イタズラグッズ
十二畳くらいの食事が揃ったお茶の間には、やはり三人とも揃っていた。
泣き腫らした顔の涼香、楽しそうに身体を揺らす律子、腕組みをしている永嗣の三人。
里子は「案内終了だね」と言うなり、さっさと自分の席に座った。
「おい、里子……まさか富勇くん――」
「そのまさかだよ、あんた。この人ったら、うちの廊下で迷子さ。まったく、ほんとおかしいねぇ」
「そりゃ違いねえ。笑えるな、はっはー!」
「ふふふ……朝倉さんったら、女の人に恥をかかせたバチが当たったんですよ、しっかり責任取ってくださいね」
「やほ、富勇くん……元気にしてる~?」
なんだろう、色々と面倒くさい。
富勇は耳の穴をほじると、「俺の席はあそこでいいのか」と永嗣に確認しながらも、その席の前まで移動する。
「あたぼうよ」
「失礼」
富勇はちゃぶ台の前に敷かれた座布団に座ろうとしたとき――座布団からオナラのような音がうるさく鳴った。
シンと静まり返るお茶の間。
これが俗に言う、お茶の間が凍るということか、と富勇は身をもって体験した。
不幸中の幸いにも、それからすぐに全員がどっと笑い出した。
ガハハ、アッハハ。
ケラケラ、クスクス。
富勇はというと、面白くもなんともなく、「俺じゃない、俺じゃないってば」と一人必死になって弁解した。
永嗣は「分かってる、分かってるから、まあ落ち着け」とネタ晴らしをする。
「実はな、お前さんの座布団の下に敷かれたこいつは、昔に流行ったイタズラグッズさ。聞いてのとおり、オナラのような音が出るんだぜ」
「イタズラ、グッズ……? そ、そうなのか」
「面白いだろう?」
「俺の居場所はもうなくなったと思ったことがか?」
怒りやら恥辱やらが込み上げてきた富勇は、口元を引きつらせた。
「悪い悪い。だが怒るなよ。なぜなら、イタズラグッズを仕掛けようと言い出したのは、愛娘の律子だからな」
「彼女が?」
富勇は楽しそうに笑っている律子を凝視した。
「きみが……これを仕掛けたのか?」
「はい、そうですよ。……だってほら、佐々木さんに恥をかかせたんですから、当然の報いですよね」
「うーん……ふっ」
確かに怒るにも怒れない、と富勇は思わず失笑した。
「謝ってください、朝倉さん」
「なぜ俺が」
「そんなことを言っちゃったら、ほら……佐々木さん、また泣いちゃいますよ」
律子の声に合わせたように、涼香が「シクシク」と声を上げて泣いているふりをする。
小細工だろうがなんだろうが、それで富勇は根負けした。
富勇は涼香に謝った。
「ごめんな、佐々木さん。……恥、かかせてしまった」
「いいよ、別に。それに……今度は失敗しないから」
「何を失敗しないって……?」
「それはぁ……えへへ~」
「よしっ、そろそろ朝餉をいただくとしよう。そらっ、お前ら――」
「「いただきます」」
永嗣の音頭に合わせ、富勇たちは朝食を食べ始めた。




