ちょっとだけオチのある短編集(ここを押したら短編集一覧に飛びます)
カッコウが悪い店
普通の人とは違うということをアピールしたかった店長は、無駄にイラストが付いた洋服など、格好が悪い洋服を売りとする、奇をてらったある意味ファッショナブルな洋服屋を開店した。
だが、あまりにも奇抜だったせいか、これっぽっちも客がこない。客足が伸びない。
「今日もお客さん来ないねえ」
「そうですねえ」
店長に合わせて私もぼそりと口にする。
しかし、客がこないのもそのはず。なぜならここは、人里離れた山奥にひっそりと建てられた、隠れ家的洋服屋だったからだ。そんなところにわざわざ誰が洋服を買いにくるだろうか。
そう、奇抜な店長は、あまりにも普通の人と感覚が違っていたのだ。
こうして今日も閑古鳥が鳴く。店の外でも、中でも。
「俺の店って格好が悪いのかな……」
すっかりと自身をなくした店長が、冗談と自虐を交えてつぶやく。
「森から聞こえるカッコウの鳴き声が、客を呼び込むために流しているウチのオシャレな音楽を邪魔してるんですよ。だから誰も来ないんだと思います」
店長をフォローするべく、私も咄嗟に冗談を交えて答えた。
「そうか、カッコウが悪かったんだな」
そして私の言葉を聞いた店長はうんうんと頷き、納得した顔になった。
しかしそれから数日後、私のフォローもむなしく洋服屋は閉店した。
そんな私が勤めていた洋服屋の名は『格好が悪いけどちょいとイケてる洋服屋』だ。ちょいとどころかとにかくすべてにおいてイケてない、カッコウが悪い店だった。