笑いの中で終わりたかったが
この話は最終話のつもりで用意していましたが、どうも繋がりそうにないので先に載せておきます。
その後もあがいてはみたのだが、万策尽きてもう完全に駄目だと諦めがついたため、大人しく生活保護を受けることにした。
とは言え今でも嫌だという気持ちはずっとくすぶっていてそれが頭をもたげるのだが、かといってどうしようもない。
具体的に何が嫌って、ようするにここで生活保護を受ければもう真面目に働く気力は二度と蘇ってこないだろうということだ。
その度に言い訳を考えながら「世間が自分を認めて仕事をくれないんだからしょうがない」と言い出す自分はやはり想像したくない。
それでなくても働かなくても暮らせる甘みを知ってしまったら、もう働こうという気力も沸かないし、当然その分また社会経験の実績を積む時間も失われる。
もう既に手遅れとはいえなおさら社会参加が遠のくというのは、自分にはひたすら重いのだ。
同じ境遇にある人を馬鹿にしたいわけではないし、苦しんでいる人が生活保護を受け辛くなるのも嫌だが、自分にも一応プライドというものはある。
いやあるからこそ悩むのかもしれない。
とはいえ世間の四十代職歴なしの評価はもう痛いほどわかったので、なにをどうできるというわけもない。
せいぜい自分だけの場所でこんな風に必死の自己肯定アピールが精々だった。
しょうがないので現実的にプランを進めながら、とりあえず最後のシャバの空気を味わうためいつもの内科に行ってきた。
そして受付でこれがおそらくは最後の医療保険証と診察券を差し出しつつ質問。
「お尋ねしますが……こちらって生活保護医療指定機関じゃないですよね?」
当然これも事前に質問を練習済みだったのだが、先の回答も予測してあった。
「いえ、違います」
「ああやっぱりそうですよね~」
「生活保護受けられているんですか?」
「いえ、まだ申請には行っていないので。ただ今回お世話になるのが最後かなと思います」
そして診察室。
「親子二代でお世話になりました。先生には母の病気を見つけていただき、その時母親に紹介した血圧計が回り回って自分の役に立つことになりまして……」
と感動のフィナーレまで予め想定していた自分は、しかし早速ずっこけることになった。
「いえ、大丈夫ですよ」
あれ。
結局用意していた答えは書きかけでそのまま放置した文章並に無駄なもの扱いで破棄されてしまい、早速またアドリブ合戦が始まることとなった。
一応そっちの会話も考えてはいたのだが、十中八九あるまいと思っていたので、本当に肩透かしだった。
逆にもう生活保護を受けている前提で話が始まりそうになったので
「いえ、まだ申請にも行っていないので(ここまで予定通り→以後その場で考えて発言)。当面は医療保険で大丈夫です」
と若干しどろもどろになりながら、今後ともよろしくお願いしますと挨拶だけした。
その後保険証を返してもらってそれを財布にしまったのだが、うっかりお金を持ってくるのを忘れて慌てて取りに帰ったのも含めて、ただ恥をかいただけだった。
しかしこれでハードルはさらにぐんと下がってしまった。
なんだ、病院変えることはないんだな。
これで重荷が一つ減って気分は少し晴れた。
あとは半年後予定の眼科と歯医者のクリーニングだが、これはケースワーカーに直接尋ねてみよう。
それと叔母さんへの対応。
それだけクリアすれば当面の危機は回避できる。
そう思っていた。
だけど結果は随分変わりそうだ。
それは自分があまりにもシビアな現実を舐めていたために起こった。
生活保護というのは、そんな生易しいものではなかったのだ。
そして自分は一度寝かせたものを揺り起こすことになった。




