表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西の大魔導師【ナックラ・ビィビィ】の地図作り魔導旅   作者: 楠本恵士
大魔導師ナックラ・ビィビィの誕生
13/17

十二・湖畔のナックラ・ビィビィ①

 これは、少女ビィビィが、大魔導師ナックラ・ビィビィになる前のお話……。


 西方地域【グリーン・ファングレイク湖】──その湖畔に建つ家に、常に愁いの表情で気持ちが沈んでいる、物静かな美少女『ビィビィ』がいた。

 少女の父親で、占い師家系の『グレゴール』は、一人娘の行く末を案じていた。

(このままでは、娘の命が尽きてしまう)

 ビィビィは、生天性の難病を抱えていた。

 治療方法が無く、十八歳前後くらいまでしか生きられないと、医者から伝えられていた。


 近所に住む同年齢の娘たちと遊ぶ時だけ、ビィビィは明るい表情を見せた。

 ビィビィも、自分の余命については、近所に住むお節介なおばさんの口から、漏れ聞かされて知っている。


 グレゴールは、占いと書物の知識で娘のビィビィを救う方法を探して、ついにその方法を発見する。

 人里離れた洞窟に住む偏屈な西の老魔導師『ナックラ』の禁断魔導の力を娘の肉体に注ぐというモノだった。

(魔導師と関わりを持つと、不幸になると言われているが)


 悩んだ末に、グレゴールはビィビィを連れて、西の魔導師が住む洞窟へと向かった。

 グレゴールの話しを、静かに聞き終えた白髪の老魔導師が言った。

「娘の余命を延ばすコトは可能だ……だが、そのためには四つばかりの約束がある」

 魔導師ナックラは、愁いを含んだ美少女ビィビィを眺めながら、意味ありな笑いを浮かべる。


 グレゴールが聞き返す。

「なんでもします……その四つの約束とは?」

「まず一つは【延命の成功確率は半々というコトを承知しておくのだ】……治療ではない、病気の進行を遅らせるだけだ。儂は医者ではないのでな」


「わかりました、二つ目は?」

「【失敗をしても、儂を恨むな】……成功確率は半々だからな」


「決して恨みません、三つ目は?」

「これが一番大事なコトだ【娘を儂の魔導弟子として、差し出すのなら助けてやろう】魔導生物を寄生させて、病気の進行を遅らせるのが目的だからな……魔導生物の力で娘は歳をとらなくなる」


 グレゴールはビィビィを見る、ビィビィはうつ向いたままだった。この時のビィビィは、親の命令には逆らわない素直な子だった。


「四つ目は【父親は禁断の術の対価を、儂に代わってその身に受けて、肉体を入れ替えて生きつづけるコト】……そして、娘の延命が成功しても失敗しても関係無く、儂が作成途中の教典を広めるための教祖になるのだ……以上のコトが約束できるか?」

「約束します……お願いします」

 グレゴールは、娘の同意を得ないまま。すべての条件を承諾して、ビィビィを洞窟に残して去っていった。


 ◆◆◆◆◆◆


 父親のグレゴールが去って数日間──ビィビィは、魔導師ナックラから与えられる魔導食を食べ続けた。

 静かに食事をしている美少女に、目を細め微笑む老魔導師が言った。

「魔導力が宿りやすくする体質に改善する食事だ……この段階で、普通の人間なら多くが死ぬ」

 魔導草のスーブで煮込んだ巨大なイモムシと毒コウモリを、切り分けて黙々と食べているビィビィに、ナックラは期待を抱いていた。


(この娘なら、儂の後継者になれるかも知れん……今まで何人も弟子の候補はいたが、食事の段階で逃げ出したり死亡した)


 ◆◆◆◆◆◆


 さらに数日間が経過すると、魔導食の影響なのか。

 ビィビィの性格にも変化が現れ、ナックラとも会話をするように変わってきた。

「師匠、洗濯モノは他にありませんか?」

「今はそれだけだ……悪いな、男所帯なので身の回りにまで手が回らなくて」

 整理整頓されていく洞窟の部屋に、ナックラは不思議と安らぎを感じた。

「気にしないでください……あたしは師匠の弟子ですから、好きなだけ雑用を言いつけてください……時間がある時は、夜も大丈夫です」


 老魔導師の身の回りの世話を自主的にはじめた、ビィビィは余暇には魔導書を読み。

 師匠の指導で、魔導力を高める修行も真面目に行った。

 基礎的な炎の魔導、水の魔導、風の魔導、地の魔導、雷の魔導の五大元素魔導もビィビィは、通常の魔導師見習いなら早くても、数ヶ月から数年かかるところを数日でマスターした──特にビィビィは地の魔導が得意で、動く小さな泥土人形を生み出せるまでになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ