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如月島は満月の夜に  作者: 最上優矢
第二章 大ピンチのときには哲棒をねじ曲げろ

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イタズラグッズ

 十二畳くらいの食事が揃ったお茶の間には、やはり三人とも揃っていた。

 泣き腫らした顔の涼香、楽しそうに身体を揺らす律子、腕組みをしている永嗣の三人。


 里子は「案内終了だね」と言うなり、さっさと自分の席に座った。


「おい、里子……まさか富勇くん――」

「そのまさかだよ、あんた。この人ったら、うちの廊下で迷子さ。まったく、ほんとおかしいねぇ」

「そりゃ違いねえ。笑えるな、はっはー!」

「ふふふ……朝倉さんったら、女の人に恥をかかせたバチが当たったんですよ、しっかり責任取ってくださいね」

「やほ、富勇くん……元気にしてる~?」


 なんだろう、色々と面倒くさい。


 富勇は耳の穴をほじると、「俺の席はあそこでいいのか」と永嗣に確認しながらも、その席の前まで移動する。


「あたぼうよ」

「失礼」


 富勇はちゃぶ台の前に敷かれた座布団に座ろうとしたとき――座布団からオナラのような音がうるさく鳴った。


 シンと静まり返るお茶の間。

 これが俗に言う、お茶の間が凍るということか、と富勇は身をもって体験した。


 不幸中の幸いにも、それからすぐに全員がどっと笑い出した。


 ガハハ、アッハハ。

 ケラケラ、クスクス。


 富勇はというと、面白くもなんともなく、「俺じゃない、俺じゃないってば」と一人必死になって弁解した。


 永嗣は「分かってる、分かってるから、まあ落ち着け」とネタ晴らしをする。


「実はな、お前さんの座布団の下に敷かれたこいつは、昔に流行ったイタズラグッズさ。聞いてのとおり、オナラのような音が出るんだぜ」

「イタズラ、グッズ……? そ、そうなのか」

「面白いだろう?」

「俺の居場所はもうなくなったと思ったことがか?」


 怒りやら恥辱やらが込み上げてきた富勇は、口元を引きつらせた。


「悪い悪い。だが怒るなよ。なぜなら、イタズラグッズを仕掛けようと言い出したのは、愛娘の律子だからな」

「彼女が?」


 富勇は楽しそうに笑っている律子を凝視した。


「きみが……これを仕掛けたのか?」

「はい、そうですよ。……だってほら、佐々木さんに恥をかかせたんですから、当然の報いですよね」

「うーん……ふっ」


 確かに怒るにも怒れない、と富勇は思わず失笑した。


「謝ってください、朝倉さん」

「なぜ俺が」

「そんなことを言っちゃったら、ほら……佐々木さん、また泣いちゃいますよ」


 律子の声に合わせたように、涼香が「シクシク」と声を上げて泣いているふりをする。

 小細工だろうがなんだろうが、それで富勇は根負けした。


 富勇は涼香に謝った。


「ごめんな、佐々木さん。……恥、かかせてしまった」

「いいよ、別に。それに……今度は失敗しないから」

「何を失敗しないって……?」

「それはぁ……えへへ~」


「よしっ、そろそろ朝餉をいただくとしよう。そらっ、お前ら――」

「「いただきます」」


 永嗣の音頭に合わせ、富勇たちは朝食を食べ始めた。

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