公園で三線を弾くと
休日は、海の近くの公園で、沖縄三線の練習をしている。
私のお気に入りの場所は、元ゲートボール場の脇の東屋風の休憩所で、屋根がついていて3人掛けのベンチがコの字になっている。公園の外れの奥まった所なのであまり人は来ないが、たまに通りがかった人に話しかけられることがある。
ひとりの年配の女性が休憩所に入ってきて、「お友達と待ち合わせしてるの。いいのいいの、練習して」と、ニコニコしながら話しかけてきた。
まだまだ下手で恥ずかしいんですけど、と言い訳しながら『安波節』をゆっくり弾いてみた。
しばらくするとお友達が現れて、「ほらほら、じゃみせん」「へえ」とひとしきり盛り上がり、それから二人の間で用事を済ませると、「いい音ね。気持ちがスッとした」と言って小さなお菓子をくれた。
別の日には、七歳くらいの女の子が「前に沖縄に住んでたんだよ」と言って近づいてきた。その子は、お母さんと弟くんの三人で公園に遊びに来ていたらしい。お母さんは「最近、引っ越してきたんです。沖縄に居た時は、いつも聞いていました」と懐かしそうに話していた。
子どもたちに「触ってみる?」と三線を見せると、蛇の皮のザラザラした所を指先でそっと触って、不思議そうな顔をしていた。
珍しく人が居なかった日に、休憩所の前に大きな動物が現れたことがあった。
最初は、野生のイノシシか?と思った。近くの山から下りてきたんだろうか。ゆうに2百キロは超えていそうな巨体だった。イノシシではなく、豚かな? 優しそうな顔だった。
小走りに公園を横切って行くのを見送っていると、近くに居た公園の整備員のおじさんたちが一瞬立ち止まり、ワラワラと追いかけて行った。
走って行った方向には交通量の多い交差点がある。車にぶつからないといいけど。その後、その動物の姿は見えなくなった。どこに行っちゃったんだろう。
先日は、歌う猫に会った。
私はいつものように三線を弾きながら、その日は辺りに人が居なかったので歌う練習もしていた。さて帰ろうとケースを背負い公園を出たら、前の方から猫の声が聞こえた。公園の向かいの資材置き場の木材の上で、私の方をじっと見ながら、猫が鳴いている。
「ニャウ、ニャウ、ニャウ、ニャウ、ニャウ、ニャウ」ずっと鳴いている。
リズムがいい。
猫は私に向かって「私も歌えるのよ。ほら、ほら、聞いて」と言っているようだった。
うーん、素敵だ。
次はセッション、しようね。