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√ 十一・異端暗黒都市【オガム】2・ラスト

 小一時間後──まだ日が高いオガムの町を、儀式が行われるという『伏魔殿』に向かって視察を兼ねて向かっている、ナックラ・ビィビィ一行の姿があった。

 歩きながらギャンが、周囲を見回して残飯を漁っていた、双頭犬の『オルトロス』の子犬を見つけるとヒョイッと捕まえて、ナックラ・ビィビィに向かってドヤ顔で突き出す。


「どうだ、怖いだろう……ほれほれ」

 即座にナックラ・ビィビィは、魔導杖でギャンの頭を連打して反撃した。

「それで、儂の弱みを握ったつもりかぁ! コチの世界の犬など怖くもなんともないわ! 甘いわぁ!」

「ひぃぃぃっ!」

 ボッコボッコにされて地面に横たわる、ギャン・カナッハを見下ろしながら、ナックラ・ビィビィが言った。

「今後、似たようなマネをしたら頭を膨らませて破裂させるからな……覚悟しておけ」


 ナックラ・ビィビィ一行は、伏魔殿〔パンデモウニアム〕の前に到着した。儀式のための色鮮やかな五色の布で飾られた伏魔殿を確認したナックラ・ビィビィが言った。

「もっと、おどろおどろい飾り付けをしているかと思ったが、意外と普通じゃな……一旦帰るぞ、まだ儀式が行われるまでは時間がある」

 帰り道を宿屋に向かって歩いているナックラ・ビィビィに、リャリャナンシーが「どうして、アチの世界の犬が苦手なのか?」聞いてみた。


 歩きながら答える、西の大魔導師。

「昔、アチの世界から迷い込んできた犬の顔や胴体が裂けて、おぞましい生き物が出てくる場面に遭遇してな……その時から、アチの世界の犬は苦手になった」


  ◇◇◇◇◇◇


 その夜──伏魔殿でググレ暗黒教の『放鳥の儀式』が行われた。

 ナックラ・ビィビィたちが見学者席で見守る中……現れたググレ・グレゴール大司教が、人間姿の信者や、異形の者に変わりつつある信者たちに向かって言った。

「人間は生まれながらに欲望に身を置く、性悪な存在なのです……双子の乳呑み子にミルクを与えると、一方が片方のミルクを奪って飲み干す……それが人間の本能であり、性悪の証し」

 大司教の言葉を聞いて、ナックラ・ビィビィが呟く。

「なにを、ふざけたコトを……クソ親父」


 ググレ・グレゴールの説法は続く。

「『他人を妬み羨み憎み。成功した者の足を引っぱり陥れ。誹謗中傷と嘲笑をして他者を不幸にする者には、幸せが訪れる』それが、ググレ暗黒経典なのです……さぁ、この素晴らしき教えを西方地域の隅々にまで広めようではありませんか、夢も希望も無い大地にググレ暗黒教の花を咲かせましょう……暗黒教を絶対信仰する、真信者の仲間と新たな見習い信者が今宵誕生します……祝福しましょう」


 歓声があがる。

 五人姉妹を含む数人の手にイモムシが浮かぶ緑色の液体が満ちる器が渡され、グレゴール大司教が言った。

「飲み干しなさい……それを全部飲み干して、口の中で咀嚼(そしゃく)ができれば……新たな信者として迎え入れましょう」

 五人姉妹と数人は、イモムシごと液体を口に流し込み苦味を味わう。

「これで、あなたたちは見習い信者としての一歩を踏み出しました……次は真信者の誕生儀式です」


 五人姉妹の父親を含む、準信者数名が『ジドラ』と名乗る神官(しんかん)数名から漆黒と赤い液体が渦巻き模様に混ざった器を渡される。

 グレゴールが言った。

「自分が人間であるコトを忘れ、働く必要がなくなり、赤い目は世間が見えなくなる節穴と化す、忠実な真の信者に……真信者になるために、飲み干しなさい」


 赤い目に、ヒビ割れた皮膚、牙が生えた準信者たちが同時に、怪しげな液体を飲んで苦しみ出す。

「ぐぁあぁぁぁ!」

 両腕に羽毛のようなモノが生え鋭い爪が伸びた、さらにおぞましい姿へと変貌する。


 儀式を見学していたギャンが、気分が悪そうに口元を押さえた。

「気持ち悪い……なんだ、この儀式は?」

「ふんっ、悪趣味じゃな」

「この伏魔殿内には、アスナを殺した犯人は居そうにないな……牙の形状が違う」

 儀式は佳境に突入して、トランス状態になった信者たちが踊る中、床から【ゴルゴンゾーラ城】に通じる空間ゲートが出現した。

 グレゴール大司教が、現れた石門を指差して言った。


「すでに、多くの真信者と、魔猟犬をゴルゴンゾーラ城に送り──そこから、西方地域の各地にゲートを利用して真信者と魔猟犬を、放鳥するように放つ準備は整っています」

 グレゴール大司教は、手にした教鞭(きょうべん)の先を、ナックラ・ビィビィに向けて言った。

「あの、魔導師がアチの世界の犬が苦手な魔導師です……わたしが、伏魔殿の真信者を連れてゲートを通ってゴルゴンゾーラ城に到着するまで……犬が怖い臆病な魔導師の足止めをしなさい……ビィビィ、夜尿症のクセは治りましたか?」

 羞恥に顔を桜色に染めて、ワナワナ震えるナックラ・ビィビィが、魔導杖を握り締めて言った。


「クソ親父! ぶっ潰す! ギャン、リャリャナンシー、儂が許す! ギャンは人の姿をした信者の皮を剥いて骨抜きにしてやれ、リャリャナンシーは人から逸脱した信者を石化して忍の技で葬って供養してやるのじゃ! こいつらは、もはや人ではない!」


 ナックラ・ビィビィは周囲に、ダジィを数体出現させる。

「ダジィィ」

 激突する、ググレ暗黒教とナックラ・ビィビィの愉快な仲間たち。

 リャリャナンシーの石火光線が、人の姿を捨てた真信者を黒光りがする斑の鉱石に変えて、忍の技で粉砕していく。

 自在鎖クナイを操り、マーブル模様の怪物石像を転倒させて壊しながら、リャリャナンシーが呟く声が聞こえた。

「許せ……おまえたちは、西の大魔導師の力でも、元の姿には戻せないそうだ」


 ギャン・カナッハは、歌舞伎の見得(みえ)をきるような、奇妙な動きをしながら。まだ人姿をした信者の皮を剥いていく。

「おっととと……おっととと」

 衣服でも脱がすような感覚で、次々と皮を剥いて、骨格を抜いていく。

 向かってきた五人姉妹も、着ぐるみを脱がされるように中身と骨格を分離させたり。

 バンザイをしているような格好で皮を剥かれたり、肩をすぼめて衣服を脱がされるように皮を剥かれる。

 ギャンはイタズラ心で、五人姉妹の中身と皮を交換して遊ぶ。

「きゃ? なに? あたし、お姉ちゃんの皮を被っている?」

「これ、あたしの皮じゃないよぅ! いやぁぁ、元に戻してぇ」


 ナックラ・ビィビィは、スラッシュさせた魔導カードで『麻痺毒』の水球を作り出して、信者に向けて飛ばしている。

 襲ってきた、見習い信者の猫爪形武具が、身代わり泥人形ダジィの顔面に炸裂する。

「ダ、ダジィィ!」

 顔面を手で押さえて、床でもがき苦しみ、土へと還る使い捨て泥人形。

「ふんっ、身代わりの泥土人形が攻撃を受けるので、儂は痛くも痒くもないわ」


 ナックラ・ビィビィの視界にゴルゴンゾーラ城に繋がるゲートに、逃げ込むググレ・グレゴール大司教の姿が映る。

「逃がさんぞ! リャリャナンシー! ギャン! クソ親父を追うのじゃ」

 ナックラ・ビィビィたちも、ゴルゴンゾーラ城に通じる石のゲートに飛び込んだ。


  ◆◆◆◆◆◆


 数時間後──原罪の荒野【トーマン・ティン】に並び立ち、何も無い荒野を眺めているナックラ・ビィビィ一行の姿があった。

 ゴルゴンゾーラ城に繋がっていた通路は、すでに閉ざされ、地面に沈み消えていく。

 浮遊異端暗黒都市【オガム】があった場所を眺めながら、ナックラ・ビィビィが呟く。

「また、クソ親父に逃げられた」

 ナックラ・ビィビィは、リャリャナンシーに訊ねる。


「お主、どうする? まだ、儂と一緒に長い旅を続けるか?」

「アスナを殺した犯人には、まだ遭遇していないからな……お供しよう」

「そうか」

 頭が大きくなった、ギャン・カナッハが横から口を挟む。

「オレは……この頭の輪っかを、どうにかして」

「お主の意志など聞いておらん……この先も儂と一緒に旅をするのじゃ」

「ひでぇ、オレには選択の余地ナシかよ!」



他の地域の物語と同じように、西の大魔導師の物語も旅の終わりはありません。

人生の旅が終わるまで……どの地域のラストも【ゴルゴンゾーラ城】に辿り着いています。


AIみたいな文章で指摘された問題点


【まずは、「普通に読める文章」を書けることを目指したほうがいい。今の文章では「普通に」は読めない。なお、ここでの「普通に読める」とは、「左から右へ視線を動かすことで文意をつかめる(横組みの場合)」あるいは「上から下へ視線を動かすことで文意をつかめる(縦組みの場合)」を意味する。今の書き方では、前後左右の文章を見比べながら「解読する」必要がある。


以下、気になった点をいくつか挙げてみた。



●『、』と『。』とを使い分けよう


『、』と『。』とをそれぞれ本来の意味で使おう。『、』は一般に文の途中にある切れ目を表すことが多い。『。』は一般に文の終わりを表すことに使われる。これらは小学校の国語の授業で習う内容のはずだ。多くの読み手はこれらのことを暗黙的に仮定している。しかし、本作の文章はこの暗黙的な仮定に基づいていない。『。』が置かれていても文が終わっておらず、次の文章に続いている、という箇所がいくつもある。これでは、「文が終わった」という感覚をリセットせざるを得ず、「この『。』は、実は文の終わりではなかった」と思い直して読み直す必要がある。結果として、目線が行ったり来たりを繰り返し、肝心の内容が頭に入らない。


対策としては、自分が書いた文章を声に出して読んでみる、というのがある。『、』は文の途中での一時停止であり、『。』は文の終わりである、ということを意識して読んでみると、文の不自然さに気づけるかもしれない。もし不自然さに気づけないのであれば……、そのときの対策はわからない。



●一文の途中で改行しないようにしよう


前項『●『、』と『。』とを使い分けよう』とも関連するが、『、』を意味する『。』を『、』に置き換えたら、『、』の直後の改行文字を削除しよう。通常の文では文の途中で改行しないことが多い。台詞が後に続く場合などを除き、改行は段落の切れ目を表す。一文の途中に段落の切れ目が来ることは不自然だ。一文が長いと感じたら、接続詞を挟むなどして適度に短い文に分割すればいい。一文の途中で改行するよりも読みやすくなるはずだ。



●段落を意識しよう


段落はだいたいにおいて一つの話題を表す。同じ話題が続く限り、段落は続く。小説においてもだいたいその傾向はあり、動作の主体が変わらないのであれば段落は変わらないことが多い。段落が変わるのは、話題が変わるときや動作の主体が変わるときなどだ。尤も、最近の小説ではそうとも言えない傾向にあるようではあるが。


段落に関しては、『悪文[第3版]』(日本評論社)に興味深い例が載っている。小学生の作文の授業の際に「段落を意識して書こう」と指摘したところ、指摘の前後で見違えるような変化が見られた、というのだ。書籍中には、例文として児童の作文が掲載されている。確かに、指摘前の文章はほとんど一文ごとに改行する箇条書きに近いものだったが、指摘後の文章では明らかに文章量が増加しており、読むだけでその場の情景を思い浮かべられるほどまでになっていた。


段落を意識するだけでそれだけ変わるのであれば、意識しないのはもったいない。文を単位として文章を構成するのではなく、段落を単位として文章を構成したほうが、よりよい文章を書く訓練になるかもしれない。



●主語、述語、目的語、修飾語、その他の語順を意識しよう


一文の中の語順を意識しよう。だいたいの文においては主語があって述語がある。おおよそ「誰それはどうした」のような形になる(倒置法もあるが、ここでは考慮しない)。文の中には目的語がある場合もある。おおよそ「誰それは何々をどうした」のような形になる。修飾語がある場合もある。おおよそ「これこれな誰それは何々をどうした」のような形になる。日本語の場合、修飾する語は修飾される語の前に来ることが多い。目的語は述語の前に来ることが多い。それぞれの語の関係をわかりやすくするためには『、』を適切に使用する必要があるが、本作の文章ではそれが崩れている箇所がいくつもある。そのため、そのたびに「この修飾語は、一体全体、どの語にかかるのか?」と考えざるを得ず、頭の中で文章を再構成する必要がある。こちらについても、対策としては声に出して読んでみるのが有効かもしれない。



●体言止めの使用はとりあえず封印しておこう


本作の文章には体言止めや「動詞の連用形+助動詞+『。』」のような形が見られる。体言止めを多用すると文章が一気に陳腐化する。極々少数であれば効果的かもしれないが、これでもかと多用されると読むのも辛くなる。後者についても体言止めと同様に、多用するとどうにも拙い文章のように見える。言い方は悪いが、「出来損ないの詩」のようにも見えてしまう。体言止めや「動詞の連用形+助動詞+『。』」の使用は却って文章を損なうものだと考えて、最後まで書き切るようにしたほうがいい。まずはきちんとした文章を書けることを目指すべきだ。



●物語世界にふさわしい語や言い回しを使おう


それぞれの作品世界に合う言葉を使おう。別世界を舞台にしたファンタジー作品の中で現代の流行語が出てきたとしたら、それだけで読む気が失せてしまう(「別世界のことを日本語で表現する」という根本的な問題については、ここでは考慮しない)。普段使用している言葉を登場させるにしても、少々古めの言葉に言い換えたほうが「それらしく」なることもあるし、漢語(熟語)については言い換えたほうがいい場合もある。


ある言葉を言い換えたいときには、例えば、『現代語古語類語辞典』(三省堂)のような辞典が役に立つ。なお、この辞典を使用する際は国語辞典と古語辞典の併用は必須と思ったほうがいい。



●説明するのではなく描写することを心掛けよう


説明と描写との間の線引きは難しいところもあるが、描写することを心掛けよう。「見た目が美少女」とは? どれほどの美しさ? 美しさの決め手は何? 一番目の文章の冒頭でその情報を提示する必要はあるのか? 単に人物名を提示するだけで事足りるのではないか? 書き手の頭の中には確固とした像があるのかもしれないが、文章の中からは読み取れない。読み手はそれぞれ勝手に「美少女」の姿を想像するより他にない。これでは単なる記号に過ぎないことになる。物語の進行上では「美しさ」は関係ないのかもしれないが、そうであればわざわざ「『美』少女」とする必要もないように思える。読み手の想像力に委ねるのであれば、単なる記号のほうがよいのかもしれないが。


加えて、「見た目」という語もあまりにも安直に思える。前項とも関連するが、もう少し別の言い回しにしたほうがいい(見目/顔立ち/容貌/容姿/姿/姿形/……、等々、他は類語辞典などを参照)。「ハイファンタジー」なのに、あまりに残念なことになっている。


また、文章の構造として、

  登場人物の動作の説明

  ↓

  その人物の台詞

という流れになっている箇所が多くある。これでは、読み進めるごとに手品の前に種明かしをされているような気分になる。あるいは、地の文をト書きと見立てて脚本のように読めなくもない。対策として、台詞の後に描写する、あるいは、描写→台詞→描写、など、いろいろと工夫したほうがいい。試しに、テキストエディタにコピーして台詞の部分を消去してみたところ、本当にト書きのように見えてしまった。説明ではなく描写していたとしたら、台詞を消去したとしても印象は異なっていたかもしれない。



●語と語との関係を意識しよう


ある語と別の語との繋がりを意識しよう。前述の『●主語、述語、目的語、修飾語、その他の語順を意識しよう』とも関連するが、ある語には「繋がりやすい語」と「繋がりにくい語」とがある。「繋がりにくい語」があると、そこで文章の流れが淀む。言い換えると、読んでいて引っかかる。引っかかりがあると、「この場所にふさわしい語は何か」と考え始める。場合によっては各種辞典で調べ始める。場合によってはそこで読むのを止める。


語と語との関係を確認したいのであれば、例えば、『てにをは辞典』(三省堂)のような辞典が役に立つ。この辞典には複数の作家の用例を基に、ある語と繋がりやすい語の例が示されている。他にも類語辞典がある。当然のことながら、国語辞典も役に立つ。書いている最中に語の選択に迷ったら、各種辞典を確認してもいいかもしれない】


★もう第二章からの修正はやめて、別の新作書いています……ここまで、偉そうに指摘するからには、てめぇはさぞかし素晴らしい文章が書けるんだろうな暇人!!『、』の付け方は、ある本だと厳密な決まりはねぇんだよ!ボケがぁ



その、シーンを各地域ごとに加えるとなると大変なので……ゴルゴンゾーラから戻ってきたシーンでまとめてあります。


西のストーリーも、続き書こうと思えば書けますが

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