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【短編】

研究所にて



ーとある研究所ー






所長

「世界一になる為に重要なこと……これ、何か分かるかね?」





研究員A

「分かりません」





所長

「何故分からないんだい?……君、最終学歴はどこかね?」





研究員A

「ハーバードです」





所長

「え、ハーバードって、あのハーバード?」





研究員A

「はい。あの、ハーバードです」





所長

「ふ、ふーん。そ、そうなんだ。まあでも学歴なんて仕事にはあんまり関係ないからね」





研究員A

「私もそう思います」





所長

「ま、まあ、いいや。とにかく考えてみようよ。世界一になる為に重要なことってなんなのかをさ」





研究員A

「うーん……そもそも世界一になる必要ってあるんですか?」





所長

「え、なになに。君もしかして、一位なんかならなくてもいい派?二位じゃダメなんですか?とか言う派?」





研究員A

「いや、そうじゃないんですけど……でも、なんか世界一って言われても何なんだろうっていうか?」





所長

「いや、世界一は世界一だよ。紛れもなくそうだよ」






研究員A

「いや、えーっと……じゃあ、我々の何が、世界一になればいいってことですか?」





所長

「え、君そんなことも分からないのかい?いやぁハーバードも大したことないなぁ」





研究員A

「すいません」





所長

「いいかい。今から説明するからよく聞きなさいよ。」





研究員A

「はい」





所長

「えーっと――研究力だよ」





研究員A

「け、研究力?」





所長

「ピンとこないの?」





研究員A

「は、はぁ。いや、研究力ってぼんやりとは分かる気はしますけど……具体的にどんな?」





所長

「はぁ……これは、あれだね。次の新卒採用は学歴とか関係なくした方がいいね。ハーバードでこれじゃ、話になんないよ」





研究員A

「す、すいません……えー、その研究力っていうのは?」





所長

「はい、じゃあ説明します。例えばさ今うちの研究力がなんぼか知ってる?」





研究員A

「えっ、いやぁ……ちょっと聞いたことなくて……えーどうなんだろ」





所長

「はい、時間切れです。答えは”8万”ね」





研究員A

「えっ、は、はちまん?」





所長

「はい、八万です。これ公式ホームページにも書いてあるから。君そんなのも知らなくてこの研究所に入ったんだね」





研究員A

「い、いやぁ。それ見たことないですけど……あれぇ、ホントですか?」





所長

「はい、絶対書いてる。もう多分うちの研究所にいる人これ、全員知ってるよ。だって、書いてるんだもん。ホームページに――あ、君。スマホで何しようとしてるの?」





研究員A

「いや、ホームページ見てみようと思って」





所長

「えっ、今私話してるじゃん。――所長が話してるときに部下である君が、スマホを触る。これはどうだろう?おかしくないかい?」





研究員A

「いや、でも。多分書いてないと思うんですよねぇ。僕結構見てますから」





所長

「えっ……なんで見てるの?自分の勤めてる研究所のホームページって普通見なくない?」





研究員A

「いや、だって……うちの研究所全然そういうメールとか送ってくれないし……この前の健康診断もホームページ見て知りましたもん」





所長

「あっ……えっ、送ってないっけ?送ったと思うけどなぁ」





研究員A

「いや、送ってませんよ。というか思うんですけど、事務の人雇いません?」





所長

「え、なんで?」





研究員A

「いや、所長もお仕事で忙しいじゃないですか?だから、ほら僕らに大事なメールとか送り忘れたりするんですよ。この前も納期3日前で、僕らに仕事渡してきたし」





所長

「いや、違うよ。あれは単純に向こうが三日でやってくれって言ってきたやつだから。僕が忘れてたとかじゃないよ」





研究員A

「ほんとですか?」





所長

「ほんとだよ。絶対ほんと。神に誓う」





研究員A

「……僕、相手方に研究データ渡しに行ったとき、”半年前から頼んでたやつね”って嫌味っぽく言われましたけど……」





所長

「……で、そんなことより、分かった?世界一になるために重要なこと?」





研究員A

「……ちっ」





所長

「あれ?いま舌打ちした?ねぇ、君。舌打ちした?」





研究員A

「してないです」





所長

「してないか……ま、まあいいけどさ。言ってみて。世界一のプランを」





研究員A

「あぁ……えーあれじゃないですか?”もっと頑張って研究しよー”……みたいな」





所長

「…………」





研究員A

「…………あっ、いやすんません。冗談が過ぎ……」





所長

「そう!そういうことだね!」





研究員A

「えぇっ……」









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