永遠だって想ってた
業火、進みゆく先にはかつての親友が、心が傷むよ、そんなキレイゴトを言ってみたり、聞きたいこと、たくさんあるにはあるけど、聞けず終いとなるのかも、未来のことなんてわかりやしないや、そんなことわかりきってることだけど、今更になって深く深く刺さってくる、ねえ今こんなにも、わからないことが多すぎて、路頭に迷うみたいに、アナタに迷わされる、どうにかして、この現実を夢だったってことにできないかしらん、とにかくアナタと心ゆくまで話したい、かつての親友よ、今も、親友って想いは拭い去れない、いつまでも、ここでアナタを待つよ、そんな悠長なこと出来ないか、だから直接アナタの元へ言って、目を覚まさせてやるんだ、キスでもすれば目覚めるかしらん?そんなメルヘンじゃ、どうしようもないかもね、今一度この胸の情熱を、灼熱の拳となして、アナタの頬へと叩き込まん
「ゆ鬼ちゃん……」
「……あんなぁ、叉姫、さっきからゆ鬼ちゃんゆ鬼ちゃんゆ鬼ちゃんゆ鬼ちゃんって……遠距離恋愛かっ!っつーの」
「令奈ちゃん、私、流石に恋愛感情は持ってないや」
「ネタにマジレスすんじゃないよ……裏切られてボコられたのに怒りの一つもないみたいじゃないか、まるで亭主関白で口が出せない妻だよお前さんは…………殴られても「大丈夫、私はアナタが本当は優しいの知ってるよ」とか言ってまた自分の着物売って酒代を工面する……そんなDV野郎とはさっさと別れろ!!」
「令奈ちゃん、私、まだゆ鬼ちゃんとは結婚してないよ?」
「いろいろ言うことあるけどまず"まだ結婚してない"ってナンだあ⁉︎する気なの?将来的には、なのォ⁉︎」
「……うるさい!!!!閻魔将軍の御前であるにも関わらず、お前ら少しは謹め!!」
「ま、まあ、ノマさん……わ、私は平気だから」
こんなにナヨナヨ、なのにふとのぞかせる閻魔の顔は地獄の極寒だなんて思いもよらないが、今はただあくせくノマちゃんなだめるお姉さん
「くそー、やっぱり何だか足りないよなぁ……」
威勢良く叱ってたノマちゃん、急に陰るテンション、誰しもが感じてること、皆やけに明るく振る舞うけれど、やっぱり一人分足りないんだ
「ゆ鬼ちゃん……」
「叉姫、まーた始まったかいな……」
ツッコミいれる令奈ちゃんも、なんだか今一つ気が乗らないんだろう
「「「「……」」」」
円卓には四人分の沈黙、五人分ある椅子の、一つの空白やけに重くって、あの賑わいは遠く記憶の果てへ、こんなにも失うことがキツイ事だなんて、おもいもしなかった、失うだなんて、おもってもなかった、また賑わいを取り戻そう、自分に言い聞かせるのはもう何度目か、数え切れぬほどの勇気ある言葉は、冷めきった私自身にスルーされてった、受け止めるほどの気力もない、もう立つことさえおっくうだ、ため息ばかりは果てなく出てくる、気持ちはどんどん沈む、それを無理に上げようとして、なんとかやってみるけれど、どうにもいかないや、情けないなぁ
「……」
「なぁに黙りこくってんのよんっ、お姉さんに話してごらんなさい?」
「……なぁーにが"よんっ"だ、口調を直さないと教えてやらんっ」
「この口調が色っぽいんじゃないのよぉ、ゆ鬼ちゃんったらいけずぅ〜♡」
「なぁーにが"いけずぅ〜♡"なの"よんっ"!オカマ野郎め!」
「オカマじゃないわよーんっ!れっきとした乙女ですぅ!」
「少なくとも乙女ではないだろーに」
「乙女よ!乙女乙女乙女なのっ!袖はキッチリ萌え袖だし、走る時はちょこちょこよちよち走るし、リップこだわってるし、一人の時は自堕落だし!」
「少なくとも自堕落なのは直せよ……」
「はぁ〜い♡わかりました、ぴょん☆」
「……もう、何も言うまい」
こうしてふざけあっていると、一瞬、君を忘れることができて、頭の中、君をなんとか消し去ろう、だから頑張って無駄話に情熱注ぎ、会話が途切れてまた君が頭の中にやってくる、厄介なヤツ、今じゃもう敵同士なのに、どうしてこんなに殺意がわかないんだろう、ひょっとしたら、その先は言うまい、あの時蹴り飛ばしたのに、なぜ立ち上がる?その足は何のために付いている?私のところへ来るため?私を蹴り飛ばすため?是非とも君に問いたい、志のために切り捨てた安らぎは、後悔は、私を殺す毒なりや?
今になっておもいだすわ、アナタが変わってしまった日のことを、それまでは何もかもが上手くいってた、不安もストレスもなかった、毎日毎日陽が昇って沈んで、毎日毎日話して笑ってさ、暗闇の中に飛び込んだ、何もかもが変わった、私の暗闇を照らすランプは私の中にあって、アナタはそのツマミをひねってくれて、柔らかい灯り、私にもこんな光が出せるんだって気づかせてくれた、もう遠い日のこと、そんな風に感じられる、アナタは笑顔を失って、私は訳も分からず泣いちゃって、でもまだ私、アナタを失っちゃないでしょ?だからバカみたいにアナタを追いかけて、いつの日かアナタを捕まえる、捕まえたあかつきには、ぎゅっ、ってアナタを抱きしめる、仕返しだよ、蹴られた分だけアナタに言葉をかけて、きっと優しい涙を流させる、できないことばかり、そうおもってた、でも今はなんだかアナタが遠くに見えていて、なんだってできちゃう、だからアナタに笑顔を戻したい、それだけなの、もう二度となくしちゃわないように、たくさんアナタに笑顔を届けて、笑顔を忘れないように、キッチリ私が手伝ってあげるからね、私はアナタのこと、意外と知らないかも、寝るときに羊を数えるのかとか、好きな歌は何なのかとか、だから今すぐにアナタのとこへ飛んでって、今すぐにアナタとたくさん話すんだ、それだけで充分じゃない?それだけで私とアナタはもっともっと、深く結ばれるから、今少しの間だけ、私を待っててね
「閻魔将軍、一つ尋ねたいことがある」
「なぁに?わかることなら答えるわ」
「ゆ鬼は、私達の一番の目的である、あの"野心家"ということでいいのだろうか」
「ええ、違いないでしょうね」
「……」
「ノマさん、アナタもゆ鬼さんに攻撃された時に感じたはずよ、あのコのドス黒い力が」
「……ええ、とてつもない殺意でした…………」
「あのコが、私達のターゲットよ、やっと定まった」
「大きな一歩です……これで、ゆ鬼を倒せば戦いは終わる」
「そう、安息の日々はもう目の前にあるのよ」
「やっと……やっと……なのにどうして、私は泣いているのでしょうか?あいつの事を想うと、あいつと過ごした日々を想うと、涙が止められなくなるんです」
「……奇遇ね、私もよ」
脳裏に浮かぶのは楽しかった日々、これから来るはずの楽しい日々なんかじゃ到底太刀打ちできないくらい、笑顔と幸せの溢れてる日々、そればっかりがリピート再生、次に進む勇気なんて、これっぽっちも出てきやしない、ずっとあの日々を想って、ずっと君を待って、私は泣いてばかりいる、いつの日にか君に逢うだろう、お互い変わり果てた姿になって、その時に、私は君を討つのだろう、どうか、恨まないでほしい
「閻魔将軍、どうか一日だけ猶予をください、あいつのために一日だけ泣いて明かしたい、そしたらきっと私は本当に鬼になれる、あいつを討つのにためらいはなくなる…………」
「お好きになさい……」
もう二度と戻れない日々へ、せめてもの涙を贈ろう、君と逢う日を想って、今しばらくだけの、哀しみに沈む




