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第一話・・・妹の元を離れて一年経ったわけだが。

 僕、井村充いむらみつるは一人暮らしを始めてほぼ一年近くになる。

 

 というのも、地元である東京から離れた北海道の大学に進学したためだ。人によっては高校から親の元を離れる人もいるが、僕は大多数の人と同じように高校まで地元に通った。そして大学進学に至って一人暮らしという長年の夢を達成することができたのだ!

 何故、一人暮らしをしたかったのか。このことには様々な理由があるが一言で表すと自由を勝ち取りたかったから、それに尽きる。

 朝昼晩、全て自分のペースで行動できるし、小学生を追い掛け回したりと犯罪的な行為でなければ何をしてもいいのだ。一日中ネットサーフィンしたり自転車で突然旅に出たりしても誰も何も言わない。

 彼女を作って自分の部屋で何をしようとも全ては許されるのだ!

 しかし、その自由を勝ち取るに当たって、重要かつ困難だったのは親を説得することだった。

 両親はあまり自分たちの手の届かないところに僕を送るのが嫌だったらしくなかなか許可を得ることができなかった。

 しかし、国立大学は学費が安いことや志望する大学しかできないことを原稿用紙五十枚分ほど語り、それでも渋る親に、止めの言葉、

「夢を‥‥‥夢を叶えるためなんだ!」

とあたかもドラマのワンシーンであるかのように言い放ち、ついに勝利したのであった。

 夢を叶えるため。うん、嘘は言ってない!

 

 親を説得してからはあとは大学合格まで耐え忍ぶことだけだった。何から耐え忍ぶのか。親以外の家族、妹のあんずからである。

 僕が北海道の大学に行くと知った杏は毎晩、布団に潜り込んで睡眠妨害し、家にいるときは一日中ひっつきまわり勉強に集中させなかったり、ひどいときは外出するときにでも腕にぴったりとひっついて来て図書館などでも妨害してくる徹底ぶりであった。

 それに対抗してトイレで勉強する羽目になったのは今となってはいい思い出だ。

 いくら地方国立大学とはいえ、勉強しなくては入れない。学力が足りなければ決死の説得も水の泡になってしまう。

 もし受からなかったら地元の予備校に通うか、最悪、自宅浪人。

 だからそのときの僕はいつになく本気だった。学力という些細なことでさらに一年も待てなかったからだ。


 だから大学の合格が決まった忘れもしない三月七日。

 僕は天高く拳を突き上げ、

「ヨォロレイヒィ~~!!」

と奇声をあげながら人生初の嬉し涙をながしたのであった。


 それから一年たったので僕は記念日と称して一人パーティーを開いていた。

 僕は完全に浮かれていた。

 そのときまで僕は平穏な日々が続くと信じていた‥‥‥。

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