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桃色ノスタルジィ  作者: ぬー
第誤怪〜現実に救いはあるか〜
18/30

告白5秒前!

ひとしきり吹きゆく風、どこへ行くんだろう、そんな行方を想いながら、また自分はどこへ向かっているんだろう、あまりに早く変わりゆく日々を、ノンビリと生きようとしてたけれど、環境は待っちゃくれないネ、気づけば私は歩み始めていて、向かう先、アナタが居る


「……ホラ、飲むかい?」


声の主は城鐡ノマ、手にはミルクティーの350ml缶、きらめく朝陽を浴びて、スチールの塗装はキラリと光って、その無機質な感じに少しだけ、生命の鼓動を得ているように見えた


「ありがとう」


受け取る、顔は見なかった、だって彼女私が夢の中で踊ってる時、止めどなく流れる涙をそのままに、一夜の涙を呑んだ、その余韻の涙の跡は、まだ彼女の頬に残ってあるだろう、私も泣こうと想った、泣けなかった、なんでだろうなぁ、不思議と冷静に考える昨夜の自分、その姿は今になってなんだか切ない、プルタブを開ける音、ほのかな甘い香りが広がって、ぐいっ、一気に喉へと液体を、ノーマルな甘さがこれまたなんだか切なくて、涙の一つや二つ、ひねり出そうともするのだけれど、なんとかなるんだろうな、そんな能天気さは意地っ張りなもんで、どうにも泣けない空気の読めなさを、これまた液体で流し呑み込む、嗚呼、こんなにも風がぬるい


ノマちゃんの顔には泣いた跡がある


だからなんとなく彼女の顔を見る気になれない、目が合うと、またノマちゃんは泣いてしまいそうな気がして、ぬるい風がまた吹いた、残りの液体をぐいと飲み干す、今吸収した水分は、いつか涙となって流れるのかな、甘いミルクティーは、しょっぱい涙になるのかな


「……」


もうなんだか言葉が出ない、希望は捨てちゃいないけれど、もう身も心も疲れきってるのを感じる、ぽんと一つ出たため息が、やけに余韻を残して去ってった、ゆ鬼ちゃん、嗚呼、ひどく疲れたなぁ、もう


「おい、酷いカオしてるぞ」


「なによ、乙女に対してブスって言うなんていい度胸してんじゃないのよ」


「別にそんなつもりで言ったんじゃ……ただ、やつれているなって思って……すまない……」


ユキカゼに目をやる、ふと脳裏に浮かぶ情景が、紅い世界、振り下ろした刀身、飛び散る赤色を浴びて、響き渡る悲鳴を浴びて、切り捨てたそのコの肉体を抱きかかえる、下界には炎が、争いに飢え争いに呑まれた魂たちの慟哭が、見下ろす世界はあんまりに醜い、灼けたように痛む胸の内を、抱きかかえるそのコの涙が代弁してくれた、刹那、私の目からも涙が溢れ出した、そんな情景


「……」


「……そんなに気に障ったかい?すまない…………」


「ううん、考え事してただけよ、私だって分かってる、疲れきっちゃってるってさ」


私があの情景の中、切ったのはゆ鬼ちゃんだった



今日もまた冷たい水の中、アナタを待っている……私を見つけて、アナタが私を……



「おい、海へ行こう」


「……え、令奈ちゃん告ってる?」


ちょっとイジワルな事を言う


「ち、違ぇやい!べ、別に叉姫と二人でってわけじゃないから!!皆で行くんだからね⁉︎」


オモシロイくらいに焦る焦る


「じゃーなんで二人きりの時に言ったのかしら〜ん?」


まだまだ攻める手は休めない


「そりゃたまたま今日の食事当番が叉姫と私だったからで、ただ、そ、そんだけだ!」


よくできました、かな


「んふふ、からかっただけよ♪」


「チクショウ、小悪魔め……!」


悔しそうな照れ笑い、これも計画通り、なんてね


「どーして海なんかへ?」


それじゃ本題


「海底の90%以上は解明されてないんだ、ゆえに、お宝が埋まってるもんさ」


にっ、っと笑う令奈ちゃん、輝く目が私を見つめ、私の心を見透かす様に想えた、あわわ、って慌てて目を逸らして一つため息、やれやれ、小悪魔はどっちなのよっ



「……なんだ、海水浴に行くワケじゃないのか?」


ノマちゃんは疲れきった顔


「……んふふ、海水浴よりも行きたくなるわ」


自信満々令奈ちゃん


「……はわぁ〜」


あくびする閻魔将軍


「さあこれから、私の身の上話をするぞ」


威勢はますます良くなる令奈ちゃん


「私は実は……」

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