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√ 二・蜃気楼の港町【シェリー・コート】 異端暗黒都市オガム

 大魔導師ナックラ・ビィビィとラブラド種の女性剣士リャリャナンシーは、寂れた入り江の港町【シェリー・コート】にやって来た。

 港で活気なく、魚介類の水揚げをしている人々のシェリー・コート特有の地域服には、多数の貝殻が魔除けの意味で縫いつけられている。


 ナックラ・ビィビィが呟いた。

「以前来た時は、もっと活気があった町だったが……これは、どうしたコトじゃ?」

 ナックラ・ビィビィは、近くを通りがかった漁師に町に活気が無い理由を訊ねてみた。


 顔色が悪い漁師が、沈んだ口調で答えた。

「数ヶ月前に入り江の入り口に着水していた。ググレ暗黒教の、浮游飛行都市【異端暗黒都市オガム】のせいでさぁ……急に魚介類が不味くなった」

 ナックラ・ヴィヴィは苦々しい表情で呟いた。

「そうか『ググレ・グレゴール大司教』のググレ暗黒教が、こんな離れた町にも来ていたのか……オガムの都市は、直接その形を見せたのか?」


「いんやぁ、空気が(よど)んでいるようにしか見えなかった……そこに確かに存在しているはずなのに、建物の形に淀んだ空気の塊にしか見えなかった」

「見えなかったのは幸いじゃ、現れたオガムを直視したら。心清らかな者は狂気に堕ちるからのぅ……黒い服を着た奇妙な連中は町に現れなかったか?」


「現れた……町の者に妙な教えを説いていた」

「『他人を妬み羨み憎み。成功した者の足を引っぱり陥れ。誹謗中傷と嘲笑をして他者を不幸にする者には、幸せが訪れる』という。

ググレ暗黒教のおぞましい教典じゃろう、耳を貸してはならんぞ……あの男の言いそうなコトじゃ」


 続けてしゃべるナックラ・ビィビィ。

「魚介類の味が不味くなった原因は、オガムに付着してきた毒の貝が海の底に沈んでいるからじゃ、その貝を取り除けば味はもどる」


 港町を歩くナックラ・ビィビィの後ろからついて歩く、リャリャナンシーがナックラ・ビィビィに訊ねる。

「ググレ暗黒教の、ググレ・グレゴール大司教を知っているような口調だったが?」

「人の心に災いを広める、西の厄災『ググレ・グレゴール大司教』……儂の肉体に不老の呪いをかけた、実の父親……クソ親父じゃ」

 少し言葉の間を開けて、ナックラ・ビィビィは吐き捨てるような口調で言った。

「あの男は、何百年も精神を別の人間の体に移して生き続けておる──以前は亡くなった若い女の肉体に精神を移して、オガムの大学で暗黒教の講師を兼任しながら、大司教をしておった……今は若い男の姿じゃ」


 町の通りを歩いていると、数人の素行が悪そうな冒険者の風体をした男たちが笑いながら、こちらに歩いてきた。

 その中の顎に傷がある男が、明らかにワザとリャリャナンシーに肩をぶつけてきた。

 地面に転がり、ワザと当てた肩を押さえて大袈裟に痛む演技をする、顎に傷がある男。


「いてぇぇ、肩が外れたぁ、いてぇよぅ!」

「兄貴、大丈夫ですかい! 姉ちゃん、大変なコトをしてくれたなぁ……こりゃあ、医者料をもらわねぇとなぁ」

 男の顎にある傷を見ていたリャリャナンシーは、腰に吊るしてある鎖付きのクナイを生き物のように操り。

 男の首に巻きつけて締め上げた。

「ぐっ!?」

「てめぇ、兄貴になにしゃがる!」

「やっちまぇ!」

 仲間の男たちが、リャリャナンシーの左右と後方から剣を抜いて取り囲んだのを、離れた場所に避難したナックラ・ビィビィは樽の上に座って眺めている。


 リャリャナンシーの後方にいる男が剣を振り上げる前に、⊥字型兜の赤い光点が頭頂を通過して後方に立つ男を睨む。

「わたしに、前後左右の死角はない」

 リャリャナンシーは、鞘に入ったままの剣底で後方の男を突き倒す。

 左右に立つ男二人も、リャリャナンシーは剣を抜くコトもなく鞘に入ったままの剣で打ちのめされた。


 リャリャナンシーが、顎に傷がある男の首に巻きつけた、クナイ鎖を引き締めながら訊問する。

「若葉月の五日……花嫁衣装姿の『アスナ』という女を殺したのは、おまえか!」

「な、なんのコトだ」

「とぼけるな、おまぇだなぁぁ!」

 リャリャナンシーは、グイグイと容赦なく男の首を締め上げる。

「白状しろ、おまえだろぅ!」

「く、くるしぃ……ち、違う……オレは、その日、カジノでボロ負けしていたぁ……ぐぇ」


 男が気絶すると、クナイは自然にリャリャナンシーの手元にもどる。

 気絶している男の口をこじ開けて、男の下顎に牙が無いコトを確認して呟くリャリャナンシー。

「こいつでも無かったか……どこに居るんだ、アスナを殺したのは誰だ」

 歩き出したリャリャナンシーの後ろから、ついていくナックラ・ビィビィが訊ねる。

「今のはなんじゃ……アスナとは誰じゃ?」

「私恨だ、気にするな」

「そうか」


 リャリャナンシーを追い越して先頭を歩くナックラ・ビィビィに、リャリャナンシーが訊ねる。

「この町で、第二試験をして正式に旅の同行者を決めると言ったが……どこに行くんだ?」

「町の丘に特定の時間の日差しで、未来の蜃気楼が見える場所がある……そこで見る旅の先に必ず、遭遇するコトになる未来を見て、お主自身が決めるのじゃ……このまま、旅を続けるかどうかを」


 丘に向かって歩いているナックラ・ビィビィに向かって、怒鳴る男の声が聞こえてきた。

「やっと追いついて見つけたぞ!  ギルド食堂にいたヤツらに聞いたぞ! よくも縄を毒ヘビと言って、オレをだましやがったな!」

 怒鳴ってきた男は【メルヒ・ディック】の町で、ナックラ・ビィビィが出した木箱の試験を前に逃げ出した男だった。


「だまされたオレは、いい笑い者だ! 第二試験とやらを、オレにも受けさせろ!」

 ナックラ・ビィビィは、蔑んだ目で男を見ながら言った。

「いいじゃろう……そんなに第二の試験を受けたかったら、受けさせてやる……それに合格したら、特別に旅の同行者として認めてやろう」


 ストーンヘンジのように環状列石が並ぶ【未来幻視の丘】に、ナックラ・ビィビィたちはやって来た。

 環状列石の中央に、リャリャナンシーと再試験希望の男を引き連れて、環状に並ぶ石群の中央に立ったナックラ・ビィビィが言った。

「これから、起こる現象から、目を反らしてはならぬぞ……はじまるぞ」


 日の光りが列石の隙間から差し込むと、漂ってきた濃霧の中に暗黒の風景が現れた。

 にやけ笑う若い男──どこか、異質な雰囲気が漂う黒服の『ググレ・グレゴール大司教』が、空間ゲートの中に消える。

 どこからか、ナックラ・ビィビィの声が聞こえた。

「あのゲートは、中央地域の暗黒城【ゴルゴンゾーラ城】に通じておるのだろう……ゲートの先には『昆虫騎士ピクトグ・ラム』がおるはずじゃ……他の地域の厄災たちもな」


  ◇◇◇◇◇◇


 霧の中で怯え続ける、男の顔を背後や足下の地面から。赤い眼球をした『ググレ暗黒教』の信者たちが不気味な声を発して。男やリャリャナンシーの体に群がる。

「あぁぁぁぁ……我が命をググレ・グレゴールさまに捧げます……あぁぁ」

 しがみついてくる信者を恐怖から振り払う男。

「ひぃぃぃぃ!」


 蜃気楼が消えて、丘に静寂がもどる。

 蒼白顔の男は、丘を転がるように逃げていく。

「冗談じゃねぇ! ググレ暗黒教とゴルゴンゾーラ城だと! 命がいくつあっても足らねぇ……ひぃぃぃぃ」


 男の姿が見えなくなると、ナックラ・ビィビィがリャリャナンシーに訊ねる。

「お主はどうする? 同行を辞退するか?」

「貴殿を守ると決めた時から、何を見せられても。

わたしの気持ちは揺るがない……地図作りの旅に連れていってくれ」

「そうか」

 ナックラ・ビィビィは、リャリャナンシーの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。

AIを使って書いたような指摘された問題点


【まずは、「普通に読める文章」を書けることを目指したほうがいい。今の文章では「普通に」は読めない。なお、ここでの「普通に読める」とは、「左から右へ視線を動かすことで文意をつかめる(横組みの場合)」あるいは「上から下へ視線を動かすことで文意をつかめる(縦組みの場合)」を意味する。今の書き方では、前後左右の文章を見比べながら「解読する」必要がある。


以下、気になった点をいくつか挙げてみた。



●『、』と『。』とを使い分けよう


『、』と『。』とをそれぞれ本来の意味で使おう。『、』は一般に文の途中にある切れ目を表すことが多い。『。』は一般に文の終わりを表すことに使われる。これらは小学校の国語の授業で習う内容のはずだ。多くの読み手はこれらのことを暗黙的に仮定している。しかし、本作の文章はこの暗黙的な仮定に基づいていない。『。』が置かれていても文が終わっておらず、次の文章に続いている、という箇所がいくつもある。これでは、「文が終わった」という感覚をリセットせざるを得ず、「この『。』は、実は文の終わりではなかった」と思い直して読み直す必要がある。結果として、目線が行ったり来たりを繰り返し、肝心の内容が頭に入らない。


対策としては、自分が書いた文章を声に出して読んでみる、というのがある。『、』は文の途中での一時停止であり、『。』は文の終わりである、ということを意識して読んでみると、文の不自然さに気づけるかもしれない。もし不自然さに気づけないのであれば……、そのときの対策はわからない。



●一文の途中で改行しないようにしよう


前項『●『、』と『。』とを使い分けよう』とも関連するが、『、』を意味する『。』を『、』に置き換えたら、『、』の直後の改行文字を削除しよう。通常の文では文の途中で改行しないことが多い。台詞が後に続く場合などを除き、改行は段落の切れ目を表す。一文の途中に段落の切れ目が来ることは不自然だ。一文が長いと感じたら、接続詞を挟むなどして適度に短い文に分割すればいい。一文の途中で改行するよりも読みやすくなるはずだ。



●段落を意識しよう


段落はだいたいにおいて一つの話題を表す。同じ話題が続く限り、段落は続く。小説においてもだいたいその傾向はあり、動作の主体が変わらないのであれば段落は変わらないことが多い。段落が変わるのは、話題が変わるときや動作の主体が変わるときなどだ。尤も、最近の小説ではそうとも言えない傾向にあるようではあるが。


段落に関しては、『悪文[第3版]』(日本評論社)に興味深い例が載っている。小学生の作文の授業の際に「段落を意識して書こう」と指摘したところ、指摘の前後で見違えるような変化が見られた、というのだ。書籍中には、例文として児童の作文が掲載されている。確かに、指摘前の文章はほとんど一文ごとに改行する箇条書きに近いものだったが、指摘後の文章では明らかに文章量が増加しており、読むだけでその場の情景を思い浮かべられるほどまでになっていた。


段落を意識するだけでそれだけ変わるのであれば、意識しないのはもったいない。文を単位として文章を構成するのではなく、段落を単位として文章を構成したほうが、よりよい文章を書く訓練になるかもしれない。



●主語、述語、目的語、修飾語、その他の語順を意識しよう


一文の中の語順を意識しよう。だいたいの文においては主語があって述語がある。おおよそ「誰それはどうした」のような形になる(倒置法もあるが、ここでは考慮しない)。文の中には目的語がある場合もある。おおよそ「誰それは何々をどうした」のような形になる。修飾語がある場合もある。おおよそ「これこれな誰それは何々をどうした」のような形になる。日本語の場合、修飾する語は修飾される語の前に来ることが多い。目的語は述語の前に来ることが多い。それぞれの語の関係をわかりやすくするためには『、』を適切に使用する必要があるが、本作の文章ではそれが崩れている箇所がいくつもある。そのため、そのたびに「この修飾語は、一体全体、どの語にかかるのか?」と考えざるを得ず、頭の中で文章を再構成する必要がある。こちらについても、対策としては声に出して読んでみるのが有効かもしれない。



●体言止めの使用はとりあえず封印しておこう


本作の文章には体言止めや「動詞の連用形+助動詞+『。』」のような形が見られる。体言止めを多用すると文章が一気に陳腐化する。極々少数であれば効果的かもしれないが、これでもかと多用されると読むのも辛くなる。後者についても体言止めと同様に、多用するとどうにも拙い文章のように見える。言い方は悪いが、「出来損ないの詩」のようにも見えてしまう。体言止めや「動詞の連用形+助動詞+『。』」の使用は却って文章を損なうものだと考えて、最後まで書き切るようにしたほうがいい。まずはきちんとした文章を書けることを目指すべきだ。



●物語世界にふさわしい語や言い回しを使おう


それぞれの作品世界に合う言葉を使おう。別世界を舞台にしたファンタジー作品の中で現代の流行語が出てきたとしたら、それだけで読む気が失せてしまう(「別世界のことを日本語で表現する」という根本的な問題については、ここでは考慮しない)。普段使用している言葉を登場させるにしても、少々古めの言葉に言い換えたほうが「それらしく」なることもあるし、漢語(熟語)については言い換えたほうがいい場合もある。


ある言葉を言い換えたいときには、例えば、『現代語古語類語辞典』(三省堂)のような辞典が役に立つ。なお、この辞典を使用する際は国語辞典と古語辞典の併用は必須と思ったほうがいい。



●説明するのではなく描写することを心掛けよう


説明と描写との間の線引きは難しいところもあるが、描写することを心掛けよう。「見た目が美少女」とは? どれほどの美しさ? 美しさの決め手は何? 一番目の文章の冒頭でその情報を提示する必要はあるのか? 単に人物名を提示するだけで事足りるのではないか? 書き手の頭の中には確固とした像があるのかもしれないが、文章の中からは読み取れない。読み手はそれぞれ勝手に「美少女」の姿を想像するより他にない。これでは単なる記号に過ぎないことになる。物語の進行上では「美しさ」は関係ないのかもしれないが、そうであればわざわざ「『美』少女」とする必要もないように思える。読み手の想像力に委ねるのであれば、単なる記号のほうがよいのかもしれないが。


加えて、「見た目」という語もあまりにも安直に思える。前項とも関連するが、もう少し別の言い回しにしたほうがいい(見目/顔立ち/容貌/容姿/姿/姿形/……、等々、他は類語辞典などを参照)。「ハイファンタジー」なのに、あまりに残念なことになっている。


また、文章の構造として、

  登場人物の動作の説明

  ↓

  その人物の台詞

という流れになっている箇所が多くある。これでは、読み進めるごとに手品の前に種明かしをされているような気分になる。あるいは、地の文をト書きと見立てて脚本のように読めなくもない。対策として、台詞の後に描写する、あるいは、描写→台詞→描写、など、いろいろと工夫したほうがいい。試しに、テキストエディタにコピーして台詞の部分を消去してみたところ、本当にト書きのように見えてしまった。説明ではなく描写していたとしたら、台詞を消去したとしても印象は異なっていたかもしれない。



●語と語との関係を意識しよう


ある語と別の語との繋がりを意識しよう。前述の『●主語、述語、目的語、修飾語、その他の語順を意識しよう』とも関連するが、ある語には「繋がりやすい語」と「繋がりにくい語」とがある。「繋がりにくい語」があると、そこで文章の流れが淀む。言い換えると、読んでいて引っかかる。引っかかりがあると、「この場所にふさわしい語は何か」と考え始める。場合によっては各種辞典で調べ始める。場合によってはそこで読むのを止める。


語と語との関係を確認したいのであれば、例えば、『てにをは辞典』(三省堂)のような辞典が役に立つ。この辞典には複数の作家の用例を基に、ある語と繋がりやすい語の例が示されている。他にも類語辞典がある。当然のことながら、国語辞典も役に立つ。書いている最中に語の選択に迷ったら、各種辞典を確認してもいいかもしれない】


★本当に指摘された文を見るたびに、作品削除したくなる……これは、駄作なのか?


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