうとするのだが、何度眠ってもすぐまた目が覚めて大量の文字を見つめるという同じ状況に追い込まれることが続いた。
やがて吐き気が酷くなったのでそれを伝え、口元に嘔吐袋を押し当てられた。
そのために酸素マスクは鼻からのものに取り替えられた。
それでも収まらない吐き気に、看護師は吐き気止めの薬を入れたのだが、しばらくするとまた吐き気に襲われる。
しかし六時間経っていないので次の吐き気止めは使えないらしい。
これを言われた時、まだあれから六時間も経っていないのかと失望した。
この場所では時間経過の感覚がとにかく遅い。
看護師は結局痛み止めの薬を止めたのだが、これでやっと楽になった。
その後六時間が経過して吐き気止め二本目を打ってもらったが、どうやらこれは結構なレアケースだったらしい。
後にやってきたR先生に「吐き気止め二本打った」と珍しいものを見たように看護師が報告しているのが聞こえてきたのでそれと知れたのだが。
そういえば以前の手術後もずっと吐き気との戦いだったが、やはり術後の痛み止めの麻薬は自分には過ぎた薬のようだ。
今回一晩中吐き気に苦しめられなかったのはよかった。
朝になり食事の時間になったが、食べますか? という質問に自分は「食べます」と即答した。
というかこの吐き気は空腹から来ているんじゃないのかと思えるくらい、自分は飢えていた。
以前も食事を何度も飛ばされ、ずっと吐き気に苦しんでいたので、なおさらなにか食べたいという気持ちは強かった。
出た朝食は食パンと確かバナナ、牛乳だった。
他にスクランブルエッグもあったと思うが、この時ベッドアップは60度と制限があったため、手元がよく見えずスプーンや箸を使わないと食べられないものは無視した。
パンなら適当に当たりをつけて手を伸ばせばすぐ掴める。
バナナも同様。
食べられるものは無事完食した自分は、気分も上々だった。
やっぱり絶食が気分の悪さの原因の一端ではあったようだ。




