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異世界貴族に転生したけど思ったより不満だったので  作者: 南乗七史
第3章・食糧事情が問題だったので
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第7話・ロードマップが出来たので3

 人口回復を望むにあたって、美味しくて栄養があるご飯を開発する必要がある。そんなもの、現代日本の知識があるならば余裕。


 ――だなどという事には、当然ならない。


「美味しいご飯。なんで?」


 サーシャが首を傾げ、特徴的な青い髪がブラブラと揺れる。


 俺は説明する。


「まず、今人口が増えない理由は高確率で、産み控えと言える現象だと思う。10年前に流行った疫病で沢山の人が死んだ。出産しがちな20歳前後の人たちは10歳前後の、多感な時期に、理不尽な死を観測し、身に染みてしまった」


 シンシアがサーシャの頭を撫でるついでに、傾げていたその首を真っすぐに戻させる。だらしなくするな、という行動だと思う。


「トラウマってやつっすね。俺達も大切な人を亡くしてるんで、よく解る。でも、それがなんで、産まないって事になるんすか?」


「今の親の世代は当然、生き延びた側であると同時に、取り残された側でもあるんだ。親や兄弟、友達を亡くしたあの時のように、自分の子供を失う事に耐えられない。または、自分が死に、子供達に同じ思いをさせる事もしたくない。そうなると、産む事が怖くなってしまう」


 その説明に、サーシャは「へぇ」と納得したようだが、シンシアは一瞬だけ納得しかけて、しかし、踏みとどまる。


「そんな理由で産めなくなってしまってる人達を、ご飯だけで、産んでもらえるようになるんすかね」


 もちろん、それこそが問題だろう。そこは解っている。


一助(いちじょ)にはなる。その程度でしかないが、何もしないよりはマシだろう」


 と、俺は苦笑した。


「少なくとも、幸福でないと人は未来を望めない。未来に希望が持てないなら子供なんて残したくないものだろう。だから、幸福を生み出す。毎日囲む食卓が幸福の場所なら、きっと人は未来を望める。遠い道だが、やるしかない」


 その言葉に、サーシャはうんうんと頷く。シンシアはしばし唖然とし、どこか嬉しそうに笑った。


「…………承知しました。お供します」




 というわけで、課題整理の時間だ。


「美味しいご飯、どうやって?」


 なんかさっきも聞いたような調子でサーシャが聞いて来る。


 美味しいご飯を開発するという事は、美味しくない理由(問題点)を見つけ出し、改善するという事だ。


 ご飯が美味しくない理由の、その可能性として挙げられる要素はいくつかある。


「資源が豊富なこの地、パラノメールをもってしても無視出来ないのが、不安定な食料自給率だろう」


「しょくりょーじきゅーりつ?」


 首を傾げるサーシャ。


 この世界にはまず冷蔵庫・冷凍庫が無いため保存があまり出来ない。温室も無いため季節を無視した生産も出来ない。機械化などされていないので肉も豊富ではない。流通網も馬車なので新鮮な海魚は内地には届かない。その土地の、その季節の食料自給率が極めて重要になる。


 つまり、


「自分達で食べる分を、どれだけ自分達の土地で作れているか、っていう意味だ。美味しいご飯には安定した量と新鮮さが要る。どこからか時間を掛けて仕入れた物は新鮮さに欠けるし、量も安定しない。まずはこの食料自給率を上げる必要がある」


 というわけだ。


 サーシャは質問を続ける。


「食料が安定すると、ご飯がおいしくなる?」


 どこか釈然としない様子のサーシャ。でも、俺は頷く。


「そう、美味しくなる」


 より正確には、不味くなくなる、かもしれない。


 何故食料が少ないとメシが不味いのか?


「サーシャは色んな武器を使って戦うでしょ? 弓は使わないの?」


 そう聞くと、サーシャは答える。


「弓矢、私のスピード活かせない。ナイフ投げれば代替可能。不要」


 どの事。


「でもどうしても弓矢が必要になったとするでしょ? 練習はしないと無理だよね」


 無言で頷くサーシャに、俺は言う。


「1回弦を引いただけで折れる、弱い木の棒だけで作った模造品で弓矢での戦い方をマスターできるかな」


「不可能」


「そう。そしてそれは料理も同じだ。料理をする人が、料理をマスターするための練習材料が無い。だから、料理のスキルが上達しない」


 練習が出来ない。つまり、調整と開発が出来ない。


 食料は貴重なので、玩具にする事など許されない。それゆえに、新しい料理を開発しようなど言語同断。調味料等を多めに入れて味を調整する事も難しい。差し障りないいつも通りの味付けにするか、節約のために減らしていく以外の選択肢が無い。


「食料が安定して手に入る事で、人々は生活に安心を抱く。この安心が、10年前の疫病という悲劇を中和する。料理人達が食材を実験に使って新しい料理を開発し、人々に普及すれば、各家庭の料理スキルも上がる。色んなご飯を食べるようになると栄養の偏りが緩和され、健康面も向上する。パラノメールのご飯は美味しいと広まれば、移民も期待できる」


 だから、と、俺は締めくくった。


「だから、ご飯は人口問題を解決する。…………多分」


 いや、まぁ正直いつかはやる予定だったのだ。だってご飯が美味しくないんだもん。でも、個人的な開発とかではないから難しいかなと思い、様子を見ていた。これは俺や周りの知り合いが頑張れば可能な商品開発では無い。都市開発プロジェクトなのだ。


 その為に必要な事を、シンシアがまとめる。


「食料自給率の向上と、新しい料理の開発っすね。言葉でまとめると簡単そうっすけど……」


 そう、言葉にまとめると簡単だが、当然、簡単じゃない。


 サーシャが続きを紡ぐ。


「食料自給率の向上。食料自給率が低い理由の選定、その理由の排除、必須」


 その通り。いわゆるQC活動というやつだ。


「生き物相手の畜産はレベルが高いから、まずは農作物から着手したい。それと、可能な限り種類も増やしたい。農家に土地を与えて、生産量を増やせないかの交渉も必要だろう。生産量を増やすための道具も必要になる」


 つまり、食料自給率向上のために必要なものは下記である。サーシャとシンシアに説明しながら、話をまとめる。


 1・既存の農業の問題点の発見及び改善。

 2・場合によっては問題解決のための装置開発。

 3・生産量を増やすための土地と人員確保。

 4・場合によっては効率化のための道具開発。

 5・場合によっては調理器具の改善。

 6・新料理開発。

 7・新料理のレシピ拡散。


 これが、今回のロードマップだ。


 …………。


 待って長くない? 今までのロードマップは4つくらいだったのに、今回は倍近い手順が必要っぽい。


 それでもだ、これから未来を築く新婚さん達に、安心した未来を進んで頂くために。


 やってやりましょう。

ToDoリスト


・既存の農業の問題点の発見及び改善。

・場合によっては問題解決のための装置開発。

・生産量を増やすための土地と人員確保。

・場合によっては効率化のための道具開発。

・場合によっては調理器具の改善。

・新料理開発。

・新料理のレシピ拡散。

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