第3話
新クラスになってから最初の頃は、全くもててなかったというのに。
それが今やクラス一の人気者。
女子の視線が毎日毎日熱い。時には追いかけ、時には火花が散る。
おかげで放課後の総会なんぞ、話など聞いてなかった。
室町君と放課後、出席なんて。
「では、全員一致で決まりと言うことで」
はっと、眼が覚めたときには、すでに話が終わり、ぱちぱちと拍手が上がっていた。
各係りが寄り合い、雑多な話し合いをして、意見を出し合うものだ。議題の内容は、季節に関する係りの役割、学校都合の日程の連絡など。目がぱっちりあいていたところで、意味ある議題があるとは思われない会だが。
「是非、成功させましょう」
なぜか、その日は違っていた。
感激したというか、みんな目をきらきらさせ、やる気に満ちているというか、心一つになった感じがしていた。
「入野さん、みつかったらいいね、協力してくれるね」
総会長の顔なじみの先輩が、小百合の前まで来た。
「え、あ、はい」
何を?なにやら?
「時間が多少かかるかもしれないけれど、すまないね」
室内の全員が、小百合を一度チラッと見る。何か頼まれごとをされたようだけれど・・・どうしよう?
室町君が怪訝そうな顔をしている。
先輩達に取り囲まれてしまえば、もう「はい」としか返事しようがなかった。
いったい何なのか?
何なのか分からないまま、何かを探すことになってしまった。
総会が終わると、、
「入野さん、ちょっと」
と、室町が話しかけてきた。
小百合はほっとしたのと同時に、どぎまぎした。何度見てもどぎまぎする。
けれど、先程の聞き逃した会の内容を聞かなければ。室町君ならきっと、小百合のあんぽんたんのミスを笑って許してくれて、助けてくれる。だって、前も小百合をいじめる久住のことを怒ってくれたから、彼はそういう人だって分かる。
とろこが、
「室町君、じゃあ、頼んだよ」
と、総会長と会の役員達が、どやどやと室町の周りにやって来た。
「じゃあ、上向はあるけれど、下はないんだ。やはり、古い建物だから」
総会長を取り囲んで、なにやら深刻そうな話をしている。小百合もその場に入っている。
「あの、会合で話していた板?」
「痛んだ天井の雨漏りでね」
「塗装業者がお手上げだそうだよ。どうも、厄介だ」
「じゃあ、ばたばたするのは、以前からなんだね」
塗装か?と納得しかけて、皆がなにこの子?みたいな目で見ていることに気づいて、やはり違うなと思いなおす。場の雰囲気からして、それ以上何も聞けなくなった。
「じゃあ、各自手分けな」
総会長が言い出したのを、皆が承知してうなづく。
駄目だ駄目だと思いながらも、どうも疑問を口に出来る状態でない。
「入野さんも、行こう」
総会長と役員がいっせいにこっちを見る。
わーん、私だけ分かっていない。
と思ったけれど、また小百合はもうはいと、言うしかなかった。