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『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品

パスワードを入力してください


 資産数百億とも噂される富豪が亡くなった。


 その遺産相続に関して弁護士から呼び出しを受けた富豪の子どもたちが屋敷の一室に集まった。



「皆さまお集りのようですから、遺産相続について説明申し上げます」


 固唾をのんで弁護士の言葉を待つ一同。


「資産に関するすべての書類はすべてこのケースの中に入っております。このケースを開けることが出来た者に遺産のすべてを相続することとする。これが遺言でございます」


 弁護士の言葉に騒然となる子どもたち。数億程度はもらえると思ってやってきたというのに、まさかのゼロか100だ。


「ケースを開けると申し上げましても、ルールがございます。持ち時間はお一人様五分、年齢が上の順に挑戦していただきます」


「よし、俺からだな。悪いが遺産はいただくぞ」


 勝利を確信した長男がガッツポーズをする。


「そんなっ!! なんで年齢順なんですか!! ずるいです」


 すかさずクレームを入れるのは長女。


「ルールですのでご了承ください」


 弁護士は表情一つ変えることはない。


「まあまあ姉上、後からの方が情報が増えるんですから必ずしも不利とは言えませんよ」


 次男がニヤリと笑う。


「あの……もし誰も開けられなかったらどうなるんでしょうか?」


 質問したのは三男。


「その場合、遺産はすべて全国の慈善団体に寄付されることになっております」


「そんな……ふざけんなよ!!」


 長男が激昂するが――――


「それでは最初の五分スタートします」


 弁護士がタイマーを用意したのを見て、慌ててケースの前に移動する。



『パスワードを入力してください』


 弁護士がケースのボタンを押すと電子音が鳴りタイマーが動き出す。


「くそっ、やるしかねえ……」


 父親が好きだったモノやペットの名前、誕生日、車のナンバー……すべてエラー。


 期待を込めて、自分の名前や誕生日なども入れてみるが、ケースは開かない。


 五分というのは、入力している本人にとっては短いが、兄妹たちにとっては永遠に感じるほど長い。



「タイムアップです」 


 長男は絶望に崩れ落ち、他の兄妹たちからは安堵のため息がもれる。



「タイムアップです」

「タイムアップです」


 長男に続き、長女、次男もチャレンジに失敗した。


 残るは三男のみ。


「あ~あ、コイツじゃ無理だな」

「そうね」

「同意」


 しかし――――


「おめでとうございます! 遺産はすべて貴方のものです」


「お、お前……なんて入れたんだよ」


「え? パスワードって入れたんだよ。ずっとそう言ってたじゃない」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全然解けませんでした。  面白かったです。 素直なようで、素直じゃないパスワードですね。
[良い点]  素直なのはいいことだと思う。  まぁ、親が金持ちのスタートラインあるんだから自分で稼げるだろ長男。 [一言]  遺産は渡さん。解けなければ寄付する。子孫に美田渡さず自分で稼げ!  こん…
[一言] 好きな物や誕生日などの情報より父親がどういう性格か分かってる子供だけが開けられる、という事かな。 こんな大事な遺言で「それやるか?」ってのが兄弟で、「やるだろうな」ってのが三男だったと。
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