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今日から始める脳梗塞  作者: おっとり魚
第三部 退院、それから
33/61

最終話 自分だって怒る時は怒る、完結記念にこれは酷かった話を一つ

 そのスタートはまだ母親が生きていた頃、三年ほど前に遡る。

以前も一度触れたが、我が家のガスコンロのバーナーキャップは既に裂けていて、そこから火が広がってしまうため弱火にしておかないとフライパンや鍋の取っ手を焼いてしまうという大問題があった。

このせいで使えなくなった鍋やコンロはもう結構な数になっている。

そのため交換品を求めてメーカーのサービスセンターに電話。

「○○という商品のバーナーキャップが欲しいんですが」

「はい、ご確認いたしますが左右どちらのバーナーキャップでしょうか」

「左側についている外せるバーナーキャップです」

「……確認したところ左側はセンサーコンロでサービスマンが着脱しないといけなくなっておりまして、個別の交換には応じておりません」

「はい? うちは普通に外せるしセンサーがついているのは右側なんですが」

「ですがカタログでは左側がセンサーで右が通常のコンロとなっております」

「そんなわけないでしょう、うちでは右がセンサーついてるほうです。こっちはフライヤーとかついてるほうですよね。確かにこっちはすぐ外せない」

この問答はひたすら続いて、相手は頑として出張修理を要望する。

当然人を呼べば手間もかかるし出張費用を取られる。

その人は五千円と言ったが冗談ではなかった。

憤然としながら自分は交換品はまだあるの? と聞くとこの人は「現行商品でも使われているキャップだからあります」と言った。

なら二千円程度の品くらいさっさと売ってくれという話だが、後でやっぱり違ったと言われるのが嫌なのか結局話はいつまで経っても平行線だった。

重ねるが電話を切ったのはまだ母親が生きていて、自分も二度目の骨折をする前の話だった。

まだこの頃は機動力があったのだが、母親が不安になるため長時間留守に出来なかったため、これ以上の対応はできなかった。

その後自分は二度目の骨折から激しい痛みで一年以上寝込み、そして脳梗塞になったため、当然バーナーキャップはそのままだった。

ずっとそんな余裕もなかったのだ。


最近さすがにもうきついと思って、もう一度電話した。

ここでも似たようなやり取りとともに確認させて欲しいという人を疑ってかかる態度だったので腹立たしかったが、問題はそこではなかったと後にわかる。

「じゃあもう現物持ってそっちにいきますんで確認してください」

「よろしくお願いします、その場合も取り寄せとなるため二週間程度はいただきます」

「まあそれはしょうがない」

三年待ったのだから今更二週間くらいどうってことはない。

これが一月だか二月の話だった。

そして三月、生活保護の件で市役所を毎週行き来するようになった自分は、やっと重い腰を上げてそのお店にバーナーキャップを求めに行った。

そして悲劇は起こった。


まず先客を避けて別室に通された自分は、時計と目覚ましと写真画像持ち出しにしか使っていない古いスマホを示して、毎回ここで詰まるという前置きをちゃんと置いた上でこの写真のバーナーキャップが欲しいと言った。

だがこの店員は自分の主張通り左が普通のコンロだということをすんなり認めた。

今までの電話番とはえらい違いだ。

あいつら左と右の区別がついていないのか、でなきゃ鏡の世界の住人か、あるいはコントローラーの都合で右利き用に画面が反転でもしているのだろうか。

「お時間は大丈夫ですか?」と聞きつつ一旦奥に引っ込んだ店員は数分後帰ってくる。

しかし最初から口調は厳しい。

「結論から先に申し上げます。こちら既に製造終了になっておりもう交換品が入ってきません」

「そうですかー」

「もう十四、五年は経っている商品ですから」


以前と話が違うのである。現行品にも使われているんとちゃうんかい!

確かにあると言ったあの時の電話番さえいなければ!!

最近電話した時に在庫があるかどうか確認さえしてくれていたら!

せめてわざわざ店に行くことはなかったのに。

二重三重に馬鹿にされた気分で、こんな悔しい話はなかった。

結論は出たからさっさと帰んなと言いたげな店員の態度も、今考えると嫌味の一つも言えばよかった気がする。

結局がっかりのほうが遥かに上回っていた自分はすごすごと店を出たが、まあ先にガス会社を電力会社のプランに切り替えておいてよかった、二度とここでガスもコンロも買うもんかと心に誓い直して帰路についた。


こうしてまた不買メーカーリストに一つ名が連ねられる。

この数年だけであっちにこっちに今年だけでもお菓子会社にガス会社、まあ長大で広範囲なリストになっていくものだ。

それは社会的影響など全く皆無な、貧乏人一人の悲しくも無意味な抵抗に過ぎなかった。

もういやこんな生き様。

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