俳優の彼に浮気されて、やけくそになってモデルにな...る前にダイエットしなきゃいけないことに気がついた。
俳優彼氏のスピンオフです。
一年後の話は連載中なので、面白かったらそちらもみてください(#^.^#)
許さん。あのやろー、許さん。
私はガリガリ君の3本目の袋を乱暴に開けた。むさぼるが、それと同時に視界が歪む。
「...ふぅっ...ふへぇっ...ぐふっ...!!」
熱いものが頬をつたい、ガリガリ君がむせてしまった。鼻がツーンと痛む。
頬につたったものはすぐ近くにある週刊誌にポタポタと落ちていく。一面の見出しはこうだ。
"若手イケメン俳優植草葵、Gカップ女優とお泊りデート"
...植草葵は私の..."元カレ"。つい10分前まではホントに彼氏だったけど。あいつは私じゃなくて、仕事をとった。
そりゃ...仕事と私を天秤にかけろとは言わないよ?これだって...やらせだって分かってる。でも..........
ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!なんで私よりも美人で美脚で胸も大きいやつとチューしたりいろいろしてるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!せめて許可とれや許可を!!!仮にも彼女だぞ?!こんな50代のおばちゃんみたいな体型でも彼女は彼女だぞぉぉぉぉぉ!?お前いつも私にキスするときはいちいち「ねえ、キスしていい?」とか聞いてただろ?!どうせ元グラドルには.....
はぁ...はぁ...叫びすぎた。ちょっと休憩。
え?ここはどこかって?ビジネスホテルですよ。ホテル。私の元々の家から歩いて10分です。ばれないかって?それは賭けです賭け。だって灯台もと暗しっていうでしょ?ばれたら...んまあドンマイです。ここを知ってるのは...
ビーーーー、
...誰か来ました。元カレだったら...ハハ。
「どなたですか?」
「有理沙ぁ~私たちよ~!!」
ああ。これなら大丈夫。
ガチャ。
「百華、麻理...」
目の前が真っ暗になった。数秒後に2人が抱きついてきたのだと認識したけど。
「有理沙ぁぁぁぁぁぁ!!辛かったね!!うち泣きそうなんだけど!!」
「植草マジ(ピー)!!」
麻理...放送禁止用語...
「今、植草を2人で殴ってきたところだから!!」
...え?
「ほら、約束したじゃん!植草が有理沙を泣かしたら、私たちがぶん殴りに行くって!!」
いや...してたはしてたけどさ...まさかマジでするなんて...
「百華が黒帯持ってて良かった~!!植草ざまあって感じ!!」
百華は大統領のように胸を張ってドヤ顔だ。
百華は空手をやってたのだ。痛いどころの騒ぎじゃないぞ。うん。
「てか麻理、子ども大丈夫なの?」
「ん?大丈夫!海人に預けてきたから!!」
海人っていうのは葵...ああ、名前言うのも嫌になるわ~。あのクレイジー野郎の親友なんだけど、茉莉とノリで付き合ったところ麻理が妊娠。そのあとは...まあいろいろあったらしい。で、現在3歳の男の子アリ。
「神山みちる...ふんっ!メロン胸女っ!作り物のくせにっ!」
百華は爪で、週刊誌のグラドルの写真をグリグリと傷つけている。麻理も参戦。
「えっ?あいつ整形してるの?」
「え~、有理沙知らないの?結構有名な話だよ?」
そうなんだ...
ふとテレビをつける。今流行りのオーディション番組だ。
『女優志望の超キュートな16歳っ!美希さんの登場ですっ!』
割り箸みたいな細さの女の子がドヤ顔しながら登場した。"私かわいいでしょ?"と言わんばかりだ。
「ねぇ、有理沙。」
麻理が雑誌を持ちながら、私に近づいてきた。
「女優になれば?」
............?
「は?」
「いやさ、目をやられたら目と歯をやり返せだよ。」
いや理解不能。
「女優になってさ、植草を見返すっていうのは?」
...
「いや、無理でしょ。」
「えー、有理沙めずらしい!いつもできないことはないって感じでチャレンジャーじゃーん!」
百華はちゃっかり私のガリガリ君を食べている。
「今回は例外。高3の文化祭のオープニングでの私の演技の酷さ知ってるでしょ?」
「あー、あれは伝説だね!」
麻理と百華は顔を見合わせて笑い出した。
「笑わ...」
ビーーーーーー、
静まりかえった。誰か来た。
「う、え、く、さ、?」
2人は私に隠れるように指示をした。
私はぎゅうぎゅうにベッドの下に入り込む。
扉を開く音が響き、私の心臓の音もやかましく私の骨を振動させてる。
「あっ!!有理沙ママじゃん!!」
えっ?ママ?
「あ~!!やっだ~!!ももちゃんにまーちゃん久しぶり~!!」
渋谷ギャル風ファッションに身を包み、ハイテンションで若者言葉を話すこの人。
小林美幸、年齢不詳。私のママだ。
「ありーさー!!!大変だったでしょう?!
初恋の人に浮気されるなんて....マジ植草!!!」
おいっ。
「それにしても、なんでベットからの登場なのあなたは?」
「クレイジー野郎かと思ったから...」
「ああ、(ピー)?」
それ人の呼び名にしちゃっていいのか?
「全く信じらんないわよね!!!恋人じゃなくて仕事をとる男なんて!(ピー)して(ピー)して(ピーピーピー)してやるのが妥当だと思うけど皆様いかが?」
麻理と百華は納得と言った感じでパチパチを拍手した。
「それでね有理沙ママ!有理沙は痩せたらめちゃくちゃ可愛いと思うから、女優になれると思うんだけどどう?」
ママは私を品定めするようにガン見した。
目が怖いです小林美幸さん。
「いや、有理沙は....モデルねっ!!!」
......は?
「有理沙がモデル?」
「私がモデル?」
「あのね、自分の娘ながら痩せたらすごく良いボディラインしてるわよ。痩せたらきっと顔もスッキリするでしょうに。」
麻理と百華は納得したように顔を見合わせ、笑った。
「確かに!痩せたら絶対モテるよね!」
「植草みたいな(ピー)なんかより、もっといい男に出会えるよ痩せたら!」
......
「ねっ!有理沙!痩せよう!」
「.....有理沙?」
みんなさ...嬉しいんだけど、嬉しいんだけど....
「痩せたら可愛くなるとか言わないでよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
止まってた涙が再び溢れて、滝のように流れ出た。
20分後
「ごめん。」
「すまん。」
「すいません。」
私はしゃくりあげつつも、気を落ち着かせようとした。
「私ね....ひぃっく...生まれて初めて...自分の顔とか...体とか...本気で気にしたの...。」
三人、私の前で自主的に正座をしている。
「からかわれても....最終的には...自分の大事な人は...近くにいたから....それで...良かった...」
みんな、自分のことを言われてるみたいに気まずい顔をして下をむく。
「でもさ....葵に...浮気?されてね...すごく自分が醜く感じた。なんで自分のほっぺにはこんなに肉がついてるのかとか...腕にしまりがないとか....もう鏡見るのもいや。」
「....有理沙....」
ママは私の肩に手をおいた。
「ごめん。こんな文句ブツブツいうつもりはなかったんだけど...」
麻理と百華が私にハグをしてきた。
それは2人の優しさを感じて、ボロボロの心を癒してくれるものだった。
また涙が出てきて、2人の肩を濡らしてしまう。
ひとしきり泣いて、ふと思った。
「...私、モデルになろっかな。」
「「「えっ?!」」」
多分真っ赤に腫れ上がってる目で三人を見つめる。三人はまさかという顔だった。
「だって悔しいじゃん?こんなふうにやられっぱなしでさ。」
「そうだけど...無理しなくても...」
麻理は言葉を選んだように気遣わしげに言った。
「あの野郎に復讐してやるのよ。あいつなんかよりもずっともっと人気になって、あいつにドヤ顔してやるの!!」
しばらくみんなは黙り込んだ。麻理と百華は困った顔を、ママはうーんと唸っている。
私はできる限りの笑顔でみんなを癒すように努力する....涙でぐちゃぐちゃだろうけど。
「...さぁぁぁっすが、私の娘っ!!!」
うおっ!びっくりした。いきなり声上げないでくださいっ!
近づいて私の背中をバシバシと叩いた。
「いたっ!痛いよっ!」
「それでこそガールズパワーよっ!!有理沙っ!!やけくそになりなさいっ!心を復讐で満たしてやるのよっ!!」
はっ....はぁ。そんなこと言われてもな...
「植草葵がムカつくでしょ?!」
その名前を聞いた瞬間に私の胸が熱くなった。
「ムカつく。」
「植草葵が憎いでしょ?」
「それ以上。」
「じゃあやりなさい我が娘っ!!!」
「はいっ!!!!」
私はママと2人で拳をぶつけ合った。
「...なんかドラマを見てる気分。」
私とママのやり取りを見ていた百華がつぶやく。
私の心に火がついてメラメラと周りのものは肺になり、涙は蒸発していった。
決意はできた。
マジで復讐してやる。誰もが振り向くほどの美人になって、有名モデルになって、「あれっ?あなた誰でしたっけ?」って言えるくらいの大物になってやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
あ。その前にダイエットだ。
むぅ。強烈母(笑)