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第五話  プロパガンダ

「プロパガンダ!?」



「そうです。今私たちはプロパガンダの危機にさらされているのです。」




「ぷろぱ・・・?って何ぃ?」桃田が怪訝な顔を雄三に向ける。


「えっと・・・。多分、昔ナチスとかの話で聞いたような・・・。」




「プロパガンダ。

国や政府が権力を使って特定の思想、意識、世論、行動に誘導する国策宣伝のことよ。

戦争の時とかに使われる情報・心理戦のひとつで政治的な内容や圧力をもってるの。」




「さすが緑川さん。」江口は満足そうにうなずいた。


「法子さん・・・すごい・・・。」由美は法子に尊敬の目を向ける。


「えぇ?難しくてまだちょっとわかんないんだけど・・・。」桃田が雄三に言う。


「要するに『国とかの偉い奴らが自分らに有利なように国民全員の考え方や行動を操るために、ポスターやマスコミとかを使って煽ること』だろ」


「・・・ってことは、ちょっとまって、俺ら国と戦うわけ?」連子が慌てて言う。


「えぇ!?」由美が不安そうな声を出す。




「それは違います。」




江口は少し笑って言った。


「さすがに国の相手をさせようなんて大それたことは考えていませんよ。」


「じゃ、じゃあ、いったい私たちはどこで起こっているプロパガンダを阻止するんですか?」


江口は微笑を浮かべた顔を崩さない。

机の上で組んでいる指を一度離してからもう一度組みなおす。



「この大学です。」



「!!??」


「ちょ、ちょっとまて。プロパガンダは国家や政府が絡むんだろ?違うじゃねぇか。」雄二が言う。


「そこはわかりやすくするためにプロパガンダという単語を使ったんですが。

・・・まぁここは国立大学です。国と全く関係ないとはいえないでしょう。」


「でも、たしか今はほとんどの国立大学は自治権持って自分らで運営してるんじゃなかったっけ?」連子も言う。


「しかし未だに入試にはセンター試験を用いていたりもしますし、他の数多くのことからも未だに大学は国の情報操作下にあると考えても間違いではないでしょう。」


「でも教授。たしかプロパガンダは有事下、つまり戦争とか武力衝突とか非常事態が起きているときに用いるものですよね?これはやっぱりおかしいんじゃ・・・」法子もまだ納得できていないように言う。


「いえ。それも違います。」


江口はここで少し声の音量を大きくして続ける。




「今、この大学は非常事態なのです。」





「そ、そうなんですかぁ?」由美は恐怖心を顔に浮かべる。


「ひじょ〜じたい〜。」桃田はなぜかうれしそうだ。


「な、なにが起こってんすか?」連子は江口に問いただす。




「学長選挙・・・だろ?」




雄二がこめかみあたりを右手の人差し指でさすりながら江口の方を見つめて言った。



「当たりです。」江口は微笑む。


「学長選挙って・・・今度あるあれのことですか?」法子が江口に聞く。


「そうです。その選挙で・・・プロパガンダ、つまり危ない思想を掲げ、

生徒たちや他の教員たちを操って大学長になろうとしている候補者たちが問題なのです。

そして、彼らが学長になったら・・・・その時はもう何が起こっても不思議ではありません。」


雄三たちの属するこの国立大学では、数年前から学長を選出する際に

生徒たちからも票を集める方法が採用されている。


「なるほど・・・。でもお前、何でわかったんだよ?」連子が雄三に言う。


「そうよ。何でよ。」法子も驚いたように雄三に問いただす。




「ちょっと考えれば簡単だろ。」雄三は面倒くさそうに言う。



「簡単って・・・」法子は信じられない様子だ。





「はははは。」




その時江口の笑い声が部屋に響いた。


「どうしたんですか?」法子が聞く。


「いや。すまない。

あなた達が青山君の思考回路を問いただしているのがおかしかったもので。」



「ど、どういうことなんすか?」連子はわけがわからない。



「青山君の考えのスピードには普通の人ではついてはいけません。

以後やめておいた方がよいでしょう。

なぜなら彼はIQ200の天才児。この大学1の頭脳を持った人なのですから。」



第六話につづく

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