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第八話  第一の任務

江口教授からのメールが来た1時間後、法子たちはまた教授部屋に召集された。



「よくぞ集まってくれましたね。」江口が全員の顔を見回し笑顔で言う。


「ホントですよ。もしこの日がバイトとかだったらどうしてたんすか。」連子が顔をふくれさせる。


「そうですよ。あんなに待たせたと思ったら、いきなりメールよこして1時間後に集合って、

もっと前もって連絡してくれればいいじゃないですか。」法子も今回の急な招集にご立腹だ。



「それはすいませんでした。ちょっと今回は急を要したもので。

あとそれと今、赤川君が言ったようにもし招集日にバイトなどの予定があった日でも

無条件でこちらの指令の方を優先してもらいますからそのつもりでいてください。」


江口は笑顔を崩さず言う。言葉とは裏腹に申し訳なさそうには見えない。



「な!?なんだよそれ!!」雄三が声をあげる。


「そんなぁ〜」桃田も顔を崩して言う。



「指令が終わるまでの辛抱です。ひとりでも欠席をしたときは

その瞬間全員の授業単位が永遠に剥奪されるので注意してください。」



「・・・くっそ、やり方がきたねぇな。」雄三はこめかみに血管を浮かせている。



「・・・・それで・・・・・今回の指令というのは・・・・?」

法子が口まで出掛かった文句を全て腹の底に沈め、そう江口に尋ねた。


法子は一刻でも早く単位を取らなければならないのだ。


先ほどの母親の呼び出しは、学校から急用が入ったと言って家を出て間逃れた。

でも、そんなやり方で何度も切り抜けられるとは思えなかった。



「ふむ。緑川さんはさすが聞き分けが早くてすばらしいですね。」

江口は満足そうに笑顔のしわを深めた。


「それでは、今回の指令の話をします。」























「今回のターゲットは理学部地球科学科の関口正利せきぐちまさとし教授です。」


「え?」法子は驚きの声をあげた。


法子は前に関口の授業を受けていたことがあり、

そのときの彼の親切な授業と、質問などをしに彼を訪れたときの彼の人間性に

法子は心底信頼と尊敬の念を抱いていたからだ。


もっと言ってしまえば、若くて知的で端正な顔つきをした彼に

法子は少なからずの好意すら覚えていたのだ。


「関口教授がプロパガンダを行ってるって言うんですか!?」

法子は信じられなくて思わず訊ねる。


「・・・そうです。彼は生徒から大変人気のある教授ですが

その人気を利用し、今回大学長選挙で大掛かりなプロパガンダ行為を行っています。」


「そいつはどういった手段でプロパガンダをしてるんだ?」雄三が訊く。


「はい。彼の手法は『カードスタッキング』と呼ばれるものです。

自らの主張に都合のいい事柄を強調し、悪い事柄を隠蔽するやり方のことをこう言います。

つまりは情報操作をして大衆を自分の思考に誘導する手法です。」


「カードスタッキング・・・ってなに?」桃田は首を傾げる。


「本来はトランプの『イカサマ』という意味らしいですよ。」


「イカサマねぇ。ふぅん。で、そいつはどんな思考を皆に植え付けようとしてんの?」

連子が両手を頭の後ろに回して訊く。



「彼の専攻は地球科学。主な研究内容は環境問題についてです。

彼はその研究で国から多額の援助を受け取ることと引き換えに、国に都合のいいように環境問題の深刻さとその打開策を訴え、政府が環境問題と銘打って国民から金を巻き上げる上で有利な情報を、彼の大学教授としての立場を利用して、国民にどんどん提供しているのです。」



「え?ちょっと待って。環境問題に取り組んでるんならいい奴なんじゃないの?」

連子が怪訝な顔をする。


「ふふ。とんでもありませんよ。

今この国で、いや、全世界で訴えられている環境問題の大部分はまったくの嘘です。」


「な!?」


「その大半は国や一部の人たちがうまく儲かるように仕向けられたもの。

つまりは国民達の地球環境への罪悪感を利用した、立派なプロパガンダなのですよ。」


「・・・そ、そんな・・・。」由美は弱々しい声を出す。


「ちょっとその手の書籍や論文などをしっかり読んでみると詳しくわかりますよ。

いかにうまく国が国民を都合のいいように操作しているのかを。

そして、そのためにどうやってマスコミなどを利用しているのかを。

緑川さん。あなたなら知っているのではありませんか?」


「・・・・・」

法子はうつむいて押し黙っていた。



確かに法子はその事実を知っていた。


環境問題を利用し、国や一部の人たちが情報操作をし金儲けをしているということは、

少し前にテレビの特別番組で目にして以来気になったので、

自分で色々な書見を見て調べ、その真実を確かめていた。



確かに国は国民達の環境破壊への恐怖心を利用し金を搾り取っている。



でも・・・。



法子は思う。



そんな汚いことにあの関口教授も協力しているなんて・・・。







「おいホウコ、どうなんだよ?」


雄三の声で法子は我に帰る。


「・・・。ええ。江口教授の言ってることは現実にあることよ。」


「そ、そうなんですか?法子さん。」連子は法子の同意に驚きの声をあげた。



「環境問題のウソのわかりやすい例はダイオキシンね。

焚き火やごみの焼却炉から毒性のあるダイオキシンが発生するって言って

国が全国の焼却炉を禁止し、規制されたことが前あったでしょ?」


「・・・あったな。・・・ちょっと前に。」雄三が記憶を辿りながら応える。


「あれ、ダイオキシンが人間に毒性があるって、実はウソなの。」


「は!?」


「マウスやラットにとっては毒なんだけど、人間にとってはほとんど害が見つかってないの。

日本でのダイオキシンで病院に運ばれた患者は0なのよ。

急性の毒性はニキビくらいでないに等しいし、慢性の毒性も実証はまだできていなかったの。

それなのにしっかり調べもしないでその危険性だけを一部のいかがわしい科学者が訴え、

マスコミがそれを煽り、メーカーは儲かるからそれに乗っかり、国は皆が騒ぐから規制した。」



「・・・・」法子、江口を除くほかの全員が絶句した。



「他にも私が調べただけでいっぱいのウソがわかったわ。

リサイクル、ごみ問題、あの地球温暖化さえも巧妙に作られたウソだった・・・」



「さすが緑川さんですね。しっかり勉強しています。

・・・そう、実は私はあなたのその『大学1博識で勉強熱心』なところに目をつけ

あなたをこのレンジャーの一員として集めたのです。

まぁもちろん、しっかり者でまとめ役ができるのも私の期待通りでしたが。」


「・・・そんな。私はただ頭が悪いから知識を詰め込んでいるだけです。」

法子は弱々しくかぶりをふる。





「・・・で、それじゃあ俺らはその関口ってのをどう懲らしめればいいんだ?

やり方はどんなんでもいいわけ?」雄三は江口に尋ねる。



「いえ。できれば穏便にことを進めていただきたい。

作戦を説明します。皆さんこちらへ。」



そう言って江口は5人を自分の机の周りに集めた。


窓の外の太陽は静かに傾き始めていた。

第九話につづく

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