第1章 騎士と名誉と王家の血
ーーマグノリア王国から西に大陸を横断し、更に北西へ海を渡ったブリタニア七王国は、未だ国土が統一されておらず、七つの王国が領土を奪い合い、絶えず戦争に明け暮れている。
かつてブリタニア最北部の『鉄の森』に領土を構え、隣国ノーサンブリア王国に滅ぼされた『バーシニア王国』の王家は、遥か昔に幻獣フェンリルが人間と間に子を作り、血を分け与えた正統な家柄であった。
ノーサンブリア王国との戦争に敗れ、僅かに生き残ったバーシニア王家の者達は、ブリタニア北部から南部へ縦断し、命からがら海を渡り、移民達で新たな国『ブルターニュ』を建国した。
◇
「わ、私を君の仲間にしてくれないか!」
突然「仲間にしてくれ」と言った騎士風の男は、薄い蒼銀の髪を肩まで伸ばし、瞳は深い海の様に青く、肌は寒冷地出身を思わせる白い肌であった。
(何かの物語から出て来た王子様みたいな人だなぁ。耳の辺りが少し人狼族の人っぽいけど、どうなんだろ、とにかく『麗しい』って言葉が似合う人だ)
先程ラウラ嬢が『騎士風』と表現した理由は、彼の装備に特徴があったからだ。
(質の良い軽装備の甲冑に大小二本の剣か。確かに普通の騎士って感じじゃない。特に剣が異様だ。双剣にしても大き過ぎないか?)
「あなた銀狼族の人なの?」
リュカが呆気に取られてマーニを見ていると、見兼ねたクロエが口を割ってくれた。
「如何にも。私はブルターニュ王国のブレイス・イゼルにある小さな街で、君達の噂を聞いて出て来たんだ。私の名前はマーニ・バーシニアだ。マーニと呼んで欲しい」
「あ、僕はリュカ・シュヴァルツヴァイト。よろしく、マーニ。僕はリュカで良いよ」
「それで」と、リュカは続けてクロエを紹介する。
「こっちが妹の、クロエ・シュヴァルツヴァイトです。もしかして、バーシニア王国の王族の人ですか?」
クロエは少しお辞儀をして話を聞いている。
「ああ、私の祖先はブリタニアを追われブルターニュ王国を築いたが、今となっては王族でも何でもないから、気にしないで欲しい」
「なるほど、あの、失礼ですが何故僕達なんですか?」
「少し長くなるんだが」と、マーニは前置きしてブルターニュ王国の事、生まれ育った街、ダンジョンへ行く事になった経緯を話した。
「私達、銀狼族の歴史は奪われる事の連続だった。森を奪われ、住む場所を奪われ、ブリタニアを追われて、祖先が命からがら建国したブルターニュ王国も、現在ブルボン聖王国に脅かされている」
「確かに、ブルボン聖王国は戦争が絶えませんもんね。最近、ストラスブールの近郊でも戦争があったって聞きましたし」
「そうなんだ。でも、奪われた事自体は私達が弱かったからだ。祖国がもっと強ければ、森も国も守れていたはずだ。ーー私は強くなって大切な者達を守りたい。そう思って私はダンジョンに出向く事にしたんだ」
「大切な人を守りたい。だから強くなりたいって言う気持ちは凄く分かりますよ」
リュカは神妙な面持ちでマーニの話を聞きながら首肯し話の続きを促す。
「私が通っていたブルターニュにあるD級ダンジョンは、地下二十階層までしか無かったんだが、深く潜るにつれて『私は強くなっている』と、それなりに自信が付いて来ていたんだ」
「分かりますよ。上手く行ってる時って妙に自信が付いたりして、危険に気付け無かったりしますし」
「ところがある日、街に帰った時に君の噂を聞いたんだ。同じ歳の子供が『迷いの森大迷宮』をソロで踏破したなんて……信じられ無かったよ」
「え、僕ですか?ーーでも、あれは数ヶ月も掛けて潜ってたしさ、最後の階層主のデュラハンなんて、何回もアタックしてやっと倒せた位だから。それに僕はあの迷宮の、最年少レコードホルダーじゃ無かったと思うよ?」
「それでも。私は嫉妬したんだ。君が天才なんだと思った。『住む世界が違うんだ』と自分に言い聞かせたんだ」
「考え過ぎだよ。僕はただ冒険者になりたくて、憧れて、諦めずにやってただけだから。それに、上には上が沢山居るし、凄い事なんかしてない」
「そうじゃない。聞いて欲しい」と、マーニは少し落ち着いた様子で続きを語り始める。
「私は『才能の違い』を理由に嫉妬していたが、君が魔力を持たない冒険者だと聞いた時に、その考えは改めたんだーー」
ここまで話すと、マーニは少し気恥ずかしそうな素振りを見せながら話を続けるが、やや興奮気味で声も大きくなっている。
「ーーそして僕の嫉妬は憧れに変わった。この世界で強くなるには、より強力なモンスターを倒す必要がある。君と一緒に戦えれば、私はどれだけ強くなれるのか。男の僕が君の強さに憧れるのはおかしい事だろうか?」
「いやいや、絶対買い被り過ぎだよ。あの時の僕は本当に、ただ『強い冒険者への憧れ』だけで戦ってただけなんだ。あんまり期待されても困るよ」
「ならば、ならば今の私と同じじゃないか。私は君と言う『強い冒険者』に憧れた。これは決して買い被りなんかじゃないはずだ!」
リュカはマーニの真っ直ぐな情熱に気圧されてしまい、さっきから妙に頷いて同意を示しているクロエに目線で助け船を求めるが、
「そうね。あなたの気持ちは私にも分かる」
(え、そっちの味方?)
「そうか、分かって頂けたか!」
「リュカは絶対に諦めないし、折れないし、目標を誤魔化したりしない人だから。だから彼は強い」
(だから、言い過ぎだって)
「なるほど。やはりクロエ君もリュカ君に憧れたりしたのか?」
「もちろん、今でも憧れ続けているわ」
リュカは少し照れながらも可愛らしいクロエを見て頭を撫でてやると、彼女も嬉しそうに身を捩りながら顔を桃色に染めている。
「て、何だよこの空気。そう言う流れじゃ無かっただろ。うん、絶対マーニの所為だよ」
居心地の悪い空気にリュカが「ん〜」と、唸っていると思わぬ形で空気が変わった。
「助けてくれ!」
冒険者ギルドの入り口の扉を荒々しく開けて、壮年の鬼気迫る雰囲気の男性が勢いよく入ってきた。
どれだけ走って来たのだろうか、顔も服も汗でびしょ濡れで、大きく肩で息をしている。
只事ではない空気で瞬く間に緊張が高まる。
「とにかく落ち着いて下さい!」
ギルドの受付嬢の女の子が、一旦落ち着かせようと声を掛けるが、切羽詰まる男は冒険者ギルドの酒場内に居る、約二十名程の冒険者達を凝視している。
「一体何があったんですか?」
「落ち着いてられるか!ーー村がゴブリンの群れに襲われそうなんだ。どうか村を助けてくれ!」
あまりの焦り様を見兼ねたラウラ嬢が、落ち着いて男性の対応を始めた。
「私がお伺いします。私はギルドのラウラと申します。まず、お名前と村をお教え頂けますか?」
「俺はレーヌ村の村長ヨーゼフだ!」
「レーヌ村のヨーゼフさんですか。まずは落ち着いて下さい。まずは状況を確認します」
ラウラ嬢の声は落ち着いていて、句調もゆっくりと丁寧だ。流石に対応慣れしている。
(ラウラさん凄いなぁ。全く物怖じしてない)
「ゴブリンの群れの数は何体程の規模と、村からゴブリンの群れまでの距離はを教えて下さい。それから、冒険者に討伐を依頼するならば、依頼料が必要です。本日、依頼料はお持ちですか?」
ヨーゼフは少し取り戻し、両腕を小刻みに震わせながらラウラ嬢の問いに答えるが、声のトーンが焦りを示していた。
「落ち着いている場合じゃないんだ。群れは約三百五十体、群れの中に三M級のキングゴブリンも確認している!ーー」
「キングゴブリン!」ラウラ嬢が少し悲鳴めいた声を出した瞬間にギルド内の空気は更に緊張が高まる。
(キングゴブリンと言えば災害級だろ。街を破壊し尽くす程の群れになる危険な魔物じゃないか)
「ーーああ、村からは約四十KMいや、もう三十KM位だろう。村で集めて来た金は金貨七十枚位しか無いが……あるだけ持って来たんだ!」
酒場に居た冒険者達は黙って立ち上がり、 様子を見たヨーゼフは焦って冒険者達に詰め寄った。
そして、筋骨隆々でいかにも腕っ節の立ちそうな、一人の冒険者の腕を掴み訴える。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、村を見捨てるのか。助けてくれないのか!」
「放せよ、おっさん!」
冒険者の男はヨーゼフを怒鳴ると胸ぐらを掴みそのまま突き飛ばした。
「あのなぁ、俺達は命張って、冒険者業で飯食ってるんだ。分かってんのか。その話が本当なら要塞1つが1晩で落ちる規模だぞ。だった金貨七十枚位でやってられるか!」
「君達、ちょっと待ちたまえよ!」
「何だてめぇは?」
突然マーニが立ち上がりヨーゼフを突き飛ばした冒険者に食って掛かり、それを見たリュカとクロエは少し呆れて席を立つ準備を始めた。
「村を見捨てて、それで冒険者を名乗って恥ずかしくないのか。全員でやれば何とかなるかも知れないだろ!」
「うっせーんだよ。何とかなるかも知れない?ーーそれで死ぬ奴はどーなるんだよ。誰か死んだ奴の責任でも取れんのか?」
「そ、それは。だからと言って、私達が見捨てて良い理由にはならないだろ?」
「ったく、ガキかよ。良い格好したいだけなら、お前が一人で行って助ければいいだろ!」
正論に言い返せないマーニは、拳を握りしめ冒険者を睨んでいたが、冒険者は「糞が!」と、悪態を吐いて出て行く。
「残念ですが、今は彼等を止められません。彼が言った事は事実です。ですが……」
ラウラ嬢が悔しげに唇を噛み、マーニは怒りでテーブルを叩き、ヨーゼフは力無くその場にへたり込んで泣きそうな顔をしている。
そして準備が出来たリュカとクロエも立ち上がり歩き出した。
「そんな、君達までっ!」
「何言ってんだよ。村を助けるんだろ。ここは僕の領地なんだ。助けない訳無いだろ。仲間になるなら早く用意してくれ」
「さっさと片付けた方が楽だから」
「お、お待ち下さい、リュカさん。たった三人でなんて……」
ラウラ嬢が『無理だ』と言いかけるが、リュカは優し気な笑みを浮かべて首を振りラウラ嬢を制した。
「ご心配ありがとうございます。でも、ゴブリン位大した事無いですから。マーニ、時間が無いから移動しながら作戦を立てるよ」
「あ、ああ。すぐに用意する!」
ややあって、最低限の情報を仕入れたリュカ達三人組は馬に跨り、レーヌ村方面へ駆け出していた。
村長のヨーゼフは余りにも疲労困憊であった為、リュカがギルドに残り休む様に指示し置いて来た。
グランツァーレ市街地からレーヌ村までは、馬を駆けさせて半刻程で着く距離で、リュカは作戦を纏めながら馬を走らせている。
「とりあえずキングゴブリンを先に仕留めたら、それ以上群の数は増えないからさ、先にキングゴブリンを仕留めようか。バラのゴブリンは仕留めずに無力化を最優先して」
「了解」
「分かった!」
「じゃあ手順だけど、多分最初の一撃で大半は消し炭になると思うんだけど」
リュカは少しクロエの方に目をやり、苦笑いを浮かべながら話を続ける。
「まず遠方からゴブリンの群れを視認したら、キングゴブリンの位置を確認する。なるべく、アモンの攻撃範囲に入る様に周り込んで、キングゴブリンはアモンで仕留める」
「ん!」と、クロエが短く返事をするが、馬の足音で掻き消えてしまいそうな声だ。
「僕とマーニは、クロエの後で炎が消えるまで待機ね。絶対に前に出ない様にして。危ないから。残った個体が居たら無力化して、制圧し終わったら止めを刺していく。これで行こう」
「ん。ゴブリンなんて灰も残らないわ」
「そ、そんな事が可能なのか!」
「大丈夫。クロエの魔法は半端無いから。僕はアモンの炎で死にかけた事あるし。それにクロエにとっても、アモンの炎の最大範囲を試すチャンスだと思うんだ。だから思いっきりやっていいよ」
「任せて。全力でやってみる」
クロエはレーヴァティンをカチャカチャ触って使いたそうにしていて、リュカは少し笑みを漏らして先を急いだ。
「クロエ、もし魔物が残ったらその剣を使って良いよ」
「ん!」
レーヌ村を通り過ぎ、やや速度を落としながらゴブリンの群れに接近した三人は、前方に群れを視認すると、近くの小高い丘に上がりゴブリンの群れを見下ろした。
キングゴブリン軍の行軍は、村長の情報通り行軍速度はゆっくりで、いまだに周りのゴブリン達を集めながら進行している。
数は少し増えて四百体位だろうか、隊列は無く徒党を組んで行進している。
キングゴブリンの位置は『集団の前寄り』に位置しており、集団の大きさは縦幅六十M程で、横幅四十M程度の『前のめり』な楕円形だ。
(うん、キングゴブリンの位置も集団の大きさも問題にはならない)
「じゃあ、クロエ良いかい?」
「何?」
「このままの状態だと、奴等の集団やや左前方から接近して、アモンの最大射角を取れば、多分大半は攻撃範囲に入ると思うんだ」
「ん、そうね」
「だから、少し先回りして射角を取れる位置に、僕等が潜伏して、集団が近付いて来たら攻撃する」
「了解」
「なるべく後続の魔物まで射程に収めたいから、ギリギリまで引き付けてから頼むね」
「任せて。リュカに仕事は残さないから」
「うん。でも、危ないと思ったら殺って良いからね。無理して怪我だけはしないでね」
「ありがとう。気を付ける」
リュカ達三人は丘の上に馬を繋ぎ、少し回り込む形で姿勢を低くして接近すると、最後に三人全員で顔を見合わせ、準備完了の確認を行なった。
「さあ、始めよう。出来るだけ先頭集団を引き付けて。マーニは集団右後方を意識して」
三人が待機する地点にキングゴブリンの軍勢が接近してくる。
ーー三十M……二十五M……手に汗が浮かぶ。
(こういう時って、大丈夫って思ってても身体が勝手に緊張するよなぁ)
リュカは緊張を解す為に首を大きく回す。
ーーゴブリンの先頭集団まで二十Mを切った。
(そろそろかな)
「来て!ソロモンの書序列七番目の悪魔 強欲の大罪 アモン!最大範囲・最大火力で残らず灰に還して!」
ーー瞬の強い光を放った後『蛇の尾に梟の頭を持つ狼』の姿をした巨大な悪魔が顕現する。
以前リュカが大迷宮の地下で感じた、あの余りにも一方的で威圧的、重力が三倍にも四倍にも感じる様な重圧と存在感、臓腑を引き裂かれ地獄へ引き摺り込まれる様な悪意を向けられ、ゴブリンの軍勢が足を止める。
(ゴブリン達が震えている。本能的にこれから何が起こるか直感したのかな?)
先程までザワザワと行軍の音と、下卑た笑い声で騒がしかった草原地帯が一瞬で静かになった。
全身の毛が逆立つ感覚に襲われる中、リュカがマーニの方を見ると、身体中が震えている。
彼の顔からは血の気が引き、この世の終わりみたいな顔をしていた。
『ゔおおおおおぉぉぉ』
(うわっ、声を発したっ!)
アモンの口が開いた次の一瞬、大気が揺れた感覚の後、衝撃波が砂埃を舞上る。
風も砂も吞み込む炎の濁流を吐き出すと、目の前はまさに『地獄』だった。
真っ黒い煙をあげ、毒々しい悪意の塊の様な赤黒い炎が、見渡す限りの草原を焼き尽くす。
ーー轟轟と炎の音だけが響きわたる。
これを『地獄』と表現しないならば代わりの言葉など見つかるはずもない。
この世にこんな圧倒的な炎がある訳ないのだ。
マーニは尻もちを付いて後退りをしている。
(やっぱり本能的な恐怖を感じているのかな?)
アモンが炎を吐き出すのを止めても、火の勢いはまるで収まらなかった。
「マーニ、立てるかい?」
リュカが歩み寄りマーニを立たせて、軽く背中を叩いた頃やっと炎が収まり始めた。
今は季節は秋も深まり始めた夕方だ。
本来なら少し肌寒さを感じるはずの時間帯だったが、辺りの気温は肌がチリチリする程、焼けた地面の放射熱で上がっている。
「クロエ、身体は平気?」
「ん、少し疲れたけど大丈夫」
短い会話の後、炎が収まり黒い煙を立ち上げる草原を見渡すと、キングゴブリンの軍団は疎か、そこに生命と呼べるものは残っていなかった。
やや離れた場所に、これから合流しようとしていた哀れな数匹のゴブリンが居たが、もれなく硬直している。
「残りの奴始末してくる」と、リュカはクロエをその場で待たせて、硬直したゴブリンを一気に狩って回った。
◇
ーーリュカとしては寧ろ、それからの方が大変だった。
草原の延焼を広げない様に、錬金術で消火して回らなければいけなかったし、近くの丘に繋いだはずの馬は杭を引き抜いて、何処かへ逃げてしまっていた。
「馬が逃げるとは思わなかったね。とりあえず、レーヌ村まで歩いて戻るしか無いか」
「ん、馬は本当に臆病な生き物ね」
「旅に出る時はスレイプニルが欲しいなぁ」
「リュカ、足痛いからおぶって」
「ええ、あれから火を消したり、後始末とか結構僕も頑張ったんだよ?」
「疲れた時のおんぶは妹の特権だと思う」
「何の特権かなぁ。分からないよねぇ、マーニ?」
リュカははぐらかしながらも、小柄で軽いクロエをおんぶすると、ずっと黙ったままのマーニに話題を振ってみる。
「すまない……余りの衝撃で言葉を失ってしまった」
「あぁ、僕も最初はそうだったよ。だから最初に言ったじゃないか。僕も死にかけたって」
リュカがクツクツと笑いながらマーニの背中をもう一度叩くと、やっと苦々しくマーニは笑みを浮かべた。
クロエはぎゅっと背中から抱きつき顔を近付けて幸せそうな顔をしている。
「クロエは昔から体重が軽いよね。もう少し食べた方が良くないかい?」
「リュカのアホ」
「まぁ、マーニ。最初は誰でもびっくりするからさ、あんまり気にしなくていいよ」
「ああ、気を使わせてすまない」
「だからぁ、マーニは堅いよ。もっと楽にやろうよ」
ーーマーニが言葉を失ったのは悔しかったからだ。
リュカとクロエの戦闘を見て恐怖を抱いた心、戦闘中に腰が砕けた不甲斐なさ、何でも無い様に後処理をする2人との差を痛い程に感じて悔しかった。
マーニは胸を焦がす悔しさに拳を握り締め、強くなる事を誓った。