貴族の結婚です。契約結婚ってご存知でしょう?
「あらぁ。辺境伯とも有ろう方が随分と馬鹿になさいますのね」
ミルクティー色の髪にアンバーの目をしたカサブランカがわざとらしく目を細めて夫となった辺境伯を煽る。ブルネットの髪にオニキス色の目をした辺境伯。十八歳のカサブランカより十五歳年上の辺境伯・エボニーは、カサブランカの分かり易い挑発にカッとなってしまった。
「馬鹿に、だと? 私は親切で言っているんだ! 君を愛することはない。私には既に愛する人とその子どもがいるのだからな! これのどこが馬鹿にしていると言うのだ。君が私の愛を求めないように、親切心で言ってやっているというのに」
はぁ。やれやれ、とエボニーが肩を竦め大人の対応をすれば、カサブランカは鼻で嗤った。
「それが馬鹿にしている、と言っているのです。辺境伯という地位についている以上、あなたは貴族、それも当主です。私も貴族家の娘。どちらも貴族の結婚です。契約結婚ってご存知でしょう? まさか知らないとでも?」
若く儚い見た目のカサブランカは、侯爵家の令嬢。辺境の地に嫁いで来ることに対して希望はあった。好きなことが出来ると思って。ただ愛だの恋だのに希望は持っていなかったのだが、決まってしまったものは仕方ない、とやって来た途端にエボニーがこんな馬鹿げたことを言い出したので、鼻で嗤っている。
カサブランカだって十五歳も年上の男から愛されるとは期待していなかった。一目惚れされるほどの絶世の美女でもないし。互いに信頼出来れば良いと思っていたのだが、コレだ。信頼関係を築くことすら、今、諦めた。
そんなカサブランカを見ている辺境伯家の使用人。執事を筆頭に使用人たちは、王都から来る高位貴族の令嬢なんて、みんな似たり寄ったりで、辺境の地を恐れ忌避していて、辺境の地にいる自分たちを野蛮だ、とこちらを見下しているのだろう、と思っていた。
だから王都から結婚するためにやって来たカサブランカのことを、主人のエボニーだけでなく、執事を筆頭とした使用人たちも冷遇する気でいた。
エボニーが愛する人、と言っている女性は平民だがエボニーとは子どもの頃から親しくしていた相手だったから、使用人たちも彼女を貴族の妻に出来なくても、エボニーの妻と子どもだと認めていたので、貴族同士の結婚で決まってしまったカサブランカのことはお飾りとして接するつもりで居たのに。
そのお飾りの妻にしようとしていた辺境伯家の者たちは、小娘と侮っていた侯爵令嬢の、夫となるエボニーと自分たち全員に対する蔑みの目に苛立っていた。それを理解しているかのように、カサブランカは使用人たちも鼻で嗤っておく。
「なに」
こんな小娘に貴族の結婚とは何か、などと問われるとは思っておらず、エボニーは咄嗟に言葉を返せない。
「なに、じゃないんです。辺境伯、あなた貴族家当主でしょう。王家に逆らう気があるんですか」
蔑みの目を小娘に向けられたが、問われたことに対しては何を馬鹿な、と一笑に付す。辺境の地とはいえ、王国の貴族であることに変わりなく、国王に忠誠を誓っているのだ。
「そうでしょう。でもあなた、いえ、あなたたち全員、国王陛下が認めた結婚を蔑ろにするって宣言してるの、気づいてます?」
カサブランカに言われ、エボニーも使用人たちも、ハッと気づいた顔をする。カサブランカはまたも愚かな、と鼻で嗤った。
その儚げな見た目とは正反対に、乗馬が好きで王国騎士団の副団長を務める父や兄の姿を見て育ってきたカサブランカは、剣も扱える勝ち気な令嬢。
王命では無いものの、貴族家の当主の地位についているのに妻を迎えないエボニーを案じて、国王陛下がカサブランカの実家である侯爵家に打診した結婚なのだ。
脳筋の父は娘の嫁ぎ先は、王国騎士団でも指折りの強い者か辺境伯辺りの強い者が良い、と思っていたところだから二つ返事で承諾した。
力技で解決しがちな父とは正反対の兄と、娘を辺境なんて遠いところにやりたくない母の反対を押し切って、承諾された結婚。
カサブランカは勝ち気な自分を理解していたので、辺境伯くらいの人ならば受け入れてくれるだろうと思っていたし、実際、辺境伯から拒否されなかったので、意気揚々とやって来たら「愛する人がいる。子どもも居る。君を愛するつもりはない」というお花畑発言で出迎えられた。
馬鹿にされた、と思って当然である。
ついでに国王陛下の後押しも無視したのと同義。
それを当主も支える使用人たちも理解していないなんて、脳筋どころの話じゃない。
カサブランカだから鼻で嗤えるが、他の令嬢だったら大人しくお飾りの妻の道を選んでいたか、高飛車に王都に帰る馬車を用意しろ、と言っていただろう。
まぁ、カサブランカも後者を選んで良かったのだが、王国騎士団副団長を務めているのが父だと知っていて、蔑ろにする気満々の辺境伯家に一矢報いたくて、あからさまに煽っている。
「まさか、十八歳の小娘に指摘されないと気づかないなんて、主人である辺境伯も愚かなら、使用人たちも全員無能なのね」
結婚を維持する気はないので、使用人たちも煽る。自分たちを見下してくる、とは使用人たちも思っていたが、王都の令嬢らしい見下しではなく、国王陛下の後押しを蔑ろにしたことに対する見下しなので、反論の余地も無い。
無能、と言われてもその通りなことをやっている。
「なっ。き、君は、私だけでなく使用人たちまで蔑むのか!」
虚勢を張るエボニー。カサブランカは目が笑っていない笑みを浮かべ、言ってやる。
「いや、無能でしょう。抑々辺境伯。あなた、私の父が王国騎士団副団長だと知ってますよね? 国王陛下は平和な国だけど、一たび有事が起きた際には、王国騎士団の力添えが必要かもしれない、というお考えで私との結婚をあなたに打診した。それをあなたは受け入れたのでしょう? そういう契約ですよね? 王命ではなくても国王陛下のお声がかりの結婚なのに、私を蔑ろにするって国王陛下も王国騎士団副団長の父も馬鹿にしているってことですよね。それはそのまま私への侮辱で私を馬鹿にしているってことでしょう。なにか間違ってます?」
儚げな見た目で、大人しくお飾りの妻で居てくれるだろうと考えていたエボニーも使用人たちも、この口達者なカサブランカに何も言い返せない。正論だし。
「受け入れたはずの結婚なのに、やって来た私に愛する人がいる? 子どももいる? だから愛するつもりはない? 馬鹿も休み休み言ってくれます? 主人がそんなお花畑な思考をしているのを、執事筆頭に使用人全員が諫めることもしないで、発言を止めることもしない。つまり辺境伯家全員が国王陛下に逆らう気がある、ということでしょう。
というか、辺境伯の地位に居るのにこんなお花畑思考って、逆によく務まってるわ。腕っぷしが強いからなんとかなってるのだとしたら、敵国の間者にあっさり騙されるかもしれないわね。先代辺境伯は後継者教育を間違ったのか、教育は正しくてもあなた自身に教育が身に付いてないのか。こんな人に守られる辺境の地の者たちが哀れだわ」
ここまで言われてさすがにカチンとなったエボニー。
「言い過ぎだ! 仮にも君は私の妻だ! 夫に対してなんだその口の利き方は!」
ここで叱らないと舐められる、と思っての発言だが、エボニーは言葉選びに失敗した。
「は? 私をお飾りの妻扱いする気満々のくせに夫面するのは止めてくださる? 妻を大切に出来ない男が領地や領民を守れるわけないでしょ? それともなにか? 私はお飾りで愛する相手は別だからそっちは大切に扱えると? それはそれで構わないけど、その上で夫面って、私を大切にする気も無いのに傲慢もいいところですわね?」
正論パンチである。
再びノックダウン。
「無能の集まりの辺境伯家の皆さんにお尋ねします」
再び黙ったエボニーに大きな溜め息をついて、カサブランカは更に煽る。もうケンカ売りまくる呼びかけだが、反論出来ない。
「辺境伯の愛する人とやらが平民で結婚出来ないのなら、どこかの貴族家に打診して養女にして妻に迎えれば良いって発想は無かったのでしょうか」
エボニーも執事もポカンとした顔をしている辺り、考えたことも無かったのだろう。
「ああ、その発想も無いほどに無能なんですね。仮にその発想をしても本人が貴族の妻なんて務まらないって言うのなら、我が家じゃなくてもお飾りの妻を了承する貴族家があったかもしれない。そんな家に打診すれば、国王陛下のお声がかりによる我が家との結婚なんて無かったでしょうに、それも考えなかったと?」
エボニーは、恥じるように俯く。
やはりカサブランカに指摘されて、その可能性を思いついたらしい。よくそんなんで貴族家当主を務めていられるものだ、とカサブランカは思う。
「で、ですが、そんな都合良い家が見つかるとは思えません」
ずっと黙ったままだった執事が反撃してくる。言われっぱなしは癪なのだろうが、探してない時点で反撃も意味を為さない。
「探してもないのに良く言うわ。身分を振り翳さなくてもあったわよ。お金の無い下位貴族の家が私の知る限りで三家。そのうち令嬢が居るのは一家だけど、残り二家にお金積んで平民の女性を養女にする手があるわよね。それから、高位貴族だけど結ばれない恋をしている令嬢もいるから、こちらは恋人を連れてくれば良いって言えば、お飾りの妻も受け入れたかもしれないわね」
可能性であって受け入れるかどうかは、カサブランカも分からないが。
「そ、そんな家があるのか」
エボニーが信じられん、という顔をしているが、貴族家当主なのに表情を読ませるって……。良く言えば素直だが、悪く言えば騙し易いことに気づくべき。貴族教育受けてるのか疑うレベルだ。
「探さないから知らない。発想が無いから知らない。王都に出て来て社交をこなさないから知らない。そんなところでしょう」
先代も今代も辺境伯は社交場に出てこないことは有名だ。辺境が遠いのもあるだろうが、忙しいのかもしれないと思っていたけれど、実は違ったのだろうか。
ただ、先代の場合は夫人がやはり王都の貴族家の令嬢だったから、社交シーズンになれば辺境から出て来て、先代の代わりに社交をこなしていた。それもエボニーが成人を迎えて三年目の二十歳で夫人が病に罹り亡くなるまでのことだった。
そこから先代が五年後に亡くなり、エボニーに代替わりしたわけだが、服喪期間が過ぎても出て来なかったのはエボニーである。
エボニーが平民女性と相思相愛になったのがいつからなのか知らないが、先代辺境伯夫妻は反対していたと思う。……反対、していなかったのだろうか。
いや、反対していたはずだ。エボニーの婚約者探しをしていることを、カサブランカが小さい頃から時折聞いたのだから。決まらないことを深く考えなかったが、平民女性の存在が背景にはありそうだ。
まぁ今となっては、その辺りのことはどうでもいいけれど。
当事者として婚約期間も無しに結婚することになってやって来たのは、国王陛下がのらりくらりとしたエボニーに対して、結婚させてしまえば逃げられないって思ったからであり、カサブランカの父もそれを承諾したからなのだけど。
結婚証明書に名前を記入して、辺境伯領にある教会にそれを提出することで、カサブランカは今日からエボニーの妻で辺境伯夫人の予定だったと言うのに。
辺境伯家に到着したその日にコレだ。
王都からここまでの長旅の苦労が水の泡。
それを思い返すと、結婚をしてもいいか、と一瞬思ってしまう。苦労して王都にとんぼ返りは、跳ねっ返りのカサブランカでもちょっと疲れるから。
どこかの宿で休ませてもらおうかしら。
などと考えていたカサブランカの耳にとんでもない提案が聞こえてきた。
カサブランカが言っていたことが正論だったから黙り込んでいたと思っていたが、吟味でもしていたのだろうか。
「で、では、侯爵家に金を出す。だからお飾りの妻になればいい」
「は?」
エボニーの提案に、低い声で一言返す。
「い、いくらならいい?」
「本当にとことん馬鹿にしてきますね。王国騎士団副団長を務める父がいる実家が、困窮していると? 嫁入り支度を見て、言ってます?」
そう。結婚証明書を書いて提出したら結婚したことになるので、当然、カサブランカだけでなく、侯爵家からの嫁入り道具も荷馬車で十台ほど着いてきた。ついでに護衛は五十人くらい。侍女や荷物を出し入れする使用人たちも二十人以上いる。金が無いなら無理である。
更に侯爵家の侍女や護衛の何人かが、この場に最初からいるので、実は当家のお嬢様を蔑ろにする発言をするなんて、と憤慨している。
あと、侯爵家の使用人たちが入れ替わり立ち替わりしているのは、当初、辺境伯家に嫁入り道具を運び込もうとしていた使用人たちや護衛たちが、雲行き怪しいからストップ、とカサブランカに付き添っている侍女たちに声をかけられたからだ。
そして、話を聞いている。辺境伯も使用人たちも愚か者だ、と怒鳴りつけたいが、カサブランカお嬢様が嬉々として正論パンチを繰り広げているので黙っているだけ。
お嬢様が号令出したら辺境伯家と戦争だ、と息巻いている護衛は何人いるだろうか。中々に辺境伯家はピンチに立たされている。
更に更に。入れ替わり立ち替わりの侯爵家の使用人や護衛。護衛の何人かは、第一報、第二報、と次々と王都へとんぼ返りして、カサブランカの父である侯爵に報告へ出立している。
エボニー、いつまで辺境伯の地位に居られるだろうか。
辺境伯という地位は、侯爵家と同等の地位ではあるが、カサブランカの父は何の役割も持たない侯爵領を治める侯爵じゃない。王国騎士団副団長の地位にあるのだ。当然、辺境伯であるエボニーよりも偉い。その令嬢を蔑ろにする発言している辺境伯も止めない使用人たちも、結果を考えてないから愚かな真似が出来るのだろう。
そんな状況下だと言うのに、エボニーは危機管理全く出来てないらしく、金を出す発言からのカサブランカをお飾り妻に据える発言。
カサブランカは呆れているが、侯爵家の使用人たちも護衛たちも、カサブランカお嬢様と侯爵家を馬鹿にしている発言ばかりの辺境伯に怒髪天を衝く勢い。
お嬢様、GOサインください。辺境伯家潰しますから。
という殺気が漲っている。
ここまで来るとお花畑思考のエボニーでも、殺気には気づくらしく、カサブランカの背後から漂う殺気に失言をしたか、と気づいた。
ここまで来ないと気づかないなんて、本当によくもまぁ貴族家当主で辺境伯の地位に着いていられるものである。
咳払いをして、失言を取り戻すように続ける。
「あ、いや、金があるのは分かった。では、私の愛する女性を侯爵家の養女にしてもらえないだろうか。そうすれば侯爵家と辺境伯家の結婚に差し支えは無いはずだ」
まぁ表向きは面目を保てるが。
「私がいるのに養女なんて取らないって分かりませんか? それでも受け入れるメリットが侯爵家にありますか? この結婚は、有事の際には王国騎士団を辺境へ派遣することがスムーズにいくためのもの。辺境伯家にメリットがあっても侯爵家にメリットは無いですわね。それなのにあなたの愛する人を養女にしろ? そのメリットってなんですか? 養女に出来ないなら、あなたとの結婚を継続して、あなたの子を私の子にするつもりです?」
何のメリットもないのに、養女を取る気はないし、エボニーと愛する人とやらの子を我が子にする気もカサブランカには無い。
「いや、その、メリットは……」
メリットが無いことにようやくエボニーも気づいた。駆け引きとか向かないタイプである。
「更に言えば、私自身にもメリットが有りませんわ。百歩譲って、我が侯爵家が辺境伯家と縁付きたい、というメリットがある、ということにしましょうか。でもそれは侯爵家のメリットであって、私個人へのメリットはゼロですわね。
あなたの愛する人とやらを我が家の養女にするメリットゼロ。その子を私の子にするメリットゼロ。お飾り妻を私が務めるメリットも当然ゼロ。見返り無く、貴族家の娘として生まれ育った私に、一方的な話を持ちかけるなんて愚かですわね」
何度も言うようだが、カサブランカは十八歳。エボニーは十五歳年上の三十三歳。小娘と侮っていたのだが、正論ばかり並べ立てられて、ぐうの音も出ない。
カサブランカ個人に対しても、メリットゼロの契約を持ちかけるとは、ここまで来るとエボニーのお花畑思考は、笑い話を生み出しているようにしか思えない。
それ以降、また黙りに戻った辺境伯・エボニー。
カサブランカは契約の話し合いにもならない、と見限って辺境伯領内の宿で一泊して、翌朝王都へとんぼ返りする予定を立てた。
少し残っていたとんぼ返りが面倒だから結婚してもいいか、という気持ちすら綺麗さっぱり消えている。
もちろん、侯爵家の使用人たちにもその旨通達済みだ。
さて。
お嬢様を蔑ろにする辺境伯に激怒し、侯爵に報告するため出立していた護衛たちだが。
カサブランカを溺愛している、いわゆるシスコンの二つ名を王都の貴族たちの間で轟かせているカサブランカの兄が、実は密かに辺境伯領を目指していたので、王都に戻るよりも前にカサブランカの兄と合流していた。
カサブランカに何も無いのが一番だが何かあった時のために、というシスコンセンサーでも働いたのか、見事に「何か」あったので、王国騎士団副団長の息子にして、騎士団の若きエースとして実力も有る彼は、報告を聞くや否や、辺境伯家を潰して良いか、父と国王に密書を取り付けた鳩を飛ばした。
よく訓練された鳩は、数日後に父と国王から返事を持って帰ってきて。
父である侯爵は「潰せ」と一言だったが、国王の方は「さすがに潰されると辺境領を治める者が居なくなるし、領民たちも不安になるから、当主交代で」と、要約するとそんな内容が煌びやかな形容詞に埋め尽くされて書いてあった。
カサブランカの兄は舌打ちしつつも、国王陛下に逆らうわけにはいかない。
ということで、鳩に括り付けられた密書を携えて、辺境伯家へ乗り込んだ。
結果? 言わずもがなだが、まぁ一応。
ブチ切れたカサブランカの兄によって、カサブランカに正論パンチでボコボコにされていたエボニーは、更に嫌味のオンパレードで撃沈。
そして、国王陛下の密書を見て、自分の浅はかさも理解して、観念したように当主の座を下りることに。平民になったので、愛する女性と子どもと一緒に幸せに暮らして……いるのかどうかは、分からない。
後任は国が決めるとのことで、一ヶ月ほど辺境伯家の当主は不在だったが、無事に後任も決まった。使用人たちもまとめてクビにしたいところだったが、それでは辺境伯家がたち行かなくなるので、一年は無給で働くことを条件に、クビは免れた。無給でも衣食住は確保されているのだから良しとしておくべきである。
カサブランカ?
妹を溺愛する兄が乗り込んできた時点で、もう辺境伯家の未来は定まった、と見切りをつけて、後始末を兄に頼み、のんびりと王都へ帰還した。
その後は次の婚約者が決まるまで、大好きな乗馬を兄と共に楽しむ姿が見受けられた。
(了)
お読みいただきまして、ありがとうございました。
正論パンチ繰り広げるだけの主人公を書きたかったのです。
あと、後始末させるためだけに兄を登場させました。




