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空振り

野球の話ではなく、予定通りに上手く行かなかったという話。


「昼間は、母親が入院している病院にいるのですが、午後は家に戻ってもいいですよ」

「それでしたら、2時にお伺いします」

と言う約束を交わしたのは二週間ほど前。

相手は、お不動さんのお寺のご住職。年に何回か、家のお祓いをしてもらうのだけど、毎年、二月三日の節分の前後に神棚に祀っている御札を新しいものに取り替えてもらっている。

去年までは母親がやっていたが、今年からは私が対応するしかない。


そして約束の日、病院から戻る途中で、お茶菓子が要るなと思いたった。いつもの和菓子でもいいんだけど、今日は洋菓子にしよう。

来てくれる和尚様はまだ若い方で、プライベートではバンド活動などされているらしい。

最中よりも、チョコ菓子が似合うタイプだ。

立ち寄ったケーキ屋さんで、地元ではほとんど見かけない「カヌレ」を買った。ただし、買えるのは土曜日だけとのこと。希少だ。

お土産用に2個、自分用に2個、別けて袋に入れてもらって帰宅した。


ところが、2時になっても、お見えにならない。

お寺に電話したが、誰も出ない。

3時まで待ってみたが、来られないので、たぶん忘れられているのだろう。


病院に戻る途中で本屋に寄った。

楽しみにしているコミックスの新刊が、昨日発売日だった。ワクワクして探すが、無い。

地方はだいたい、2、3日遅れるのだ。


病院に着いてから念のためお寺に電話してみると、今度はつながった。

「今日でしたか。すみません」と平謝りされ、「夜伺うのは、難しいですか?」

「8時くらいになりますが、それでもよければお願いします」と言うことになった。


それと平行して、地元に住む幼なじみから、メールが来た。

近況報告と「甘いものが食べたい」と書いてあったので、和尚様に買ったカヌレを、彼女にあげてもいいな、と思った。

メールで「明日から三日ほど仕事が休みなので、何か食べに行く?」と送信して、返事を待つ。


夕方、帰宅して、和尚様の来訪を待っている間に、幼なじみから返事がきた。

「こめん、今回はやめとく」

そういう奴だ。

このところ、5回に4回は断られる。

いい加減慣れないと、と思うが、断られるとやっぱり傷つく。


その直後に、和尚様が来られたので、新しい御札を受け取り、古い御札をお預けして

「これ、カヌレっていうお菓子なんですけど、こちらでは出しているお店があまりなくて。よかったら食べてください。オープントースターで少し温めると、美味しいですよ」

とまくしたてるようにしゃべってしまった。

和尚様は嬉しそうに受け取って、帰られた。


自分用に買ったカヌレは、温めるのが面倒くさくて、そのままバクバク食べた。

美味しかった。



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