第一話 生活保護始めました~からの暗転への序章
生活保護を受けることにした。いや素直になったと言うべきか。
思えば自分の人生谷あり底抜けありで山だった記憶がないが、またさらにその一つ先を経験することになった。
というわけでそんな日々を臆面もなく語ってみたいと思う。
この話の出口は三つ、無事まともに稼いで現状を脱出するか、無理なら家売れプレッシャーに押し負けて自ら命を絶つか、絶てなきゃ家も手放してずるずるとはした金だけ手に入れてそれを食いつぶして今度こそ生活保護地獄ループに陥るかだが、既に三択のうち二つが悲劇しかない。
どうも役所としては三番目のルートを超絶オススメしているようだが、冗談じゃないのでとりあえず就職コースを模索しているが、職歴学歴特技なしの自分がここに新規参戦するのは並大抵のことではなかった……。
そんな日々をとりあえず茶化しつつ書いてみたい。
という話になるはずだったのだが、ここに来て一気に話が変化してしまったのが2021年9月の現状。
いやいずれ最初の三択に帰ってくることにはなるのだが。
脳梗塞を新たなるステージと表現したが、それすら嘘でしかなかったことになってしまった。
どういうことか、それをこれから解説したい。
とりあえず最初は今後関わりを持つことになるケースワーカーとの面会から始まった。
例の面接官に「今度ケースワーカーが家に行くからドアホン押したら出てね」と言われた自分は、その日それを待っていた。
以下は第三部終盤に既に書いていた文章だが、捨てるには惜しいのでとりあえず掲載してしまおう。
あほの子です……
結局昨日言われたことはずっと尾を引いて、帰ってきてからも延々口をついて出るのは「この家は絶対売りません」という言葉と、それで保護が適用されないということなら結構ですよ、どうぞお引取りくださいという文言ばかりだった。
そして今後を思い悲嘆に暮れながら部屋の掃除を終えて、自分は居住実態を調べにやってくるというケースワーカーの訪問を待つことにしたが、その間も二階の部屋に積まれたゲームのダンボールはどう言い訳しよう、これ古いゲームでそれもほぼ百円で買ったものだから価値なんかないですよと言い訳を考えたのだが、実際プレミアがつくようなゲームはなにもないので、もう隠そうなどという考えもなくなってそのままにしておいた。
隠せるものでもないし。
実際処分に困っているから指導があれば売る(ただで引き取ってもらう)ほうがすっきりしていいかもしれない。
置いといてもしょうがないしな。
そして約束時間数分後に鳴ったチャイムに出たら、なんと担当のケースワーカーは若い女性。
しかし気持ちを緩めている場合じゃない、彼女は辛辣な一味の手先なのだから。
(当然悪意偏見もいいところだが、赤っ恥は自分が全部受け止めるのでここはちょっとご容赦いただきたい)
大体自分は若い女の子と最悪に相性悪いことばかりじゃないかと構えた。
それを証拠にこの歳までロマンスのかけらもありゃしない。え? 自業自得? おっしゃるとおりで。
彼女は結局庭先で話を始め、家に上がる気配も見せなかった。
家の前に停めた電動アシスト付きの自転車を、通り過ぎる車に影響しないようにうちの庭に向かって引っ張る辺りからして(庭に停車しようとしなかった時点で)もう上がらないことは確定。
テーブルの上に散乱するノートPCやら血圧計、ゲームのパッドやらいつものチョコチップの袋、脳梗塞後百均で買って最初だけで最近放置のハンドグリップなど、全部降ろして拭き掃除をして掃除機をかけたのも完全に無駄だった。
そりゃ若い子なら余計そうだろうなあなどとちょっと不謹慎なことを考えながら、彼女の質問に答えていく。
そして案の定やはり家の資産価値の話は出てきて自分は構えたのだが、どうも彼女が言うにはまだわからないものの処分は難しいし実際に住んでいるということで多分……という方向に話が下方修正されていた。
人によって全然受け止め方が違う物言いだなあと自分は半分呆れつつ、この調子ならうまくいくんじゃね? とまた軽く考えてしまった。
もう一個ありがたいのは就労を支援している、ようするに働けープレッシャーだった。
これは怪我や後遺症が重ければ(あるいは最初から働きたくなければ)当然嫌かも知れないが、自分はその気だけは十分あるので当然それは受けて立ちたいと思っていた。
その旨を伝えると彼女は「これは話楽だわ」という顔をしていたが、立場上多分ここでごねられることが多いんだろうなと思う。
とはいえ当然条件はそういいとも言えない自分が就労するのは、簡単なことでもあるまい。
距離、時間、日数、そしてスキルとほぼ問題外の要素が揃っている。
とはいえ気だけはちゃんとある分ぽんぽん話は進み、彼女は二十分もしないで帰っていった。
電動アシスト楽なのかなあ、でも生活保護じゃ買えないだろうななどと考えながら家に引っ込んだ自分は、早速これを書いてごめんなさいする準備を始めた。
先走って思いつめてお世話になる人を敵視して、また赤っ恥だよ!
まあまだ結果はわからないけど。
ほんと谷あり崖あり落とし穴ありの人生だよ……。
とこんな感じで割と軽く始まった生活保護生活は、その後就労支援員という人と面会してお話ししましょう、ハローワークに行って担当の人と会いましょうと進んだ。
就労支援員の人は現状の自分がいかに不利かを知らず説き、自分の求職活動がいかに間違っているかを意図せず説明してくれた。
既に身にしみて社会と自分の行動のズレを認識していた自分は、大きく頷いて就労支援員の話を聞いたが、あちらも「よくわかっていらっしゃるようで」=自分が無駄足を繰り返してはいるがちゃんと求職活動だけはしてはいると思ってもらえたようだ。
ちょっと余談だがちょうどこの頃一件自分の考えを変えた会社がある。
その会社は自分の職歴なし履歴書にもめげずに話を進めてくれたのだが、次の段階でZoomによるリモート会議を提案してくれた。
予定まで早々に決められてこの日はどうですか? とかなり早いタイミングを示唆する会社に自分は逆に困惑。
自分が持っている親のお古スマホだと、androidのバージョンが古すぎてZoomが入らない。
PCにもカメラなどついていないこれまたお古だった自分は、一日無駄な努力を費やした挙げ句、環境がないですすみませんと正直に申告した。
当然返ってきた返答は「ご縁がなかったようで」だった。
それを就労支援員に話すと、Zoomのことも知っていてすんなり話は通じた。
そんなわけでスマホを購入することを真面目に考えた自分はそのことも相談したのだが、保護費の中からお金を割く分には問題ないと言ってくれた。
その後ケースワーカーにも事後承諾でスマホ買いましたというと、むしろ連絡が取りやすくなったと喜んでいたようだ。
この時四月でちょうど新プランがあちこちで開始されていたのは大きかった。
こればかりは時の総理に感謝と言うべきか? 単に幸運だっただけで結局借りたのは同じだったという気もするが。
実際世間の人間ほど携帯の依存度が高くない自分は、常に手元に置くということが出来ず、普段その辺にほったらかしで着信の音も小さいし、腰の関係で素早い動きもできないため、電話に出られず放置頻度が異様に高い。
ま、なにはともれ一つ文明の利器を手に入れた自分は、元々のネットワーク環境やPC操作の知識とスキルを生かして、簡単に概要は掴んだが、今でもそう有効に活用しているとも言えない。
契約は最低容量なので本気になれば数日であっというまに使い切るし、電話すればカネがかかると九月になるまでまだまともに通話したのは二度だけだったりする。
友人に知らせることもないし(知らせる友人もないし)、実質ケースワーカー専用電話になっていた。
それも向こうからの着信記録と留守番電話を聞く程度だったりする
仕事に話を戻すと、子供の頃は事務員というと男も女もいたのだが、今は女性のみらしいというのは自分が最近思い知ったことだった。
しかし雇用機会均等だかなんだかのおかげで、例え男が応募しようと「女性のみです」とは絶対断らないらしい。
ていよく面接におびき出すまではするものの、結局不採用で終わりなようだ。
そして短時間のバイトはみんな派遣に奪われ、しかもそれも十分収入がある人の副業としてしか認めてもらえない。
具体的には年に五百万以上副収入がある人だけしか雇ってもらえない。
なんとも働きにくい世の中になったものだ。
力仕事がまるで駄目な自分ではもう手がほとんどありゃしない。
辛うじてあるPCスキルすら活かしようがないことになってしまった。
そして就労支援員はハローワークによる支援と、もうひとつ例の○ソ○による就職活動の二つが選べますと自分の前に提示した。
どちらかというとパ○○のほうが有利かな……という支援員に、自分は世の中の変化への恨みもこめて「ハローワークでお願いします」と言っていた。
さすがにいまさら○中の奴隷にはなりたくないねえ。
どちらにしても仕事は「清掃」くらいしかないそうだ。
その後ハローワークの担当の人と面談し、色々話し合って活動を開始したのだが、立ちっぱなしの警備員の仕事なども紹介されつつ、四月から五月、一ヶ月ちょっとほど活動を続けた自分は、やっぱりフラレ続きで、基本給を徹底的に下げて高望みをしない中で毎回応募しては断られを続けた。
そんな中でやっと一件引っかかった会社に就職が決まりはしたのだが、これが破滅と新生活への序章に過ぎなかったなんて、その時は思いもよらなかった。
第四部は生活保護編でも脳梗塞再発編でもない。
むしろとっくに終わったと思っていたあの悪夢が再来して乗っ取り直すとは……。




