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地区予選3



ええ天気やなあ~。

はい、おはおはちゃおちゃお、みなさんこんちは~

高校入学と共に関西から越して来て早3年、高校陸上の競技でもなくマネージャーでもなくて、ただの観戦にはまって、動画投稿し続けて早3年。

エセ関西弁が持ち味の、高校陸上おっかけ系WeTuberの『鉄球』どえ~す。

最近登録者数が100人突破しました~!いえーいパフパフ~!

陸上競技大好きな人が僕以外に100人もこの世におるんやと思うと滅茶苦茶嬉しいわ~



で、ご覧の様に空は晴れ渡って、最高の陸上競技日和!

今日は全国陸上大会/東東京・地区予選に来とりまーす。

ご存じの通り、東東京・地区予選で勝ち上がってきたチームは次の東東京・予選決勝に参加できて、ここで三位までに入賞すると、東東京、西東京、中央東京の上位チームが集まる東京本大会に参加できて、そこでようやく全国出場する東京代表が決まるって感じになっとります~


ま、今日は各高校の一年生新メンバーを加えた最初の大会になる訳なんやけど、新しい選手に会える6月の大会はやっぱりワクワクするなあ。

大型ルーキーの登場で今までの順位がガラッと入れ替わる事だってよくある事やから、目ん玉かっぽじって、今日も最後まで鉄球にお付き合いよろしく~!



……って、今物凄いイケメン君が僕の後ろ横切ったな?!

どこの誰さんやろ!?

ジャージ着とったで、多分観客やなくて選手やで!

いるか分からんけど、このチャンネルの女性視聴者さんの為に出血大サービス!特別インタビュー敢行や!


すみませ~ん。お兄さんちょっとちょっと、お話聞かせてくれへん?お兄さん選手やろ?どこのチームなん?


「えっと……なんですか?」


ああ、すいません。僕しがないWeTuberで、陸上競技大好きなんです。お兄さん選手やろ?ちょーっとインタビューしたいと思ってな。どこのチーム所属か教えてくれへん?


「……伊瀬改高校です」


伊瀬改高校……?ああ、毎年地区予選敗退の弱小のとこやな。あそこは進学校やから、部活に力入れてなくてもまあ仕方ないわ……ってすまんすまん、申し訳ない。悪く言うつもりはなかったんや。失敬失敬。すまん、許してな。


「別に大丈夫ですよ。去年まで予選敗退だったのは事実ですから。でも今年は見ておいた方がいいと思いますよ。特にリレーは」


おっ、リレーなんて陸上競技の花形やん。お兄さん出るん?何走?僕絶対チェックするわ。


「僕は出ません」


えっ、そうなん?!


「でも何走と言われればそうですね、アンカーは見ていた方がいいです。きっと面白い走りをしてくれると思います」


オ-ケーオーケー、伊瀬改高校のアンカーね。リレーって言ったら一番盛り上がる種目やし僕も大好きや。しっかりカメラに収めるからな。それからお兄さん、もう少し質問が……


「ああすみません。もう顧問を呼んでこなくてはいけませんので、この辺りで失礼します」


おっ、ああ、そっかもうすぐ競技始るもんな。引き留めてすまんかった。じゃあありがとね、お兄さん。


さあて、あのお兄さんも言っとったようにもうすぐ競技が始まるし、僕も観客席に移動しよかな。

最初の種目は……うん、高校陸上の鉄板、100Mの短距離走やな。

これはほんの十数秒のうちに今までの全てを詰め込んで走る、究極の競技やで!

だから僕は、一瞬一瞬に懸ける選手の走りをしっかり動画に収めなな!



……



さてさて、6月の初夏の都内陸上競技場、全国陸上大会/東東京・地区予選の観戦席の埋まりは4割程度や。

出場校は東東京地区の全41校。

午前中にあった短距離100Mと跳躍系、長距離800、1500は終了したで。

バッチリ僕のライブに付き合ってくれて、スパチャまでしてくれた貴重な視聴者さんありがとうな。


ざっと前半戦のおさらいすると、やっぱり強豪と呼ばれる有名校の選手たちが予選決勝に駒を進めることになったな。

私立鳳学園/鶯原と孔雀丸、私立獅子王高校/相馬、都立怪壇高校/天狗山。

このへんはさっき動画に収めて来たけど、改めて度肝を抜かれる速さやったで!


で、前半の見どころが終了したところで、午後の部の花形と言えば団体競技のリレーやな。

リレーは特殊ルールになっとてな、男女2X2の4人が200Mづつ走る、合計800Mの珍しい男女混合種目や。

各チームで、一番速い精鋭オールスターをぶち込んで競い合う競技なんやで。まさに短距離のお祭りみたいな種目やろ?


勿論、走りの速さだけじゃなくて、上手くバトンを受け渡すこともリレーで勝つには大事なことやで。

それから、誰がどこを走るかも各チームの戦略によるところが大きいから、どのライバルに誰をぶつけるかも結構カギになってくる。

この辺でも、優秀な顧問やったりコーチがついとる強豪校は有利やろな。


よし、そいじゃ対戦の組み分けブロックを見てこか。

リレーに出場するチームはいくつかあるから、対戦組み分けがされとる。

一ブロック8チームで、全部で5ブロック。

これらが順に競うんやな。それで最後に全チームのタイムを見比べて、上位8チームが予選決勝に進めるという訳や。



さーて。ここで、鉄球的今年の地区予選優勝チームの予想や!


先ずは言わずもがな、王者私立鳳学園。

今年も優勝最有力候補はこの学校や。

部活に力を入れてる学校で、去年の陸上部は短距離とリレーで東京本大会まで行ったし、野球部も甲子園まで行っとった。

応援部もブラスバンド部も物凄い気合入っとるし、今年から練習量も増やしたらしいで。

リレーメンバーには、正統派に強い最速の選手を揃えてきた印象やな。


で、鳳学園と双璧をなすのが私立獅子王高校やな。

鳳学園に比べて歴史があるって訳じゃないけど、去年コーチが加わって、今勢いに乗ってガンガン来とるチームやな。

午前の部でも短距離、長距離、砲丸あたりでいい成績出しとったわ。

リレーメンバーは、やっぱり調子が良いメンバーで固めて来たって感じやな。

今年こそは優勝を狩ってやるって感じがするわ。


それから最後に、都立怪壇高校。

ここは陸上部が強いっていうか、リレーがずっと強いっていう歴史ある学校でな。

多分秘伝の練習方法があるんやろうけど、バトン繋ぎが皆びっくりするほど上手いんや。

ここのリレーを見ると、いかにバトン繋ぎが大切か分からせられるで。

そんな怪壇高校のリレーメンバーは、バトンは堅実な癖に、走りは癖が強いっていうか、面妖なメンバーが多いって感じやろか。


で、あと注目すべき学校は……うーん、そうやな、目ぼしいとこはこれくらいか?

ああ、いやいや、さっき会ったイケメンのお兄さんの学校はどうやろ。

伊瀬改高校……伊瀬改高校やったよな?

ああ、あったあった。獅子王高校と同じDブロックにおるわ。

伊瀬改高校はなあ……どうなんやろ。一年が二人おるし、ぶっちゃけそんなに強そうやないな。

特にアンカーに注目ってイケメンのお兄さんは言っとったけど、この子、午前の短距離走にも出てなかった子やろ?

短距離走の選手にもなれんような子がリレーなんて出て大丈夫なん?って感じはあるけど……

ま、何はともあれ、ちょっと気にして見といてみるか。




……おっと、そうこうしとる間に、Aブロックのリレーの第一走者がスタート位置に集まり始めたわ!

Aブロックでは、いきなり目玉のカード、鳳学園と怪壇高校が走るで!

よし、各選手ズームしてみよか!


はい、こちらスターティングブロックの調整を念入りにしているのは鳳学園のスターター、2年生/小燕スバル!

スバル君はちっこい男子選手やけど、東東京最強と言っても過言では無いくらいにスタートダッシュが激ウマなんやで。

百聞は一見にしかずなんやけど、言葉であえて表すなら、ピュン!や。ピュンやで。

スバル君のスタートダッシュはほんと、瞬きしてたら見逃してしまうレベルなんや。

やから号砲が鳴るその瞬間は、どれだけ目が乾こうと瞬き厳禁やで。


それでスバル君の1レーン内側には怪壇高校/2年生/河童橋カガリや。

おっとり男子のカガリ君も、スバル君と同じく二年生なんやけど、あの二人は正反対な選手なんや。

スタートダッシュを決めて初手でつけた差を守って逃げ切るスバル君と、スロースターターで後半100Mで死ぬほど追い上げるカガリ君って感じ。

な、対比が超おもろいやろ。


しかもこの二人、本人たちもお互いにめっちゃライバル視しとるんやで。

僕が秘密裏に仕入れた情報によると、去年の東京本大会前に二校合同合宿して、そこで切磋琢磨してお互いに改めて「こいつは僕が抜かさなあかん」ってなったらしいで。


流石に合宿まで忍び込んで動画とったらお縄になってしまうで出来へんかったけど、去年の大会の動画は残ってるから良かったら下のリンクから飛んでみてな。

あ、それより見てみ、スバル君がカガリ君になんか話しかけとるで。


「河童橋」

「あー、スバル君。おはよー」

「何でおはようなんだよ。もう昼だぞ」

「えへへー、やっぱりリレーが始まらないと起きた気がしなくてー」

「そうかよ。相変わらずマイペースだなお前は」

「マイペースが一番だよー。走るのは、特にねー。スバル君も、気を付けてねえ」

「俺はもう誰かにペース乱されたりなんてしねえ。今日も真っすぐ走ってやるよ」

「うーん、自信満々なところ悪いんだけどー、僕、スバル君には去年勝ってるし、今年も譲る気はないよー」

「上等だ」


去年の大会でも同じく第一走を走った2人やけど、スバル君はカガリ君に最後の最後で抜き返されとるからなあ。

でも今のを見る感じ、煽られたスバル君も冷静さはあるようやし、煽ったカガリ君もかなり落ち着いとるように見える。

コンディションは悪くないで、2人はきっといいスタートを見せてくれるはずや。



うん、そろそろスタートやな。

審判がスタートラインに立つと、やっぱ緊張感が桁違いや。

世界が止まりそうな感覚、自分の鼓動の音がやけに大きく響く感覚、競技場が静まり返って、空がやたらと高い感覚。

これ分かる人おったらグッドボタンコメントよろしくな。

いや、分からんでもグッドボタンよろしくな。


この静寂、緊張感。

選手たちが一寸違わず揃って位置に付く時の、会場の一体感。

あー、堪らん。僕まで緊張してきたわ。……っと、ピストルが掲げられたで黙るわ。





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