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22 縁というのは切ないもの②

 二人は無事に花子の両親とも合流し、今度はレストランに連れて行かれる。侑哉は日本にいるときもあまり外食をしないが、中華料理は思った以上に口に合い、旧正月料理も美味しくたいらげる。

「なんか......こんな良くしてもらって、いいんでしょうか」

 侑哉は勿論お金は持ってきているので、何度か代金を払おうとしたのだが「せっかくだから」と沖家に全て持ってもらっているのだ。恐縮しながらも、娘を溺愛する沖家の両親に存分にもてなしてもらい、侑哉は初海外旅行を満喫しながら日本の岩本に写メを送ってみたりする。

 恨めしそうなスタンプからは、岩本の気持ちがネット回線越しにも十分伝わってきた。


 夜、ライトアップされた港を案内してもらった侑哉は、しばらく夜景に見とれたあと、花子に声をかけた。

「はなちゃん、そこ立って」

「はーい」

 夜景をバックに花子を撮る。これで花子の髪がピンクなら、本当に異世界のようかもしれない。しかしこの国は現実で、周りから見たら侑哉のほうが外国人だ。言葉も習慣も食生活も違う町で、普通に侑哉は歩いている。

「なんかさ、すごく楽しい」

 勿論それは、会話に不自由しない花子たちに案内してもらってるからだ。

 

 けれど、花子に会わなかったらシンガポールまで来なかっただろうし、友義の店でバイトをしなければ、侑哉 が花子と知り合うことはなかった。

「これが、縁なのかな?」

 侑哉は花子に聞いてみる。

「うん」

 花子ははしゃぎながら、親に、侑哉と一緒の写真を撮ってもらうよう頼んでいる。照れながらも、侑哉は花子と同じ画面におさまった。

 あと数日ここで過ごしたら、侑哉はまた日本に帰るのだ。そうしたら花子とまた会えなくなる。恋愛対象としてかはわからないが、寂しい、という気持ちに偽りはない。

 家族には、「ヒロイン奪還」などとからかわれてきた。だが自分は何をすればいいのだろう。花子は自分の意思でここにいるし、侑哉はまだ自分一人ではできることが限られる、未成年の学生だ。勇者ではなく、ひと文字足りない「ユウヤ」なのだ。


 侑哉はきらびやかな夜景を見ながら、どうしようもなく切ない気持ちになった。


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