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第十一話 図書館

関口との対面の翌日の火曜日、法子は近所にある県立図書館にいた。



関口教授をどうしても止めたい。


でも、このままじゃダメだ。


まだ、彼を止めるだけの証拠やデータが・・・。



法子は昨日も、沈んだ気持ちで大学の門を出た後、

自然にこの図書館へと足を運んでいた。



小さい頃からそうだった。


何か辛いことや、落ち込んだことがある度に、私はここに来ていた。


勉強することで、心を落ち着かせていた。


心配する暇があれば、勉強して、そしてその不安から逃げて・・・。


いつのまにか私はすっかり優等生になっていた。


でも、それは私が真面目だからなんじゃない。


私が臆病で、弱虫だからだ。




二人の兄達と違い、法子はずばぬけた頭脳にめぐまれなかった。


少なくとも法子自身はそう思っている。



だから、その二人の兄たちにならぶ成績、将来が期待されてるなら、

私は誰よりも努力をするしかない。


努力するしか・・・それしか私には・・・ない。







でも、そんな風に夢中に勉強をしているうちに、

いつのまにか私はいつの間にか勉強が好きになっていた。


新しい知識を得るたびに、それは私に安心とちっちゃな自信をくれた。


努力したらその分だけ確実に結果が出るところが好きだった。


そして、いい結果が出るたびにお母さんに喜んでもらえることも。













『ダメだ。』


法子のため息が、静かでどこか張り詰めたような雰囲気の図書館の中にこぼれる。


全面に大きな窓が設けられたこの県立図書館は、差し込む日差しによって室内の雰囲気ががらっと変わる。夕方に差し掛かった今の時間は、室内は少し哀愁を感じるような、微妙な明るさだ。




法子はもうかれこれ朝から5時間も机に座っている。

様々な書籍、インターネット上の情報、そして関口のこれまでの発表論文・・・。

しかし、いくら読んでも、どうしても関口を確実に打ち負かす切り札をつかめないでいた。



「どうしよう、もうそろそろ兆しくらい掴まないと・・・。」



法子は壁にかかった時計を見る。


関口の発表会まで、残された時間は今日の残り数時間と二日間。

証拠やデータを集め、質問コーナーで関口を論破するだけの台詞を考えるのに

決して充分な時間とはいえなかった。


なにせ、法子はまだ関口の論文の三分の一も読めていなかったのだ。



「どうしよう・・・こんなペースじゃ・・・」



その時。



「あ、法子さんいた〜!!」





「え?」法子は思わず顔をあげて振り返った。



そこには桃田、雄三、連子、由美が笑顔で立っていた。



「桃田、図書館で大声だしてんな。」雄三が言う。



「法子さん、探しましたよ。雄三がここだろうっていうから来てみたんですよ!やっぱいましたね。」連子は両手にたくさんの本を抱えている。



「会えてよかったぁ。」由美は相変わらずの笑顔だ。




「みんな・・・」


法子は驚いていた。

何でみんながここに・・・?




「ホウコ、ひとりでつっぱしってんじゃねぇよ。

・・・何のために5人いんだよ。」雄三が目を逸らして言う。



「雄三・・・」



「そうですよ法子さん!ほら、俺、雄三に聞いて今資料あつめてきました!」



「連子くん・・・」



「僕は頭悪いから資料整理を手伝おうと思って色々もってきた!

あと、必要なものとかのお使いもするよ〜何でも言って言って!」



「桃田君・・・」



「私も・・・あの・・・何もできないかもしれないけど・・・手伝わせて、法子さん。」



「由美ちゃん・・・」





法子は目頭が熱くなるのを感じ、思わず前を振り返ってごまかした。




「・・・みんな・・・ありがと。・・・お願い、協力して。」



「よしきた!!」全員が法子を囲んで席についた。











その後、5人は図書館の閉館時間まで5人で協力して作業に打ち込んだ。


そして、その作業は次の日、その次の日の深夜にまで及んだ。





そして時間は流れ





関口教授の発表会の日を迎える。

第十二話につづく

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